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【小山薫堂さんが選ぶ 私の極上温泉】インタビュー 湯道とは(2)

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【小山薫堂さんが選ぶ 私の極上温泉】インタビュー 湯道とは(2)

瀧波の露天風呂に入る小山さん。しつらえ、湯、料理など宿の随所に社長のこだわりが詰まっている(写真/アレックス・ムートン)

 

温泉旅は心を豊かにする貯金

【私の極上温泉】湯道とは 小山薫堂さんインタビュー(1)から続く。

日本の入浴は文化なんだ、財産なんだということを一人一人が改めて感じ、それが文化として海外の人へ伝わっていくと、さらにその価値が高まると思うんですよね。その時、入浴に紐(ひも)づくものが工芸品、文化的美術品になっていったりする。

茶道の世界ではさまざまな道具があることで職人が養われています。これに着想を得て、シーガイア(宮崎)の温泉施設・松泉宮(しょうせんきゅう)の中に湯室「おゆのみや」を作りました。茶室ならぬ湯室です。浴槽から壁、天井画、脱衣かご、桶(おけ)、椅子など、12人の職人による手業(てわざ)が集結しています。湯道を通して伝統工芸やその職人たちをも応援していけたらと考えています。

中川木工芸・中川周士さんと作った「狐桶」(写真/杉本 圭)

「湯道」を実践するにあたり、温泉か否かは問いません。自分自身、温泉だけではなくて銭湯など風呂全般が好きです。出張先で1時間あいたら、風呂を探してしまいます。15分湯につかって、5分で着替えれば20分で出てこられる。30分あれば風呂に行ってしまいますね。

もともと子どもの頃から銭湯が好きでした。大きな風呂に入るのが楽しみでね。幼稚園から小学校低学年の時は銭湯が遊び場みたいな感じでした。まだ明るいうちから銭湯へ、おもちゃを持って遊びに行くんです。我々の時代、水中モーターっていうおもちゃがあって、風呂の中で泳がせて遊んだりしていました。おじちゃん、おばちゃんに色々なことを教わったり、叱られたり。人生で最初に知らない人に叱られたのも風呂でしたね。

家の風呂も落ち着けるから好きでした。そもそも風呂が好きになったのは、親とのコミュニケーションをとれる場所だったからなのかもしれないですね。両親とも温泉が好きだったので、出身地の熊本県天草市にある下田温泉へよく連れて行ってもらってました。

そんな風呂にまつわる体験や思い出が、今回制作した映画「湯道」にも色濃く反映していると思います。

小山さんをうならせた、瀧波のハイクオリティな料理(写真/アレックス・ムートン)

熱い湯も、ぬるい湯も、ひなびた激シブも、ラグジュアリーなのも何でも好きです。でも激シブが一番好きなんですよ、実は。当然、湯の質も大事なんですけど、それ以上に風呂屋さんをやってる人の性格であったり、番台でのやり取りとか、そちらに喜びを感じるタイプです。

宿選びで大切にしていることは料理ですね。湯と料理のバランスがいい宿。それが赤湯温泉の山形座 瀧波(たきなみ)(山形)と仙仁(せに)温泉 岩の湯(長野)、よしが浦温泉 ランプの宿(石川)です。

瀧波は湯、料理ともにハイクオリティーで常に進化を続ける宿。社長である南浩史(ひろし)さんの熱量がすごいんです。色々な人の知恵を借りて新しいことにチャレンジし続け、いつ行っても新鮮な印象を与えてくれる。その澱(よど)みなきパッションは、まさに〝源泉かけ流しの情熱〟です(笑)。

湯道の関連で温泉旅に行く機会が増え、感じたことですが、人間死ぬ時に物を残して死んでいくよりは、自分が経験して得た宝物を心の中に増やしていくほうが、はるかに豊かだと思うんですよね。物質的なものだけに豊かさを感じる生き方よりも、自分自身の経験の豊かさを宝物とする生き方のほうが絶対幸せだと。

その宝物の作り方でもっともはずれがなく、自分自身も心地よいのが温泉旅ではないでしょうか。温泉旅は決して浪費ではなくて、心の財産の貯金。時には「えい!」と憧れの温泉宿のために使ってみてもいいんじゃないかな。

聞き手/中 文子

(出典:「旅行読売」2022年12月号)

(WEB掲載 2023年1月30日)

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©2023映画「湯道」製作委員会
©2023映画「湯道」製作委員会

映画「湯道」

小山薫堂さん企画・脚本で「湯道」が映画になりました!

あらすじ
亡き父が遺(のこ)した実家の銭湯「まるきん温泉」を、マンションに建て替えようと現れた建築家の三浦史朗(生田斗真)。しかし、史朗の代わりに銭湯を継いだ弟の悟朗(濱田岳)は猛反対。ある日、ボイラー室のボヤ騒ぎで悟朗が入院することに。看板娘のいづみ(橋本環奈)の助言を受け、史朗は不慣れながらも湯を沸かし、客を迎えることになるが・・・。

映画「湯道」公式サイト

2023年2月23日 全国東宝系にて公開です。


Writer

中 文子 さん

神戸生まれの大阪育ち。学生時代に旅に目覚め、アジア(おもに中国)や国内各地を探訪。旅を仕事にできたら面白そうだ!と旅行読売出版社に入社。広告課、編集部、メディアプロモーション部(広告)を経て、22年4月からメディア編集部所属。現在は、小1の壁と向き合いながら時短勤務中。温泉とお酒、楽器演奏が大好き。

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