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【私だけのひとり旅】鬼ヶ島大洞窟を探訪し、海を見ながらビール 女木島・男木島(2)

場所
> 高松市
【私だけのひとり旅】鬼ヶ島大洞窟を探訪し、海を見ながらビール 女木島・男木島(2)

男木港の堤防で地の肴(さかな)をつまみにビールを一杯。そろそろ船の時間だ

 

男木島の集落の路地で出会った人とネコ

【私だけのひとり旅】鬼ヶ島大洞窟を探訪し、海を見ながらビール 女木島・男木島(1)から続く

女木(めぎ)港から再び「めおん」に乗り、北隣りの男木島(おぎじま)に渡る。この島も「瀬戸内国際芸術祭」の会場の一つ。アートだけでなく、近頃は私設図書館やコワーキングスペースができて注目されている。男木交流館で地図をもらい、アート作品を眺めながらぶらぶら歩く。有名な「歩く方舟(はこぶね)」はノアの方舟をモチーフにした立体作品で、堤防を歩く10本の足が写真で見るより大きくて驚く。

坂道を上ると、迷路のような路地が続く。民家の壁に突如現れるカラフルな壁画も作品の一つだ。町並みにしっくりなじんで見えるのは、島の廃材を用いているからだろうか。顔を上げると家々の向こうに海がきらめいていた。バイクで坂を上がってくる老人の姿も、映画のワンシーンのようだ。

階段状の細い路地が続く男木島の集落
民家の壁画

途中、コワーキングスペース「鍬(くわ)と本」の戸を開けた。「この建物、元は郵便局舎だったんですよ。みんなで集いながら働く場所として再生、おととしにオープンしたんです」と代表の福井大和(やまと)さん。聞けばこの方、「男木島図書館」の開設者・額賀(ぬかが)順子さんのパートナーだとか。

この図書館は、本好きの額賀さんが年代を問わず島の人が集える図書館を作ろうと奔走してできたもの。一度訪れたいと思っていた。幸運にも額賀さんの案内を得て、憧れの図書館に着く。壁にずらりと並ぶ本、うっすら漂う木の香り。本を介して島と旅人が、ゆるやかに溶け合うような感覚が心地よい。

額賀順子さんと福井大和さん夫妻。移住の相談窓口としても活動

夕刻は島のビュースポット・豊玉姫神社で夕日に見惚(みほ)れる。水平線に浮かぶ大槌(おおづち)島の、円すい形のシルエットが幻想的だ。感動さめやらぬまま、港近くの民宿まりも荘へ。座敷にはおとなしいネコがいて、〝係長〟と呼ばれていた。「私が社長やけん、この子は係長」と、笑顔がチャーミングな女将さん。

男木島の路地で出会ったネコ

男木島灯台まで歩き、帰りの船を待つ間にビールを飲む

翌日も晴れ。風も爽やかだし、島の北端にある男木島灯台まで歩くことにした。小鳥の声と波音が耳に快く響く。潮の流れによって色を変化させてゆく海面が、自然のアートのようだ。たどり着いた灯台は無塗装の御影石造りで、ロマンチックなたたずまい。ここまで来る旅行者は少ないが、ぜひ訪れたい場所だ。

帰りの船を待つ間、海を見ながらビールを飲む。これぞ、思い描いていた至福の島の時間である。年に数か月滞在して、離島で仕事をする暮らしもよさそうだ。すっかりいい気分になって、そんなことを思った。

文/北浦雅子 写真/泉田道夫

 

●モデルコース

【1日目】
高松港 
↓ フェリー20分
女木港 
↓ バス10分
鬼ヶ島大洞窟
↓ バス10分
女木港 
↓ フェリー20分
男木港
↓ すぐ
男木交流館
↓ 徒歩5分
男木島図書館
↓ 徒歩10分
豊玉姫神社
↓ 徒歩4分
民宿まりも荘 泊

【2日目】
民宿まりも荘
↓ 徒歩25分
男木島灯台
↓ 徒歩23分
男木港 
↓ フェリー40分
高松港

絵になるような古い灯台

男木島 立ち寄りたい施設

貝のような白屋根が青々 とした空に映えて美しい「男木交流館」

男木交流館

小木港にある、建物全体が異彩を放つアート作品になっている。瀬戸内国際芸術祭でスペインの現代芸術家ジャウメ・プレンサが手掛けたアート作品「男木島の魂」を、島の案内窓口、フェリーの待合所として活用。チケット売り場もある。多様な言語の文字がデザインされた屋根の影が、水面に映る様子が魅惑的だ。

■6時30分〜17時(観光案内は8時30分〜)/無休(臨時休あり)/男木港から徒歩すぐ/TEL:087-873-0006

※掲載時のデータです。

 

本の世界にするっと入り込める心地よい空間

男木島図書館

築100年の古民家を改築した私設図書館で、気軽に入れる男木島の交流拠点。事業主体はNPO法人。併設のカフェでドリンクや軽食を注文し、のんびり読書を楽しむことも。閲覧・貸出は無料(会員カード作成100円)。島外者は文庫本のみ貸し出し可能だ。

■13時〜16時30分/不定休/男木港から徒歩3分/TEL:080-3860-8401

※掲載時のデータです。

 

男木島 ひとり旅の宿

民宿まりも荘。中庭のある古民家の、素朴な風情に 癒やされる
心のこもった民宿まりも荘の夕食。男木島ならではの旬の海の幸も

民宿まりも荘

料理上手で明るい女将が魅力の民宿。中庭のある古民家の、素朴な風情に癒やされる。1階の座敷が食事処で、2階に客室が3部屋。旬の魚料理が味わえる。食堂も併設し、手作り弁当も販売。ネコの“係長”も人気者だ。

■ひとり泊データ1泊2食6500円〜/ 和室6畳(バス・トイレ共用)/男木港から徒歩2分(高松市男木町126)/℡:090-8283-9706

※掲載時のデータです。

 

ogijimaゆくる。島の古民家に、耐震補強工事をしてゲストハウスにリニューアル
客室2部屋、全体で定員7人のこぢんまりした宿だ

ogijimaゆくる

島の古民家に、耐震補強工事をしてゲストハウスにリニューアル。客室2部屋、全体で定員7人のこぢんまりした宿で、瀬戸内の島のノスタルジーを満喫できる。土・日曜、祝日はカフェもあるので、ランチ(予約優先)を目当てに来る人も。

■ひとり泊データ1 泊2 食1 万6500円〜/ 洋室8畳(ベッド2台)など(バス・トイレ共用)/男木港から徒歩3分(高松市男木町194-1)/TEL:070-4228-8483

※掲載時のデータです。


(出典:「旅行読売」2023年6月号)

(Web掲載:2023年6月16日)

~読売旅行のひとり旅~はこちら


Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

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