【旅する喫茶店】サロン・ド・テ ロンド(六本木)
波打つガラスカーテンウォールが特徴的な建物。1階は系列の別のカフェ
国立清美術家の館内、空中に浮かぶ円形のカフェ
都心で非日常感を味わいたくなったら国立新美術館に行くといい。六本木の繁華街から正門を入ると、故黒川紀章(きしょう)氏が「森の中の美術館」をコンセプトに設計した全面ガラス張りの巨大な建物が現われる。ロビーは天井高21.6㍍の吹き抜け空間で、円錐を逆さにした形の大小二つの塔が鎮座しており、このアトリウムのスケールに圧倒されながら、奥の塔にあるティーサロンに上がった。
名前の「ロンド」(輪舞)の通り、コーンの底に載る店は、空中に浮かぶ円形舞台のようで浮遊感がある。空間が広いためか、波打つ窓から自然光が降り注ぐ館内は、静寂に包まれている。展覧会帰りであろう人たちが、作品の余韻とコーヒーや紅茶を楽しんでいる姿があった。
「国内5番目の国立美術館として2007年に開館する際、土地柄、国際色豊かな客層を意識してフランス料理店やカフェなど館内4店もオープンしました。企画展とコラボしたオリジナルデザートを出すこともあります(休止中)」とカフェの運営会社ひらまつの鳴澤佑里子さん。
ショップで土産を買い、地下鉄駅へ向かう。ほんの数時間の滞在なのに晴れやかな気分になっているのは、美術館そのものに日常にない創造的な遊びや自由の感覚を感じたからかもしれない。大きさ、曲線、光、色……それ自体が作品なのだ。
文・写真/福﨑圭介
住所:東京都港区六本木7-22-2
交通:地下鉄大江戸線・日比谷線六本木駅から徒歩5分、または地下鉄千代田線乃木坂駅直結加賀温泉駅から北陸線3分の大聖寺駅下車徒歩8分
TEL:03-5770-8162
(出典 「旅行読売」2020年9月号)
(ウェブ掲載 2021年1月3日)
旅行読売出版社「旅する喫茶店」2021年9月1日(水)発売 定価1430円(税込)