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【青春18きっぷ】勇退間近のSLで「銀河鉄道」の世界を体感(1)

場所
> 釜石市、遠野市ほか
【青春18きっぷ】勇退間近のSLで「銀河鉄道」の世界を体感(1)

宮守川橋梁(めがね橋)を渡るSL銀河。この雄姿が見られるのも来年春まで(写真/ピクスタ)

 

松島から三陸海岸の震災の遺構をたどって

2014年に東北の復興支援の一環として登場したSL銀河は、車両の老朽化もあり、2023年春の引退が決定している。青春18きっぷを使って三陸の名所を巡りながら、最後の夏を迎える人気SLの旅を楽しみたい。

仙台駅を仙石線の列車で出発し、松島で観光の後、三陸沿岸部を北上する。気仙沼線の柳津(やないづ)駅でBRT(バス高速輸送システム)に乗り換え。BRTは主に気仙沼線や大船渡線の軌道跡の転用道路を走り、特例として青春18きっぷでも利用できる。時おり三陸らしい入り組んだ海岸線が進行方向右側の窓に広がる。

陸前高田市に入り、奇跡の一本松バス停で下車。この辺りはかつて高田松原と呼ばれる7万本の松林が生い茂る景勝地であったが、津波でほぼすべてが流された。唯一残った「奇跡の一本松」は震災遺構として保存されている。

バス停は2021年12月に全面オープンした高田松原津波復興祈念公園内にある。園内に併設されている東日本大震災津波伝承館や、道の駅高田松原を訪問。海沿いの展望台からは、少しずつ復興していく町の様子がうかがえる。盛(さかり)―釜石駅の三陸鉄道は別途乗車券(1100円)が必要となる。

仙石線と松島遠景(写真/伊藤岳志)
リアス式海岸を眺める三陸鉄道車窓(三陸―吉浜駅間)
高田松原津波復興祈念公園
復興のシンボルとなった奇跡の一本松。東日本大震災津波伝承館も近い

遠野駅から柳田國男ゆかりの民話の里を歩く

翌日、釜石―花巻駅間を結ぶSL銀河に乗る。運行は主に土・日曜で、原則として土曜は花巻発、日曜は釜石発。指定席券(840円)を買えば、青春18きっぷでも利用できる。

列車のデザインは宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』がモチーフだ。車体には、わし座、さそり座、鷺(さぎ)、ラッコなど、童話に登場した星座や動物たちが描かれている。車内はガス灯風の照明、ステンドグラスなど、賢治の生きた大正から昭和にかけての世界観に満ちている。

9時57分、横断幕や大漁旗に見送られ釜石駅を出発。沿線では多くの人が列車に手を振り、乗客も振り返す。和気あいあいとした車内の雰囲気は観光列車ならでは。

昔は鉄鉱石採掘でにぎわった陸中大橋駅を出ると、山間部に入る。トンネル内で高度を上げながら左にカーブし、進路を180度変えると、左窓の斜面の下方に、先ほど停車したホームが見えた。これが釜石線の名所の一つ、陸中大橋のヘアピンカーブだ。

足ケ瀬駅(通過)で標高480㍍の峠を越えると、周囲は盆地となり、青々とした田んぼや、緑豊かな北上山地が左右に広がる。

正午前、釜石線のほぼ中間地点の遠野駅に着き、ここで約2時間停車。駅舎は1950年築の、硬質ブロック造りのレトロな雰囲気。駅から徒歩5分の食事処「ばんがり伊藤家」で郷土料理を味わう。「とおの物語の館」には、音と映像で昔話の世界を体感できる昔話蔵や、民俗学者・柳田國男が常宿とした宿を転用した展示館がある。

 

文・写真/谷崎 竜

 

勇退間近のSLで「銀河鉄道」の世界を体感(2)へ続く

星空がデザインされたSL銀河のヘッドマーク
珍しいコンクリートブロック造り瓦葺きの遠野駅
遠野駅から徒歩5分の古民家で営業する「ばんがり伊藤家」のまぐろランチ

ばんがり伊藤家 11時~19時(月曜は~15時)/火曜休/TEL:0198-60-1110

とおの物語の館 9時~16時30分/無休/510円/TEL:0198-62-7887

※営業時間や料金は掲載時のものです。ホームページなどで最新のデータをご確認ください。

 

(出典:「旅行読売」2022年7月号)

(WEB掲載:2022年8月29日)


Writer

谷崎 竜 さん

旅行ライター。1969年、名古屋生まれ。千葉大学理学部を卒業後、バックパッカーで世界五大陸を放浪。帰国後、旅専門のフリーライター・カメラマンとして活動する。著書に「のんびり各駅停車」(講談社)、「青春18きっぷパーフェクトガイド」(イカロス出版)など多数。

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