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格安鉄道旅の定番きっぷ「青春18きっぷ」の使い方

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格安鉄道旅の定番きっぷ「青春18きっぷ」の使い方

「青春18きっぷ」押さえておきたいポイント

JR線の普通・快速列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」。1982年の発売開始以来、格安鉄道旅の定番きっぷとして、学生から熟年層に至るまで幅広い支持を得てきた。2023年7月1日から夏季の販売が始まるのを前に、その使い方や、東京・名古屋・大阪を起点にどこまで乗れば得になるのかなどを解説しよう。

東京駅を起点とした場合に採算がとれる距離
名古屋駅を起点とした場合に採算が取れる距離
大阪駅を起点とした場合に採算が取れる距離

発売期間や値段は?

発売されるのは春・夏・冬の3シーズン。学生の長期休みとほぼ重なり、2023年度は年間で126日間使える。

2023年の夏季の発売期間は7月1日~8月31日、利用期間は7月20日~9月10日の予定。期間内ならどの日でも利用できる。利用日が連続する必要はない。JRのみどりの窓口、主な旅行会社などで販売され、一部主要駅の指定券対応タイプの券売機でも買える。発売期間中なら売り切れる心配はない。

値段は1万2050円(子ども同額)。1枚で5回(日)分使用できるので、1回あたり2410円となる。1、2回分などバラでは買えない。年齢制限はなく誰でも使える。

券面に5か所の日付スタンプ欄がある。使う際は、出発駅の有人改札口で、券面に日付印を押してもらう(自動改札機は利用不可)。無人駅から乗る場合は、車内で車掌に日付を入れてもらう。

1人で5回分を使えるのはもちろんだが、5人までのグループが「同一行程」で使うことも可能(その場合は人数分の日付印が必要)。

JR西日本の宮島フェリーでも利用できる

乗れる列車と有効期限は?

JR6社の普通・快速列車(普通車)に乗り放題。指定席車の場合は、別途指定席券を買えば利用できる。ライナー券や乗車整理券を買えば「ホームライナー」系統の列車も利用可。途中下車の制限はなく、JR在来線ならどの駅でも、何度でも乗り降り可能だ。

鉄道のほか、JR西日本宮島フェリー(宮島口―宮島間)にも乗船できる。

1回分は丸1日(原則として0時~24時)有効。翌日にまたがって運転される列車の場合、0時を過ぎて最初に停車する駅までが有効となる。ただし東京・大阪の電車特定区間(東京―千葉・取手・大宮・高尾駅間など)では、日付が変わっても終電まで使える。現在、青春18きっぷで乗れる夜行列車はない。

 

元がとれる距離は?

1回分は2410円相当なので、本州のJR3社の幹線なら、片道で141キロ(2640円)、日帰りでの往復なら片道71キロ(1340円)以上を乗ればお得になる計算。例えば、東京駅から中央線に乗る場合、片道は塩崎駅(甲府駅の2駅先)、往復なら四方津(しおつ)駅以遠まで行けばお得になる。

JR北海道・四国・九州の幹線の場合、本州3社とは運賃体系が異なり、片道で121キロ(JR北海道は101キロ)、日帰りでの往復なら片道61キロ(JR北海道は51キロ)以上乗れば、青春18きっぷの方が割安だ。

 

1回分でどこまで行ける?

東京駅を一番列車で出発し、普通・快速列車で西へ向かう場合。スムーズに乗り継げば、10時58分に名古屋駅、14時13分に大阪駅、17時08分に岡山駅、20時27分に広島駅に到着。さらに西へ進めば、日付が変わる0時0分に、山口県の四辻(よつつじ)駅(新山口駅の一つ手前)に着く。営業キロは1021.8キロで、通常運賃なら1万2870円の行程だ。青春18きっぷ1回分の値段と比べると1万円以上もお得になる。

 

特例として特急に乗れる石勝線の新夕張-新得駅間。途中のトマム駅では乗降も可能

JR以外でも利用できる?

特例として、①青い森鉄道八戸(はちのへ)―野辺地(のへじ)―青森駅間、②あいの風とやま鉄道富山―高岡駅間、③IRいしかわ鉄道金沢―津幡(つばた)駅間の3社線は、追加料金なしで普通・快速列車を通過利用できる。途中下車は上に記載した7駅のみ可能。ただし②③は、接続する七尾線、氷見(ひみ)線、城端(じょうはな)線のいずれかを利用する場合に限られる。そのため金沢―富山駅間を通しで乗車するような場合は利用できない。

 

バスにも乗れる?

(旧)気仙沼線と(旧)大船渡線のBRT(バス高速輸送システム)と、災害などによる不通区間で運行される代行バスに限り、利用できる。23年5月の時点で乗れる主なバスは次の通り。

【BRT】柳津(やないづ) ―気仙沼駅間、気仙沼―盛(さかり)駅間

【代行バス】根室線東鹿越(しかごえ)― 新得(しんとく)駅間、津軽線蟹田(かにた) ― 三 厩(みんまや)駅間、陸羽西線新庄―酒田駅間、米坂線坂町―米沢駅間、日田彦山線添田(そえだ) ―日田駅間

※日田彦山線の代行バス区間は23年8月28日にBRTとして開業予定。

 

特急にも乗れる?

原則として特急には乗れないが、特例として①石勝(せきしょう)線新夕張―新得駅間、②奥羽線青森―新青森駅間、③宮崎空港線宮崎―宮崎空港駅間、④佐世保線早岐(はいき) ―佐世保駅間の4区間だけは、追加料金なしで特急の普通車自由席に乗れる。①②に関しては、それぞれの区間を越えて乗車する場合、全乗車区間の乗車券と特急券が必要になるので、注意したい。

北海道新幹線オプション券で奥津軽いまべつ-木古内ー五稜郭駅間が片道1回利用できる

本州から北海道へ行ける?

「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を買えば、北海道新幹線の奥津軽いまべつ― 木古内(きこない)駅間、および道南いさりび鉄道線木古内―五稜郭駅間を、それぞれ片道1回のみ利用でき、これにより本州―北海道間の移動も可能となる。

「オプション券」は2490円(子ども同額)で乗車日当日限り有効。当日有効の青春18きっぷとの併用が条件だ。北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅はJR津軽線の津軽二股駅と隣接しているが、津軽線は本数が少ないため、乗り継ぎ計画は注意が必要だ(23年5月現在、津軽線の一部は災害のためバス代行を実施。詳細はJR東日本のホームページ参照)。

 

グリーン車にも乗れる?

普通・快速列車の「自由席グリーン車」は、別途グリーン券を買えば利用可だが、「指定席グリーン車」は利用不可。自由席グリーン車は、首都圏の主要路線(東海道線、高崎線、東北線、常磐線など)で多く運行されており、料金も比較的安いので利用価値は高い。

 

観光列車にも乗れる?

特急・急行でなければ、Rが運行観光列車にも乗れる。「くしろ湿原ノロッコ号」「奥出雲(おくいずも)おろち号」「藍(あい)よしのがわトロッコ」など、青春18きっぷで乗れる観光列車は全国で走っている。

多くは全車指定席のため、別に指定席券が必要となる。

文・写真/谷崎 竜


「「(出典:「旅行読売」2023年7月号)

(Web掲載:2023年6月20日)

※掲載時のデータです。

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Writer

谷崎 竜 さん

旅行ライター。1969年、名古屋生まれ。千葉大学理学部を卒業後、バックパッカーで世界五大陸を放浪。帰国後、旅専門のフリーライター・カメラマンとして活動する。著書に「のんびり各駅停車」(講談社)、「青春18きっぷパーフェクトガイド」(イカロス出版)など多数。

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