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【旅の朝ごはん】飛騨のごっつぉ(うまいもん)を味わう(1)

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  • 国内
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  • > 岐阜県
> 飛騨市00
【旅の朝ごはん】飛騨のごっつぉ(うまいもん)を味わう(1)

八ツ三館の朝食。食材の良さを生かしたメリハリのある味付けは料理旅館ならでは

 

炊きたての白いごはんに、朴葉みその香ばしい匂い

高山線の飛騨古川駅から歩いて10分近く。荒城(あらき) 川の向こうに雪化粧した飛騨の山々が見えてきた。橋を渡ると、創業160年余りの老舗旅館、八ツ三館(やつさんかん)がある。

実はこの宿、料理旅館としても名高い。開業当時は街道を歩いて往来する商人向けの宿だったが、1934年に高山線が開通し、商人宿の役目は終えた。そこで地元の冠婚葬祭などに料理を提供する料亭としての営業も始めると、その味が評判となり、会社の接待や宴会などでも広く使われるようになった。

今も5人の料理人が腕を振るい、春は山菜、夏からはアユにイワナやヤマメなどの川魚、加えて飛騨牛に飛騨とらふぐと、夕食には逸品料理が並ぶ。きっと朝ごはんもおいしいに違いない。

「朝食は地元の食材を使って、この地で昔から食べられていた〝朴葉(ほおば)みそ〟をはじめ、〝こも豆腐〟〝ぎせい焼き〟〝煮たくもじ〟など、田舎料理を主にお出ししています」と女将の池田理佳子さん。

朴葉みそは、みそにネギなどの薬味を混ぜ、朴葉に載せて焼いたもの。ごはんの進む飛騨の朝食の定番メニューだ。こも豆腐は、こも(藁<わら>で編んだむしろ)で豆腐を包んでゆでたもので、味が染みやすいので煮物に向く。ぎせい焼きは豆腐に味を付けて焼いたもの。くもじとは漬物のことで「煮たくもじ」は、漬けすぎて酸っぱくなった古漬を煮たものだという。

山里の冬を乗り切るには、豆腐は貴重なたんぱく源であり、漬物も野菜を補う保存食として重宝したのだろう。

歴史を感じさせる八ツ三館の玄関

暮らしを感じさせる素朴な味わい

食事は庭の見える個室の食事処でいただく。自家製の朴葉みそは、ゴマ油や砂糖、練りゴマなどで味を付け、干しシイタケやネギ入りで上に山菜が載る。あぶると香ばしい匂いが部屋中に漂う。

朝食の時間に合わせて釜で炊き上げる飛騨産コシヒカリ。蓋を開けると、さっと湯気が上がる。朴葉みそだけで、まずは1杯いけそうだ。

こも豆腐は薄味だが、だしの味がしっかり染みている。シャキシャキのなますや漬物のダイコンも、ほんのり甘いきんとんのサツマイモも、宿の農園で収穫したもの。煮物のゴボウからは土の香りがした。なんだか懐かしい味に顔がほころぶ。素朴な飛騨の暮らしが、ぼんやりと目に浮かぶ。

炊きたてごはんに朴葉みそを載せる

増築を重ねた館内は広く、大半が木造建築で、階段を上る時には木材のきしむ音がする。が、そんな風情もゆったりした時間の流れを演出していて心地いい。玄関をはじめ、長い廊下やお休み処など、至る所に飾られている花や書などのしつらいを眺めるのも楽しい。

館内のしつらいは季節に合わせて大女将が仕立てる
館内には、火鉢やマッサージチェアなどを置いた休憩スペースも多い

客室は築年数などにより3種のタイプがあり、それぞれ異なる造りで、明治期の1905年再建の「招月楼」は国の登録有形文化財。川沿いの部屋は広縁だけで10畳はあり、大きな窓から眺める景色は幻想的だ。
 

招月楼の客室
大浴場には露天風呂も併設している

飛騨古川に温泉はないが、流葉(ながれは) 温泉から運び湯をしている。冬は「露天付大浴場」で雪見風呂もいい。

文/高崎真規子 写真/宮川 透

 

【旅の朝ごはん】飛騨のごっつぉ(うまいもん)を味わう(2)へ続く

 

 

名脇役はコレ!

飛騨納豆

地元飛騨古川の橋本商店が作る、粒が大きめのしっかりした食感の飛騨納豆に、飛騨かわいやまさち工房の加工品「えのき茶漬け」とネギを添えたもの。地元では誰もが知る人気のごはんのおとも2種がコラボレーションして、独特の味わいを醸し出す。しょうゆをかけずに食べるのがおすすめ。大豆のうまみを実感できる。

大粒の飛騨納豆

八ツ三館 

TEL:0577-73-2121
客室:全18室
食事:朝食・夕食=個室食事処
交通: 高山線飛騨古川駅から徒歩7分/中部縦貫道高山ICから18㌔
住所:岐阜県飛騨市古川町向町1-8-27料金(税込み) 朝食付き2食付き

料金(税込み):

1人1室利用 1泊朝食2万1600円~、 1泊2食2万9600円~(平日)
      1泊2食 3万1800円~(休前日)
2人1室利用 1泊朝食1万6100円~、1泊2食 2万4100円~(平日)
      1泊2食2万6300円~(休前日)

※掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2023年3月号)

(Web掲載:2023年6月14日)

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Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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