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【この工場がすごい】能作で鋳物作りの熱気に触れる

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【この工場がすごい】能作で鋳物作りの熱気に触れる

鋳物作りの製作体験で感動を持ち帰る

多彩な音色を響かせる真鍮(しんちゅう)製の風鈴、錫(すず)の特性を生かした曲がる器「KAGO」シリーズから、医療用のリングまで……。

1916年創業の鋳物(いもの)のメーカー能作は、高い伝統技術とデザイン性を融合させてヒット商品を生み出してきた。現在は産業観光の担い手としても注目を集め、本社工場には年間13万人が訪れるという。魅力を体感しようと、北陸新幹線で工場見学に出かけた。

新高岡駅から南へ8キロ。庄川沿いの田園地帯にある高岡オフィスパークに能作が移転してきたのは2017年のこと。1.3ヘクタールの敷地に立つ建物は「工場と観光施設をひとつにしたい」との能作克治社長の思いを形にしたものだ。

高岡オフィスパークの一角に立つ工場

1100枚の真鍮板に覆われたエントランスから、100本のそろり(花器)が並ぶ小部屋を抜けると、天井高6.6メートルの大空間。目の前にそびえる倉庫に鋳造用の木型が収まっている。その数、2500以上。内装材や家具、館内のサインにも錫や真鍮が用いられ、鋳物への興味が高まってくる。

ロビーで流れる紹介映像に見入っていると工場見学の時間となり、案内係のスタッフが登場。その場で材料や道具を見ながら、鋳物の製造工程を教わる。鋳物とは、高温で溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やし固めた製品のこと。高岡銅器は400年以上の歴史を持ち、能作は創業時から真鍮製の仏具や茶道具を製造。現在の主力は2003年に開発した錫100%のテーブルウェアだという。

続いて製造の現場へ。鋳物場に入ると、大きな機械音と振動に包まれた。「今は鋳型を作っているので鋳物砂の匂いがするかもしれません。こちらが錫で、あちらが真鍮。錫製品の方は、ぐい呑の みの鋳型を作っています」と説明を受け、見学したのは生型(なまがた)鋳造法の鋳型作り。木型に型枠を被せ、そこに砂と粘土と水を混ぜ合わせた鋳物砂を入れて押し固める。職人さんは淡々と作業を進めるが、その難しさは後で思い知ることに……。

この鋳型に熱で溶かした金属を流し込む「鋳込み」の作業は、週に2日ほど行われる。「鋳込みの日は、溶けた金属や焼けた砂の匂いがします。ドアを閉めるので、熱もかなり感じますよ」とのこと。ガラス越しでない分、五感でものづくりの迫力に触れられる。

最後に仕上場へ。鋳型から取り出した鋳物には、金属を流し込む際の湯道を切り落とした跡や砂の跡が残っている。表面を滑らかにするために少しずつ削り、磨いていくのだ。風鈴や食器が、目の前で美しく仕上がっていった。

錫製品の鋳型を作る工場内の様子
真鍮製の風鈴にロクロ仕上げを施す職人さん

鋳物を使い、鋳物を作る

鋳物を実際に使ってみようと、カフェ「IMONO KITCHEN」でランチにした。ベーグル食べ放題セットを選んだのは、KAGOシリーズの器に盛り付けられていたから。サラダやドレッシングの器、水を飲むカップも錫製で、ひんやりとした使い心地だ。

「NOUSAKU LAB」では鋳物製作体験に挑戦。鋳物砂の触り心地にうっとりしていると、「今日は湿度が高いので、粘土がしっとりしていますね」とスタッフ。シンプルな形の箸置を作ったが、工程が進むほどに鋳物の奥深さを実感。鋳込み作業も間近に観察できた。「融点に近すぎるとすぐ固まるし、高温すぎると砂が焼けてしまう。製品の形によって、錫の適温や流し込むスピードも異なります」という言葉が胸に刻まれた。

鋳物製作体験は事前予約制。ぐい吞や小鉢、箸置きなどを作れる
FACTORY SHOPでは錫の器をはじめ、限定商品も並ぶ

こうして産業観光に力を入れる能作が見据えるのは、産地全体の活性化とものづくりの未来だ。地元企業と連携し、結婚
10周年を祝う「錫婚式」を企画したり、木彫の町・南砺 (なんと)市井波の宿と協力してクラフト旅を提案したり。取材当日はカップルや女性グループのほか、小学生も工場見学に訪れていた。伝統産業の持つ力は、体験を通して人に伝わることで、次の時代に受け継がれていくのだろう。


文/内山沙希子 写真/谷口 哲

(出典:「旅行読売」2022年9月号)


能作 TEL:0766-63-0001

日時:月曜~土曜の11時~、13時~、14時~、15時~、16時~(日曜・祝日、年末年始休。土曜は不定休)
料金:無料
交通:北陸新幹線新高岡駅からタクシー15分/北陸道高岡砺波スマートICから2キロ
住所:高岡市オフィスパーク8-1

予約方法 受付:希望日の3か月前から2日前までにインターネットか電話で予約
人数:1人~10人(直近2日以内の予約、団体の予約は電話で問い合わせ)

 

 


Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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