【旅する喫茶店】茶房 旧茶屋亭(函館)
貿易関係の外国人が集ったサロンを再現したという店内
明治の建物に抹茶の芳香が満ちる
函館市電の十字街停留場から北へ歩いて3分。そのまま行けば金森(かねもり)赤レンガ倉庫はすぐという辺りに、板張り2階建ての茶房旧茶屋亭がある。建物は、明治末期に海産商の店舗兼居宅として建てられたものだ。
日本茶と和菓子の茶房と聞いていたので少しの緊張感とともに店に入ったが、店主・半田大士(ひろし)さんの物腰柔らかな接客に肩の力が抜けた。
大士さんの母がこの店を開いたのは1992年。大士さんはレストラン勤務などを経て店を手伝うようになり、2010年から店主に。「若い人にも日本茶の良さをもっと知ってもらいたい」という母の願いを受け継ぎ、「見よう見まねで覚えた」と言うが、手際よいお点前(てまえ)で抹茶を点(た)てる。器から芳香が漂い、「セットの菓子も私の手作りです」と聞いて感心していると、「時間さえあれば難しいことではないですよ」と笑う。
店内には母が輸入したというアンティーク調のイスやテーブルが並び、和洋折衷のハイカラな雰囲気だ。それぞれに個性的な家具をそろえながらも調和がとれているのは、センスの良さと言うべきか。器も色とりどりで、好みで選べる。建物、家具、器、抹茶、そして大士さんの心のこもった接客が有機的に絡み合って旧茶屋亭は成立している。「函館の良さを知ってもらうことが一番の願い」と大士さん。眼鏡の奥のまなざしから、誠実さが伝わってきた。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
住所:北海道函館市末広町14-29
営業:11時30分~L.O.17時/火・木曜休
交通:函館駅前から函館市電5分、十字街停留場下車徒歩3分
TEL:0138-22-4418
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年9月号)
(Web掲載:2023年10月17日)