世界遺産を歩こう 青森の縄文遺跡群(2)
竪穴住居や漆の赤と黒をイメージした八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館。ミュージアムショップやカフェを併設
“縄文”って何だろうと思ったら、青森県を旅しよう。県内には約3400もの縄文遺跡があり、名所や特産品と組み合わせながらの旅が楽しめる。2021年、世界遺産に登録された県内8跡の中から、青森市、八戸市、つがる市にある四つの遺跡を中心に巡る。
「合掌土偶」「遮光器土偶」2大人気土偶にも会いに行こう
岩手県との県境に近い八戸市には、優美な漆製品で知られる是川(これかわ)石器時代遺跡がある。史跡エリアは2026年の完成を目指して整備中だが、遺物は「是川縄文館」で見ることができる。暗めの照明の展示室に、漆を塗った土器や籠製品、弓や櫛、様々な表情の土偶、精巧な文様の土器が並ぶ様子はまるで美術館のよう。
近接する風張1遺跡の出土品も展示されており、ここで発掘されたのが国内に5体ある国宝土偶の一つ「合掌土偶」だ。膝を曲げて座り両手を合わせた独特のポーズ。祈りとも出産ともいわれるその姿は、切々と心に訴えかけるものがある。
八戸埋蔵文化財センター是川縄文館
一王子・中居・堀田の3遺跡で構成される是川石器時代遺跡と、川を挟んだ向かいにある風張1遺跡の出土品を展示。「縄文の美と謎を探る」をテーマにしたモダンな雰囲気で、縄文人の高い工芸技術と美的センスに触れることができる。
■9時~17時(最終入館16時30分)/月曜休(祝日の場合は開館)、祝日の翌日休(土・日曜は開館)、年末年始休/250円/TEL0178-38-9511
※掲載時のデータです。
是川縄文館周辺の見どころとグルメ
八戸市魚菜小売市場
JR陸奥湊駅前にあり、70年余の歴史を持つ市場。ズラリと並んだ鮮魚や乾物を前に、季節のおすすめを聞きながら買い物ができる。朝なら購入したおかずで朝食も楽しめる。
■3時~14時頃(鮮魚刺身の販売は~11時頃、食堂は6時~10時頃)/日曜休、第2土曜休、1月1日・2日休/TEL0178-33-6151
※掲載時のデータです。
つがる市街には至るところに「しゃこちゃん」がいる
縄文旅なら「しゃこちゃん」の愛称で親しまれる遮光器土偶の故郷も訪ねておきたい。つがる市街には至るところに「しゃこちゃん」がいる。最寄りの木造(きづくり)駅はなんと駅舎が遮光器土偶の形をしており、街を挙げてのアイドルであることがわかる。
「つがる市縄文住居展示資料館カルコ」では、亀ヶ岡石器時代遺跡の遮光器土偶(複製)や土器、石器、漆製品などの出土品が展示されている。「造形の美しさから江戸時代には“奥州・津軽の亀ヶ岡”という骨董ブランドが確立されていました」と話すのは学芸員の小林和樹さん。好事家がこぞって買い求めることで、その知名度は広がっていったという。現在、世界遺産登録を契機に史跡整備が進められている。今後の調査によっては第2の「しゃこちゃん」や新たな発見があるかもしれないと思うと、期待が膨らむ。
たくさんの土器や土偶を見て、彼らの心の豊かさに触れた旅。自然の恵みに感謝と祈りを捧げる暮らしを知ると、縄文時代がずっと身近に感じられた。
つがる市縄文住居展示資料館カルコ
亀ヶ岡石器時代遺跡の土器や石器、漆器、ヒスイなどの玉類のほか、同じく世界遺産に登録された田小屋野貝塚から出土した女性の人骨などを展示。亀ヶ岡の遺物が骨董として菅江真澄や滝沢馬琴などの江戸の文人に愛された歴史も紹介する。
■9時~16時/月曜休、祝日の翌日休、年末年始休/200円/TEL0173-42-6490
※掲載時のデータです。
つがる市縄文住居展示資料館カルコ周辺の見どころとグルメ
神武食堂
JR木造駅前にあり、2024年に創業100年を迎える老舗食堂。
担々麺は、県産の鶏がらスープに十和田のガーリック豚のひき肉など
青森の旨みたっぷり。丼ものや定食、洋食メニューまでそろう。
■11時~19時/火曜休/担々麺900円/TEL0173-42-3421
※掲載時のデータです。
たいま菓子店
地元・木造高校との協力で生まれた遮光器土偶モチーフの菓子が人気。バタークリームとスポンジをチョコレートコーティングした「しゃこちゃんケーキ」は飽きのこない優しい味わい。土の質感を再現した「しゃこちゃんサブレ」や甘さ控えめの「土偶最中」もぜひ。
■8時~19時/無休/℡0173-42-2232
※掲載時のデータです。
青森の縄文遺跡群
<交通>
東京駅から東北新幹線2時間50分で八戸駅、3時間で新青森駅。つがる市へは新青森駅からJR奥羽線・五能線で約1時間20分木造駅下車
<問い合わせ>
青森県観光企画課まるごとあおもり情報発信グループ/TEL017-734-9389
(出典:旅行読売2023年10月号)
(Web掲載:2023年9月12日)