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【青春18きっぷでできること】雄大な阿蘇を眺める九州横断の鉄道旅 豊肥線・南阿蘇鉄道・久大線ほか(1)

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【青春18きっぷでできること】雄大な阿蘇を眺める九州横断の鉄道旅 豊肥線・南阿蘇鉄道・久大線ほか(1)

数年前まで日本一長い駅名だった「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」を発車する南阿蘇鉄道のトロッコ列車。駅前の畑に大きなハートが描かれていた

 

全線復旧する南阿蘇鉄道のトロッコ列車に揺られて

熊本駅発着で豊肥線と久大線を乗り継ぐ九州横断鉄道旅に出かけた。このルートの途中、JR路線ではない第三セクター鉄道のため青春18きっぷは使えないが、どうしても乗りたい(応援したい)鉄道があった。2023年7月に全線復旧する南阿蘇鉄道(南鉄/なんてつ)だ。16年4月の熊本地震で被災し、7年以上不通だった、立野― 中松(なかまつ)駅間を含めた全線で運行を再開する。熊本駅から1時間ほどの立野駅で南鉄に乗り換えられるようになり、南鉄から豊肥線の肥後大津(ひごおおづ)駅まで乗り入れる列車も走る。

清らかな水が湧き出す白川水源へは南 阿蘇白川水源駅から徒歩10分ほど

同社総務課の宍戸優介さんは、自身も運転士として乗務し、最新車両のMT-4000形のデザインにも携わった。「立野駅も高森駅も新しくなり、南鉄はいよいよ7月15日に完全復旧します。〝0(ゼロ)からの南鉄〟として出発進行したいです」と思いを込めて語ってくれた。取材時は高森駅から中松駅までトロッコ列車「ゆうすげ号」に乗った。ガタンゴトンとよく揺れる車内、吹き抜ける心地よい風、阿蘇五岳(ごがく)をはじめとした雄大な景色、車掌による絶妙なアナウンス……。橋梁(きょうりょう)や水源などの名所ではゆっくりと走ってくれるのもうれしい。

ガラス窓のないトロッコ列車からの景 色を眺める、愛知県から来た今藤さんファミリー
童話の世界に迷い込んだような阿蘇白川駅に最新車両のMT-4000形が到着

南鉄のもう一つの魅力は駅にある。駅前や駅舎内に展開する店やカフェがにぎやかだ。南鉄が休止している間も長陽(ちょうよう)駅の駅舎内で営業を続けるカフェ「久永(ひさなが)屋」には車で来駅した客がひっきりなしに訪れる。お目当ては店長の久永操(そう)さんが作る素材の風味を大切にした無添加の「資本(シフォン)ケーキ」とマフィン、南阿蘇の伏流水を使ったかき氷だ。「資本ケーキ」はふわふわのケーキにフルーツと生クリームがトッピングされていて、見た目にも美しい。

「ここ長陽駅のレトロな駅舎、そしてホームから見渡す景色が気に入ってケーキ作りを始めました。7年ぶりに列車が走るようになり、日常の風景が戻ってくることを願っています」と久永さんは全線復旧に期待を寄せる。

文・写真/松尾 諭

 

雄大な阿蘇を眺める九州横断の鉄道旅 豊肥線・南阿蘇鉄道・久大線ほか(2)へつづく

 

南阿蘇鉄道の駅カフェ

1928年開業当時のレトロな雰囲気の木造駅舎が残る長陽駅
景色を楽 しみながら、手作りの資本ケーキやマ フィンを食べる至福の時間が流れる

久永屋

長陽駅に2006年にオープンしたカフェ。土・日曜、祝日のみ営業。管理駅長の久永操さんは「駅のホームからの眺めは春夏秋冬のよさがあって最高です」と太鼓判を押す。

■11時~18時/月曜~金曜休(祝日は営業)/TEL:0967-67-1107

※掲載時のデータです。

 

ゴレンジャー好きの店主が営む秘密基地
ジビエを使った「ゴンのカレー」と「キーマカレー」(各800円)が名物

ひみつ基地ゴン

中松駅の駅舎内にあるカフェ。店主の髙嶋千恵さんは「戦隊シリーズ初代のゴレンジャーが大好きなのが店名の由来。熊本地震の前日に管理人になることが決まりました」と話す。

■11時~16時/月曜~木曜休(祝日は営業)/TEL:050-7123-0655

※掲載時のデータです。

 

とんがり屋根が特徴の阿蘇白川駅の駅舎
南阿蘇の食材をふんだんに使用した料理の一例

Cafe 75th St.(セブンティ・フィフス・ストリート)

とんがり屋根が特徴の阿蘇白川駅の駅舎内にあるアメリカンテイスト満載のカフェ。店主のキザキ真理子さんが以前住んでいたアメリカのストリートの名前をそのまま店名にした。トロッコ列車の発着時にはホームでのお見送りも。

■9時30分~17時/火曜休/TEL:080-3909-8631

※掲載時のデータです。

※上記モデルコースの交通費:青春18きっぷ2回利用(4820円)で、2550円お得



Writer

松尾 諭 さん

フォトグラファー・ライター。1977(昭和52)年奈良県生まれ、三重県育ち。旅行会社勤務を経て、2005(平成17)年に鉄道ジャーナル社の『旅と鉄道』編集部へ。2009(平成21)年からフリーのフォトグラファー・ライターとなる。旅行雑誌や鉄道趣味誌などで取材を行い、写真や記事を発表。全国各地へ鉄道風景や絶景を求めて撮影行脚を続けている。

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