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「みんなと同じ」「いつもと同じ」から始める できるだけがんばらないひとり旅 田村美葉

場所
「みんなと同じ」「いつもと同じ」から始める できるだけがんばらないひとり旅 田村美葉

初めての海外ひとり旅で訪れたキューバの街並み(田村美葉さんのプロフィールは下記)

 

私のひとり旅失敗談

おいしいものを食べて絶景を見て、ときには出会いがあって、帰ってくる頃には一回りも二回りも成長して「新しい自分」になっている。私の初めての海外ひとり旅は、そんな大きな憧れを持った旅でした。

行き先はキューバ。たまたま見た雑誌に載っていた美しい街並みに心惹(ひ)かれて選んだ旅行先でした。当時、日本からの直行便はなく、相当なお金も時間もかけてたどり着いたキューバ。でも、残念ながら、何かに目覚めたり、新しい自分に変化したりすることはありませんでした。

レストランでは、メニューが分からず毎日同じものを食べ、街を歩けば、観光客をターゲットにした詐欺に怯お びえ。国立の博物館では親切に解
説してくれた係員に最後に多額のチップを要求され……。たくさんの素敵な風景の写真がカメラの中には貯まったものの、なんとなくちょっと残念な思い出をいろいろ抱えて、帰ってきた旅でした。

そんな私でも、今では日本の47都道府県全て、海外は13か国を旅行し、自分なりに「これが私の旅のルール」と思えるものができてきました。そのルールとは、「できるだけがんばらない」ということ。せっかくの旅なのに「できるだけがんばらない」とはどういうことか、解説したいと思います。

パリ・サンマルタン運河で乗ったクルーズ船

「みんなと同じ」からでいい

私が初めての海外ひとり旅にキューバを選んだのは、なんとなく人と違う経験をすれば自分も変われるのではないかと考えたのが理由でした。でも、キューバが日本からの旅先としてあまり選ばれることがないのには理由があります。あまりにも遠すぎるし、日本語はもちろん英語もほぼ通じません。

初めてのひとり旅なら、そんなハードルの高いところへ行かなくても、まずは「みんなと同じ」人気の旅行先を選んで全く問題ありません。例えば、海外なら台湾、国内なら京都など。みんなが行っているところ、人気がある旅行先には、人気の理由があります。

韓国でハードルが高すぎて入れなかったお店

「いつもと同じ」でいい

「できるだけがんばらない」旅のもう一つのルールは、「いつもと同じことをする」ということ。旅に出ると「せっかくだから」と考えて、いつもと違うことにチャレンジしがちです。例えば、せっかく韓国に来たのだからひとりで焼き肉しよう、とか、ロンドンに来たからパブでひとり飲みしてみよう、とか。私もそう考えて挑戦して、そもそもひとり客では焼き肉ができなかったり、店のルールが分からず奇異の目で見られたり、わりと散々な目にあってきました。考えてみれば、日本にいるときでも、ひとり焼き肉もひとり飲みもしたことがなかったのに、突然旅先ならできる、と思ってしまうのが間違いでした。

代わりに、私は旅先でも「好物」を食べ、「自分がいつもしていること」をするようにしています。好物は餃子とカレー。思いがけず地元の名店に出会うことも多く楽しいです。「いつもしていること」は、(変わった趣味ですが)かっこいいエスカレーター巡りと、船に乗ること。こればっかりは自分の超得意分野なので、どんな場所に行っても「自分が一番楽しめる」自信がついてきました。

例えば、パンが好きでふだんからパン屋さん巡りをしているなら、旅先でもパン屋さん巡りを、読書が好きなら本屋さん巡りを、というように、「自分がいつもしていること」を優先順位の1位にしてみましょう。それこそが自由なひとり旅ならではの醍醐味(だいごみ)だと思います。

ひとり旅だからって、突然、新しい自分にならなくたって、大丈夫。「みんなと同じ」「いつもと同じ」から楽しむ旅を、始めてみませんか。

上海近郊の水郷・朱家角で乗った遊覧船

初めてのひとり旅(1泊2日) に「おすすめの町」

私がいろいろなところを旅して、「これは、旅先として人気があるのが分かるなぁ」と思った場所の条件は

◉安く行ける
◉気候がいい
◉リゾートなど、観光施設が充実している

の三つです。

国内だと、LCCで安く行きやすい四国。特に、瀬戸内海の島々はアートリゾートとして売り出し中。ひとりでも楽しみやすい文化的スポットが充実しています。

海外だと、台湾がおすすめ。台湾は日本からとても近く、LCCの便も豊富。常にあたたかく、見るべき観光名所もたくさんあって飽きません。

必ず持っていくもの

旅の持ちものは、できるだけ「いつもと同じ」を心がけています。スキンケア用品も、いつもと同じものを小分けにして。服や靴も、着慣れたもの、履き慣れたもの。

「旅行だから」と新しいものを買うのはおすすめしません。特に、カメラなどの電子機器は、せっかく新しいものを買っても、扱い慣れていなくて壊したり、なくしたり……あるいは、設定に慣れていなくてちゃんと撮れていなかったり、充電がすぐなくなってしまったり(経験談)。ふだんスマホで撮っているなら、スマホで十分だと思います。

一つ、旅でプラスするならおすすめは、行った場所が記録できる「GPSロガー」を持っていくこと。私は腕時計のGarmin Instinctで行った場所のログをとっています。スマホでもアプリの「Spottizmo!」など、手軽にログをとれるものがあるので、入れてみるのがおすすめ。勝手に位置情報を記録してくれて、あとから振り返ると楽しいです(旅に行く前に、少し試してからがおすすめですよ)。

文・写真/田村美葉


プロフィール

たむら みは
1984年、金沢市生まれ。福岡市在住の会社員。東京大学入学を機に上京して以来、都会の景色に魅了され、エスカレーターマニアとして活動し、ウェブサイト「東京エスカレーター」で情報を公開。また、海外・国内ひとり旅の基本情報をブログ「できるだけがんばらないひとりたび」で公開している。同名の著書も出版している。

 

(出典:「旅行読売」2023年6月号)

(Web掲載:2023年7月7日)

☛読売旅行の「ひとり旅」はこちら


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