【私の街の路面電車】福井鉄道福武線で路面電車の歴史を知る
「FUKURAMU(フクラム)」の愛称を持つ福武線の低床型車両F1000形
軌道から鉄道へと続く路線
福井市の田原町駅と越前市のたけふ新駅を結ぶ福井鉄道福武(ふくぶ)線は、鉄道区間と路面電車区間にまたがって走行しており、全国的にも珍しいという。今年3月、北府(きたご)駅に新しい施設ができたと知り、出かけた。
福井駅の福武線乗り場は、実物大の恐竜モニュメントが出迎えてくれる西口側にある。低床型LRT車両「フクラム」に乗り込む。走行音は静かで揺れも少ない。路面電車区間は福井市中心部を通っており、幅広い年代の地元住民が乗り降りする。乗客減少による存続の危機を乗り越え、2008年に約160万人だった年間の乗客数は22年には約187万人に回復したという。
水辺の眺めが涼やかな養浩館(ようこうかん)庭園に寄った後、再び乗車。商工会議所前と赤十字前の間で、路面電車の軌道から鉄道に切り替わるが、ごくスムーズな乗り入れだ。時折、小さなトンネルのような屋根をくぐる。積雪から分岐ポイントを守るための「スノーシェルター」だ。西山公園はツツジの名所として知られ、鯖江市西山動物園ではレッサーパンダやシロテテナガザルなどが見られる。
終点たけふ新駅の1駅手前の北府駅の外に福武線で活躍した200形車両が展示され、今年3月には「北府駅鉄道ミュージアム」が完成した。北府駅本屋(ほんおく)(駅舎)は福武線の歴史を伝える資料館となり、機器や道具、きっぷなどを展示。木造の北府駅車両工場は今も現役で使われている。
福武線はフクラムのほかにも様々なタイプの車両が走っている。今年3月にはフクラムライナーという新型車両がデビューした。純国産の車両で、直線的でシャープな外観。丸みを帯びたフクラムとは対照的で、新鮮な印象だ。ドイツのシュツットガルトで路面電車として走行していたレトラムは、やや細身のボディーが美しい。現在は春と秋に期間限定で運行しているが、来年から常時運行になる予定で、ますます楽しみだ。
文/出口由紀
乗って見て楽しんで
田園地帯から住宅地へと変化する車窓風景が面白いと思います。北府駅の広場では、定期
的にイベントも行っています。
北府駅を愛する会事務局長
永谷 隆さん(70)
かつての福井藩主松平家の別邸。池を中央に配置した回遊式林泉庭園で、国の名勝に指定さ
れている。数寄屋造りの屋敷から、目の前に広がる水辺の景色をゆったりと眺められる。
■9時~18時30分(11月6日~2月は〜16時30分)/年末年始休/220円/仁愛女子高校駅
から徒歩7分/ TEL:0776・20・5367(福井市文化振興課)
福武線の歴史が分かる資料を展示する北府駅本屋、北府駅車両工場、駅前に保存展示された200形車両などがある。北府駅本屋と北府駅車両工場は、国の登録有形文化財。
■200形車両と北府駅車両工場は内部非公開/無休/無料/北府駅から
すぐ/TEL: 0778・21・0706(福井鉄道鉄道部)、200形車両展示については
TEL: 0778・22・3704(越前市地域交通課)
江戸後期から続く老舗そば店。武生のご当地グルメであるボルガライス(サラダ付き1050円)も、30年以上
前からの人気メニューだ。オムライスにヒレカツを載せ、赤ワインを使うなどオリジナルのソースを研究。
■11時~14時(夜は予約営業)/木曜休/北府駅から徒歩5分/TEL: 0778・22・1363
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年9月号)
(Web掲載:2023年8月25日)