【羽田が面白い】多摩川を渡り穴守稲荷神社へ 歩いて知る 新旧の羽田(2)
羽田平和の大鳥居は1999年に移設され、みんなの羽田ボランティア推進の会が維持管理している
江戸、明治を経て大正期から航空の町となった羽田
【羽田が面白い】多摩川を渡り穴守稲荷神社へ 歩いて知る 新旧の羽田(1)から続く
歩行者用の階段を下り、多摩川の北岸に立ったら、赤レンガ調の護岸が続くソラムナード羽田緑地(遊歩道)を川上へ向かって歩く。日航機遭難者慰霊碑、羽田平和の大鳥居を経て、穴守稲荷神社に詣でる。羽田の歴史を語る上では不可欠な古社。江戸の文化年間に鈴木弥五右衛門らによって開墾された鈴木新田に建てられた鈴納稲荷の祠は、後に穴守稲荷神社となり、現在の羽田空港B滑走路近くに鎮座していた。
「明治期には電車が開通し、鉱泉が湧いたことで、門前町は飲食店や旅館、遊郭などが集まる一大観光地になりました。境内には奉納された鳥居が4万6797基もあったそうです」とは権禰宜(ごんねぎ)の椿 拓磨さん。
その数の多さからも当時のにぎわいが想像できる。大正期に日本飛行学校が開校。昭和初期には羽田空港の前身・東京飛行場が開港し、穴守稲荷神社にも航空関係者が安全祈願に訪れるようになった。一の鳥居は1929(昭和4)年に京浜電鉄が奉納したが、終戦時に飛行場が連合国軍に接収された際に穴守稲荷神社が放棄した。神社は現在地に移転し、2020年には奥之院と稲荷山が改修され、立ち並ぶ朱色の鳥居が往時をしのばせる。
参拝後、京急空港線穴守稲荷駅へ。駅前は和菓子店、ラーメン店、薬局、スーパーマーケット、居酒屋などが並ぶ商店街で、下町の懐かしい雰囲気が漂っていた。創業50年以上の「手打うどん さぬきや」の2代目・中村時光さんはこう話す。
「正直、親父の代で閉店も考えましたが、4年前に退職を控えた客室乗務員の方がわざわざ来店されて、『この味だ』と喜ばれていました。皆さんに愛されてきた店を閉められないと、後を継ぐ決心をしたんです」
「丁寧な仕事を地道に続けているだけ」と中村さんは謙遜するが、それこそが大切なこと。商店街に漂うどこか懐かしい雰囲気は、人々のそんな謙虚な気持ちが醸しているのかもしれないと思えた。
文・写真/内田 晃
穴守稲荷駅前商店街のお店
手打うどん さぬきや
2種の国産小麦粉をブレンドして使用。うどん生地を一晩熟成してから仕上げるので、適度にコシがあり、喉越しも良い。イリコ、昆布のだしが利いたスープとの相性も申し分ない。おすすめは半熟肉玉うどん840円(写真)。
■11時〜14 時、17時〜21時/日曜・祝日休/京急空港線穴守稲荷駅からすぐ/TEL070-4315-4382
※掲載時のデータです。

はねだぷりん Book Cafe 羽月(うづき)
前身は新刊書店。2009年頃に喫茶スペースを設けた際、看板商品として手作りの「はねだぷりん」を開発した。現在はブックカフェになっている。プリンには厳選した卵と乳製品を使い、濃厚でクリーミーな味わい。大地370円、大空340円、幸福ミルク330円の定番3種に、季節限定品などが加わる。テイクアウトのほか、店内でも味わえる。
■10時30分〜20時10分(日曜・祝日は〜20時30分)/月曜(祝日の場合は翌日)休/京急空港線穴守稲荷駅からすぐ/TEL:03-3741-1817
※掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2023年12月号)
(Web掲載:2023年12月7日)