たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【私だけのひとり旅】京都へ 青もみじの庭園と京菓子の奥深さ(2)

場所
> 京都市
【私だけのひとり旅】京都へ 青もみじの庭園と京菓子の奥深さ(2)

建仁寺の「大雄苑」は大雄山(百丈山)の景色を模している。植熊3代目・加藤熊吉の作

 

禅の思想を反映した美しい庭へ

【私だけのひとり旅】青もみじの庭園と京菓子の奥深さ 京都へ (1)から続く

京都を代表する山と川を存分に眺めたら、出町柳(でまちやなぎ)から京阪電車で南下。これから訪れるのは、限られた空間に自然を封じ込めた禅の庭だ。

祇園(ぎおん)四条駅で下車し、祇園のメインストリート・花見小路へ。お茶屋や料亭、新装したばかりの祇園甲部歌舞練場(こうぶかぶれんじょう)を横目に、石畳の町並みを歩く。通りの南端に位置するのが臨済宗建仁寺(けんにんじ)派の大本山・建仁寺。本坊中庭の「潮音庭(ちょうおんてい)」は新緑も鮮やかで、四方から観賞できる。

潮音庭のドウダンツツジは4月~5月に花が咲く

「正面はどこですか、ってよく聞かれるんですけどね。ぐるぐる回って自分で探してみてください、ということなんです」。そう話すのは、内務部長の浅野俊道さん。「潮音庭」を囲む大書院と小書院、廊下を歩きながら庭を眺めてみる。中央に三尊石、そこから渦を巻くように大小の石やカエデが配されているため、どこから見ても美しい。が、確かにここから見ていたい、と思う場所がある。「きれいやな、と思うことで、庭が完成するんですね」と浅野さん。自身の心のありようによって、見るたびに庭の印象も変わりそう。

俵屋宗達筆「風神雷神図」。原本は京都国立博物館に寄託。高精細複製作品を展示
法堂天井の小泉淳作筆「双龍図」

方丈庭園「大雄苑(だいおうえん)」は、白砂に立つ巨石が中国江西省の大雄山を模しており、うねるような砂紋が大海を思わせる。「枯山水では白砂を海に見立てますが、あの石が大雄山だとすれば、雲海と考えてもいいわけです」。浅野さんの言葉で、見えていた世界がガラッと変わった。禅の庭は簡素だからこそ、想像の余地がある。庭を見ることは、自らと向き合うことにつながっているのだろう。

建仁寺には、有名な国宝「風神雷神図」の複製や、天井図「双龍図」もあり、ぜひ見ていきたい。

方丈と開山堂を結ぶ通天橋。カエデの新緑は4月下旬~6月上旬

旅の最後は青もみじの絶景で締めくくろう。京阪電車でさらに南下し、臨済宗東福寺(とうふくじ) 派の大本山・東福寺へ。方丈の四方に庭を巡らせたのは、庭園史研究家で作庭家の重森三玲(しげもりみれい)だ。

「南庭で古代中国の蓬莱神仙(ほうらいしんせん)思想を表現するなど、枯山水の伝統的な手法を用いながら、全体としては斬新な作りとなっています」と広報主事の宇野虓堂(こうどう)さん。東庭では礎石で北斗七星が、西庭・北庭では敷石や苔で市松模様が描かれるが、現代アートのような庭が廃材の再利用によって生まれた点が趣深い。

無駄がなく、シンプルであること。京都で出合った美しさとおいしさについて考えながら、境内の渓谷に架かる通天橋から青もみじを眺めた。


文/内山沙希子 写真/谷口 哲ほか

 

京都 立ち寄りたい名園

○△□乃の庭。禅宗の四大思想(地水火風)を、地(□)水(○)火(△)で象徴したものとも言われる

建仁寺

1202年に創建された、京都最古の禅寺。開基は源頼家、開山は栄西禅師(えいさいぜんし)。所有する文化財は「風神雷神図」(国宝)、方丈や勅使門(いずれも重文)など。1940年作庭の方丈庭園「大雄苑」と「潮音庭」「○△□乃の庭(まるさんかくしかくのにわ)」がある。潮音庭は、四方から観賞できる禅の庭として知られる。

■10時~16時30分/無休(法要による休止日あり)/600円/京阪本線祇園四条駅から徒歩7分/TEL:075-561-0190

※掲載時のデータです。

 

イサム・ノグチが「モンドリアン風の新しい角度の庭」と評した東福寺の北庭

東福寺

重森三玲作庭の四つの庭を巡る。摂政・九條道家の発願で、1236年に創建された。開山は円爾(えんに)(聖一国師=しょういちこくし)。方丈の東西南北に四庭を持つ「本坊庭園(方丈)」は国の名勝。境内を流れる「洗玉澗(せんぎょくかん)」に三つの橋が架かり、通天橋から望む青もみじが美しい。

■9時~16時(季節により異なる)/無休/本坊庭園・通天橋・開山堂共通拝観券1000円/京阪本線東福寺駅から徒歩10分/TEL:075・561・0087

 

京都 ひとり旅の宿

OMO5(おもふぁいぶ)京都三条 by 星野リゾート

河原町通に面して立つ。三条通や高瀬川周辺の「ご近所マップ」を用意し、高瀬川沿いや三条界隈の老舗を訪ねるアクティビティもあり、「ご近所」の街歩きが楽しめる。カフェの朝食は生湯葉漬物リゾットがおすすめ。

■ひとり泊データ 通年可/1泊素泊まり7000円~/トイレ付き16平方㍍ダブル洋室など/地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩2分(京都市中京区河原町通三条上る 恵比須町434-1)/TEL:050-3134-8095

※掲載時のデータです。

 

ドーミーインPREMIUM(プレミアム) 京都駅前

最上階9階の天然温泉大浴場「花蛍の湯」は、旅の疲れを癒やす露天風呂やサウナを備える。夜食の夜鳴きそば(無料)、朝食(2300円)で味わえる海鮮丼が好評だ。アクセスも良く、京都観光の拠点にいい。

■ひとり泊データ 通年可/1泊素泊まり1万3350円~/トイレ付き14平方㍍ダブル洋室など/京都駅中央口から徒歩3分(京都市下京区東塩小路町558-8)/TEL:075-371-5489

※掲載時のデータです。

 

ALA(アルア) HOTEL KYOTO

2022年7月に開業し、京都駅からすぐの立地とぜいたくな空間が魅力。開放的なロビーや各フロアにある坪庭が印象的だ。天然温泉を使用した露天風呂付きの大浴場、ラウンジ、レストランを備える。

■ひとり泊データ 繁忙期を除く/1泊素泊まり7000円~/トイレ付き20平方㍍ダブル洋室など/京都駅中央口から徒歩4分(京都市下京区東洞院通七条下る 塩小路町518)/TEL:075-371-0007

※掲載時のデータです。


(出典:「旅行読売」2023年6月号)

(Web掲載:2023年5月26日)

☛京都など近畿エリアへのツアーはこちら


Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています