【鉄印帳の旅】南阿蘇鉄道
2016年の熊本地震で甚大な被害を受け、23年7月15日に全線での運転再開をした南阿蘇鉄道。かつて高千穂線と繋がる予定だったが、1928年に宮地線(後に国鉄高森線を経て南阿蘇鉄道に転換)として開業した立野〜高森駅間17.7キロを走る。
全線復旧を機に乗り入れ始めたJR豊肥線肥後大津駅を出た列車は、阿蘇山に向けて徐々に高度を上げて行く。外輪山の切れ目にある立野駅から高森線へ入り、架け替えられた第一白川橋梁からは深く切り立つ谷を望む。戸下トンネルを抜けると車窓は一変し、阿蘇五岳などを見ながら南郷谷(なんごうだに)と呼ばれる火口原を進む。
高森駅から徒歩で町を巡る。親水公園として整備されている高森湧水トンネル公園では幻想的な水の演出を観賞。この地で古くから創業する蔵元で「れいざん」を嗜(たしな)み、阿蘇マルキチ醤油(しょうゆ)で醤油を購入したのち、かつて駅前食堂と名乗っていたお食事処忠(なり)で地元名産のあか牛を使った阿蘇あか牛ハヤシライス(1050円)を味わった。
高森駅売店で全線運転再開にあわせ発売された金箔が施された特別印をもらう。オリジナル版は全線復旧祈願から全線運転再開記念へと文字が変更されている。「40社中残すは“南鉄”だけという話しもSNSで目にします。新たに生まれ変わった鉄橋を渡って、ぜひ高森駅にお越し下さい」と運転手もする総務課の宍戸優介さんは話してくれた。
阿蘇は温泉も楽しみの一つ。帰りは高森駅からバスで阿蘇白水(はくすい)温泉 瑠璃(るり)へ立ち寄り、ひと風呂浴びて立野駅へと戻った。
翌朝は、第一白川橋梁を望む新阿蘇大橋展望所ヨ・ミュールへ。鉄橋を渡り行く新型車両のMT-4000形がひときわ輝いて見えた。
文・写真/越信行
南阿蘇鉄道
鉄印の記帳は高森駅窓口にて。9時~17時、鉄印帳2200円、鉄印の記帳料300円~(乗車券と鉄印帳の提示が必要。鉄印のみの販売はしていません)
TEL:0967-62-0058
(出典:「旅行読売」2023年10月号)
(Web掲載:2023年9月30日)