駅麺紀行 ぷらっとぴっと【小倉駅】
客の7割が注文する看板商品のかしわうどん。歯応えがある薄切りの鶏肉はかむほどにうま味が染み出す
秘伝のたれで炊く鶏肉と極上スープ
甘辛く煮た鶏肉を載せたかしわうどんは、北九州市民のソウルフード。その名店として昭和30年代から愛され続けているのが、小倉駅の1・2番線ホームにある立ち食いうどん店「ぷらっとぴっと」だ。経営する「北九州駅弁当」は明治中期の1891年創業の老舗駅弁店で、かしわうどんの店は1958年頃開業した。
取材時に居合わせた50代の常連客によると、「学生時代から通っているけど、ここのかしわうどんが一番うまい。今でも小倉駅に来たら、列車を1本遅らせてでも食べます」とのこと。
おいしさの秘密はかしわの味付けに使う秘伝のたれにある。福岡県産のしょうゆと酒、みりん、砂糖をベースに、長年つぎ足しながら使い続けているたれで鶏肉を炊いているという。
一方、カツオ節と昆布の風味が香るスープはあっさりした味。鶏肉と合わさった時の味を計算して作っているそうで、食べ進むうちに鶏肉の甘辛い味とコクがどんどん染み出し、最後の一滴まで飲み干したくなる極上のスープに仕上がるという。地元業者から朝届くゆで麺は、短時間で調理できるよう軟らかめに特注されており、濃厚なスープによく合う。コリコリした鶏肉との食感の対比も楽しい。
ベテランスタッフの杉本利江子さんによると、おいしさの最後の決め手は、麺のゆで加減と湯切りの技術だとか。注文から30秒ほどでできあがる早業(はやわざ)だ。「たかが立ち食いうどんですが、されど立ち食いうどん。全員、プライドを持って、作っとります」と阿部勇社長は胸を張る。
「ぷらっとぴっと」は小倉駅7・8番線ホームにもあるが、今なお券売機がないのは1・2番線ホームの店だけ。「うどん、1つ」「あいよ」で始まる昭和の立ち食いの風情が味わえるのも、この店の人気の秘密だろう。
文/茂島信一 写真/森田公司
【お品書き】(※2021年4月現在の料金)
かしわうどん ◉390円
月見うどん ◉440円
きつねうどん ◉440円
わかめうどん ◉440円
丸天うどん ◉490円
※そばはそれぞれ20円増し
住所:鹿児島線・日豊線・日田彦山線小倉駅改札内(1・2番線ホームおよび7・8番線ホーム)
問い合わせ:093-533-0111
(出典 2021年臨時増刊「駅麺紀行」)
(ウェブ掲載 2021年12月29日)