折本駅【真岡鐵道真岡線】
夏空の下にたたずむ大正時代築の木造駅舎
夏の昼下がり、関東平野を行く真岡(もおか)鐵道真岡線に乗った。
起点となる下館(しもだて)は、かつて下館城の城下町、そして真岡木綿を扱う商人の町として栄え、町中には今なお蔵を持つ町屋が点在する。
下館駅を出発した列車は、ほどなく折本(おりもと)駅に到着する。真岡線では寺内駅のほか、この折本駅に古い木造の駅舎が残っている。大正末期に建てられた駅舎の前には青色のベンチが置かれ、背後の青空に湧く入道雲にも映えて、ローカル線らしい雰囲気を醸し出している。
駅の東側、宅地開発が進む中館台地の伊佐(いさ)城跡には今は観音寺が立ち、そこを抜けると五行川(ごぎょうがわ)沿いの勤行(ごんぎょう)緑地の先に、筑波山を望む田園風景が広がる。夏風が青い田んぼの上を吹き渡る光景は、〝日本のふるさと〟を思わせた。
文・写真/越信行
真岡線の前身、真岡軽便線と折本駅は1912年開業。折本駅へは下館駅から普通列車7分
(出典「旅行読売」2019年9月号)
(ウェブ掲載 2021年8月13日)