智証大師円珍に関する古文書類が、ユネスコ「世界の記憶」に登録
国宝「越州都督府過所」。円珍が越州(今の紹興)の開元寺から、唐の都・長安に向かう際、越州都督府が発給したもの。大中9(855)年3 月19日付
1100年以上にわたり良好な状態で伝わる貴重な文書
滋賀県大津市にある園城(おんじょう)寺(三井寺)が所有する智証大師円珍(ちしょうだいしえんちん)に関する古文書類(すべて国宝)が、ユネスコの「世界の記憶」に登録された。
「世界の記憶」は世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進することを目的に、ユネスコが1992年から始めた事業の総称。
今回登録されたのは、園城寺を再興した第5世天台座主・円珍が、853年〜58年に遣唐使として唐へ留学した際持ち帰った文書など。9世紀における日本と中国の文化交流の歴史や、当時の唐の法や交通制度を伝える史料群だ。
中でも唐の役所が発行する通行許可書「過所(かしょ)」2通は、役所名や出願者、年齢、携行品、旅の目的などが詳細に記されており、唐代の書式例を完全な形で伝えるものとして、世界で唯一現存する貴重な文書。1100年以上にわたり良好な状態で継承されてきたことは奇跡的とされる。
この登録を記念して7月4日〜30日に、大津市歴史博物館で「過所」を含む登録文化財の一部特別公開を行う。
問い合わせは、滋賀県文化財保護課 TEL:077-528-4672
文/中 文子
(出典:「旅行読売」2023年8月号)
(Web掲載:2023年6月28日)