【旅する喫茶店】珈琲るーむ 森永(和歌山)
和歌山市内最古と言われる純喫茶でくつろぐ
戦後から続くコーヒーの香りと人情味
JR和歌山駅の改札を出て、けやき大通りをまっすぐ西に向かう。紀州徳川家の居城だった和歌山城へは徒歩で20分ほど。界隈の市街地は、55万5000石を誇った紀州藩の旧城下町だ。
大通りの途中にある珈琲(コーヒー)るーむ森永は、昭和の香りを色濃く残す喫茶店。創業は戦後すぐの1947年で、城を含め一帯が焦土(しょうど)と化した大空襲から2年後のことだ。
「戦災復興事業で大通りができた頃、私は大阪から嫁いできたの。長年、夫婦で営んできた店やけどマスターが亡くなってからは娘と二人でやっています」とママの平川彩榮さん、今年87歳。店名の由来を尋ねると「森永ミルクキャラメルからとったんです。誰でも知っているし、覚えやすいでしょ」とにこやかに話す。
こぢんまりした店内にはテーブル席が九つ。窓際に座り、街並みを眺めてのんびり過ごしたい。注文したのはコーヒー付きのモーニングサービスで、小判形の銀皿がどことなく懐かしい。午前中のみのメニューだが、要望があれば時間外に出すこともあるという。
「若い頃からずっと通ってくれる常連さんも多いんですよ」と娘の森美和さんがほほ笑んだ。温かい人情とコーヒーを味わったら、城下町の面影を探して街を歩こう。
文/北浦雅子 写真/清水いつ子
住所:和歌山県和歌山市美園町2-68
交通:阪和線・和歌山線・紀勢線和歌山駅から徒歩6分
TEL:073-422-2420
(出典 「旅行読売」2021年8月号)
(ウェブ掲載 2021年8月13日)
旅行読売出版社「旅する喫茶店」2021年9月1日(水)発売 定価1430円(税込)