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【桜の咲く駅へ】樽見鉄道で見に行く淡墨桜(1)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 岐阜県
> 本巣市
見頃
3月下旬~4月上旬
【桜の咲く駅へ】樽見鉄道で見に行く淡墨桜(1)

淡墨桜は現在も地元団体や樹木医が保護活動を行っている(写真/本巣市観光協会)

 

根尾川沿いを走るローカル線で名桜の咲く里へ

ローカル線に揺られて市街地から山里へ分け入り、終着駅にたどり着くと、日本三大桜に数えられる名木が待っている。そんな桜旅を楽しめるのが、岐阜県西部を走る樽見(たるみ)鉄道だ。東海道線に接続する大垣駅から樽見駅までの19駅、34.5㌔を約1時間で運行。例年3月下旬~4月上旬には桜ダイヤも組まれる。

樽見鉄道の鉄印

大垣駅を出発し、東大垣駅を経て揖斐(いび)川を渡ると進路は北へ。1両編成の気動車はしばらくの間、田畑や住宅地の中を進む。樽見鉄道は旧国鉄樽見線を引き継いだ第三セクター鉄道で、本社と車両基地のある本巣(もとす)駅では鉄印を販売。木知原(こちぼら)駅の手前から根尾川の近くを走り、橋梁(きょうりょう)を渡りつつ山間部に向かう。

谷汲口(たにぐみぐち)駅や高科駅、日当(ひなた)駅など、桜に彩られた駅で途中下車の誘惑にかられながら、終点の樽見駅に到着。樽見駅の駅舎は「うすずみふれあいプラザ」として憩いの空間になっており、目の前に桜の大木が立っている。

約20本の桜に包まれる谷汲口駅
列車は日当駅付近で第八根尾川橋梁を渡る

淡墨桜が待つ淡墨公園までは歩いて15分。根尾川に架かる桜橋を渡り、沿道の桜を見ながら小高い丘を登っていくと、まるで山里に浮かぶ春霞のような咲き姿が見えてくる。樹齢1500余年の淡墨桜は樹高17.3㍍、枝張りが最大27㍍。ヒガンザクラの一種で、つぼみの時には薄いピンク、満開に至って白色となり、散り際に淡い墨色を帯びてくることから名が付いたと言われる。

「満開時は雪が積もったように見応えがあります。空気が澄んでいて人も少ない早朝の花見がおすすめです」と本巣市観光協会のスタッフに教わった。

淡墨桜の歴史に触れるなら、園内のさくら資料館を訪ねたい。樹勢を回復するために歯科医・前田利行氏らが行った根接(つ) ぎのようすや、保護活動を展開した作家・宇野千代に関する資料が展示されている。公園から北へ2㌔の根尾米生産田には、淡墨桜の実生(みしょう)である神龍(じんりゅう)桜も咲く。

淡墨桜の幽玄な姿が見られるライトアップ(写真/本巣市観光協会)

西国三十三所巡礼の満願の寺も桜の名所

淡墨桜と別れて樽見駅に戻ったら、復路は谷汲口駅で途中下車。国鉄樽見線開業時に植えられたという、線路沿いの桜が美しい。ここから県内有数の桜名所である谷汲山華厳寺(けごんじ) までは、バスで10分ほど。西国三十三所巡礼の満願の寺として知られ、参道沿い1㌔にわたって植えられた約300本のソメイヨシノが4月上旬~中旬に見頃を迎える。

今回は樽見鉄道沿線での日帰り桜旅としたが、岐阜にはほかにも魅力的な桜のローカル線がある。谷汲山華厳寺からバスで揖斐(いび駅に向かえば、養老鉄道に乗り継げる。大垣駅を拠点に宿泊の旅程を組み、長良川鉄道とあわせて桜巡りをするのもいいだろう。

文/内山沙希子

 

【桜の咲く駅へ】樽見鉄道で見に行く淡墨桜(2)

798年に創建された谷汲山華厳寺。参道が桜のトンネルとなる

淡墨桜ういろ

本巣駅の吉野屋で販売。750円。もっちりとした米粉の生地に塩漬けの桜を混ぜ合わせたういろ。春だけで1万本が売れるという人気商品。開花期は淡墨公園内でも販売される。

■8時30分~18時/無休/TEL0581-34-2034(御菓子所 吉野屋)※掲載時のデータです。


淡墨桜

見頃: 3月下旬~4月上旬

国指定天然記念物としての正式名称は根尾谷淡墨ザクラ。樹齢1500余年で、継体(けいたい)天皇( 在位507~530年)の手植えと伝わる。1949年に238本の根接ぎが行われ、枯死を免れた歴史を持つ。作家の宇野千代が愛し、小説にも描かれた。樹高17.3㍍、幹回り9.4㍍。

■見学自由/☎0581・34・3988(本巣市観光協会)

 

(出典:「旅行読売」2023年4月号)

(Web掲載:2023年3月28日)

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Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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