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【私の街の路面電車】都電荒川線で沿線の商店街巡り

場所
> 荒川区
【私の街の路面電車】都電荒川線で沿線の商店街巡り

商店街のメインストリート・旧小台通り。2023年4月にはこの先の防災公園で久しぶりのイベントが開催され、400人以上が来場した

 

地元の人が毎日の買い物で訪れる小台本銀座商店会

都電荒川線の楽しみ方に沿線の商店街巡りがある。ジョイフル三ノ輪、巣鴨地蔵通り商店街など人気の観光スポットになった大型商店街もあれば、地元の人が毎日の買い物で訪れる小さな商店街もある。

今回注目したのは小台停留場から旧小台通りを5分ほど歩いた小台本銀座商店会。車1台がやっと通れる狭い通りをはさんで、肉屋、八百屋、パン屋、布団屋などが約300メートルの距離に点在している。この地で1959年に創業した天ぷら屋「天ふじ」2代目・長沼理(おさむ)さんは、賑(にぎ)やかな頃をこう振り返る。

「父の話では、創業当時は近所にたくさんの工場があり、夕方になると仕事帰りの主婦が夕食の買い出しに寄ったそうです。店の数も多かったですし、私も銭湯の帰り道にコロッケの買い食いをしたものです」

店の創業当時の商店街の活気を語る「天フジ」2代目・長沼理さん

ところが、20年ほど前から人通りは減る一方。危機感を抱いた尾久(おぐ)・西尾久地区の商店街2代・3代店主たちが中心になり、2010年に有志グループ「オクノテ」を組織し、地域の活性化を始めた。

「2011年から始めた『あらかわハロウィン』は仮装行列と参加者にお菓子をプレゼントするイベントでした。第1回は商店街で開催したのですが、予想以上の参加者が集まり、2回目からはあらかわ遊園にご協力いただきました。すると、さらに参加者が増えて、うれしい悲鳴を上げましたよ」

そう語るのは銭湯「梅の湯」の3代目で、オクノテ事務局を兼務する栗田尚史(なおふみ)さん。ハロウィンは2015年で終了したが、栗田さんは銭湯のロビーで寄席やヨガ教室を行うなど、独自の取り組みも行った。

オクノテの活動を語る事務局兼、「梅の湯」3代目栗田尚史さん
都電荒川線。商店街まは小台停留場が最寄り

こうした活動に追い風が吹く。東京R(アール)不動産の「ニューニュータウン西尾久」計画が実行されたのだ。これは複数の空き家を新しい店として蘇(よみがえ)らせ、地域の活性化を図るという試みだ。現在は「おぐセンター」「土の子」など5軒が営業している。

「商店街までのアクセスを尋ねられた時には、最寄りは都電の小台停留場と答えています。地元の私たちにはバスのような存在ですが、唯一残る都電に一度は乗ってもらいたいです。隣の停留場が見えるほど1区間の距離は短いですが、1駅1駅ごとに街の雰囲気が変わると話す仲間もいますよ」と栗田さん。都電に乗って〝小さな商店街の挑戦〟を応援しに訪ねてみてほしい。

文・写真/内田 晃

 

小台本銀座商店会の店舗

梅の湯

1951年創業。現在の建物は2016年改築で、露天風呂、薬草湯、高濃度水素風呂、サウナなどを備える。ロビーには旧建物の天井画を展示。

■15時〜翌1時(日曜は8時〜12時も営業)/月曜休/520円/TEL:03-3893-1695

※掲載時のデータです。

 

おぐセンター

八百屋の店舗を再利用。カウンター席と琉球畳の座敷がある。今日の定食900円は肉料理または干物(サバ/サンマ/ホッケ)を選べる。

■11時30分〜21時30分/月曜休/TEL:03-6807-9181

※掲載時のデータです。

 

土の子

釉薬(ゆうやく)をかけずに低温で焼く素焼きの器「土器」の工房兼ショップ。制作体験3900円~(焼成費は別途)では粘土づくりから作成まで体験できる。

■13時〜21時(予約がない時は~19時)/火曜休/TEL:090-8069-0448

※掲載時のデータです。

 

天ふじ

魚市場から鮮魚、農家から有機野菜を仕入れ、独自ブレンドの油で揚げる。20種前後の天ぷらが並び、天丼650円~で持ち帰ることもできる。

■10時30分〜19時(売り切れ次第終了)/日曜・祝日休/TEL:03-3894-4746

※掲載時のデータです。


都電荒川線

●開業:1882年(東京馬車鉄道)
●営業距離:12.2キロ
●停留場数:30
●「都電一日乗車券」: 400円。都電荒川線に1日限り何度でも乗降できる。前売券は荒川電車営業所、都電定期券発売所、三ノ輪橋おもいで館で発売。当日券は上記ほか初乗り時に車内で購入する
●問い合わせ:都営交通お客様センター/TEL:03-3816-5700

(出典:「旅行読売」2023年9月号)
(Web掲載:2023年9月11日)

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Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

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