駅舎のある風景 今隈駅【甘木鉄道】
白い花に包まれた、沿線で最も新しい駅
甘木(あまぎ)鉄道の鉄印をもらおうと、鹿児島線と接続する基山(きやま)駅で列車を乗り換えた。
しばらく工場地帯を進んだ列車は、西鉄と接続する小郡(おごおり)市の中心部を通り、やがて高速道路をくぐり抜けた辺りから視界が開け、筑紫平野の田園地帯を走る。
戦前、旧大刀洗(たちあらい)陸軍飛行場への輸送を目的に敷かれた甘木線。終点の甘木駅への途中、駅前に自衛隊練習機が展示されている太刀洗駅の近くに大刀洗平和記念館があり、戦争の歴史を今に伝える。
基山駅への帰り道、夜の帳(とばり)が下りた今隈駅に降り立った。乗客が待つ駅舎の前で、真っ白なソバの花が咲き誇り、秋風に揺れている。
ふいに偶然通りかかった車のヘッドライトが花々を照らした。それはまるで平和を願う星々のように闇夜に浮かび上がった。
文・写真/越 信行
甘木線は旧国鉄甘木線として1939年に全線開業。今隈駅は2002年開業。基山駅から15分
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(出典:「旅行読売」2022年9月号)
(Web掲載:2023年8月9日)