秋が深まる山科疏水へ
境内に真っ赤なモミジの絨毯が敷き詰められた毘沙門堂
琵琶湖の豊かな水を京都市内に注ぐ琵琶湖疏水(そすい)。なかでも両岸にサクラ並木が続く通称「山科(やましな)疏水(そすい)」のエリアは、遊歩道が整備された心地よい散策コースになっている。自然豊かな山科疏水界隈には、貴重な文化財を有する名刹が点在する。
山科を代表する寺院・毘沙門堂は、七福神の一人、毘沙門天を祀る門跡寺院だ。江戸時代に再建された伽藍だけでなく、見どころは狩野派の絵師による天井画や襖絵。霊殿の天井に描かれた龍は、狩野主(もり)信(のぶ)によるもので鋭い目つきや顔つきは観る角度によって変化するという。また御所から移築された宸殿(しんでん)内部の襖絵116面は、狩野益信の筆。どの角度から観ても、鑑賞者が中心になる「逆遠近法」という手法が使われている。「心」の裏文字を形取った回遊式庭園「晩翠園」や、モミジの絨毯が敷き詰められた参道など、深まる秋を堪能するには最適だ。
秘仏・大聖(だいしょう)歓喜天(かん ぎ てん)を本尊とする聖天堂が建てられたことから「山科聖天(しょうてん)」の呼び名で親しまれている双林院は、毘沙門堂の塔頭寺院。本尊は拝顔できないが、十一面観音とガネーシャ神の化身の姿で、頭が象、首から下は人間という姿をしているという。夫婦和合、子授け、財富に霊験あらたかと評判だ。
山科疏水沿いに堂宇が建つ安祥寺は、通常非公開だが、紅葉が美しい秋季など期間限定で特別拝観を行っている。本堂の観音堂には、本尊の木造十一面観音菩薩立像を祀るほか、四天王立像、徳川家康坐像などを安置。特別拝観では仏像や、修復が完了した青龍殿の「蘚
苔蟠龍(せんたいばんりゅう)」も鑑賞できる。