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光原社 可否館(盛岡)【旅する喫茶店】

場所
> 盛岡市
光原社 可否館(盛岡)【旅する喫茶店】

ステンドグラスやレンガ壁、アンティークな調度が印象的な店内

 

宮沢賢治が名付けた、盛岡を象徴する店

連載「旅する喫茶店」を始める時、イメージしていたのがこの店だった。ユニークな歴史、個性的な建物、こだわりのメニュー、旅人がくつろげる静かな空間、そのすべてがある。

歴史は古く、魅力的だ。出版社として出発し、大正後期の1924年、創業者の及川四郎は盛岡高等農林学校時代の先輩だった宮沢賢治の童話集『注文の多い料理店』を刊行。光原社(こうげんしゃ)という名は賢治が命名したものだ。その後、南部鉄瓶や漆器の製造販売を始め、戦後に民藝運動を提唱した柳宗悦(やなぎむねよし)ら識者が集うサロン的な場所となり、彼らの思想に共感して1965年、陶磁器などを扱う民芸品店となった。7年後、休憩できる場所をと敷地内に喫茶店が生まれた。

朝の光が可否(コーヒー)館のステンドグラスを透過し、漆(うるし)塗りのテーブルに原色の色を映す。年季の入った民芸品のイスや、手触りの良い陶器のカップに使い手の愛着を感じる。「職人が手仕事で作った道具は経年変化が楽しめます」とスタッフ。「庶民の暮らしの中に美しさを見出したのが民藝運動。その姿勢は賢治の考えとも通じるものがあったかもしれません」

賢治は生前2冊しか本を出さず、無名の存在だった。クラシック音楽が流れる店内でコーヒーを飲み、庭の緑を眺める。「きれいにすきとほった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます(※)」。早世した詩人の言葉を想った。

文/福﨑圭介 写真/三浦健太郎

※『注文の多い料理店』序より

ステンドグラスの光が美しい
敷地内には喫茶店「可否館」のほか、全国の民芸品を販売する本店、賢治の資料館「マヂエル館」、海外のアクセサリーなどを販売する「カムパネラ」、漆器工房などがある。可否館の名前は、獅子文六の小説『可否道』から
コーヒーはハンドドリップでいれる
深煎珈琲(コーヒー)550円とくる みクッキー190円。アイスクリーム やワインゼリーもある(※掲載時の料金)

光原社 可否館

住所:岩手県盛岡市材木町2-18

営業:10時~ L.O.17時30分/毎月15日(土・日曜、祝日の場合は翌平日)休

交通:東北新幹線盛岡駅から徒歩10 分、または盛岡駅から循環バス3分、材木町南口下車徒歩2分

TEL:019-622-2894(光原社本店)

※掲載時のデータです。

 

(出典:「旅行読売」2023年7月号)

(Web掲載:2023年7月20日)

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Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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