メソポタミア中〜南部よりも古い文明発祥の地・ギョベクリ・テペ遺跡へ-トルコ紀行(2)
世界遺産ギョベクリ・テペ遺跡
紀元前1万年という世界最古の宗教遺跡へ
ネムルート山の頂に並ぶ巨大な首像の不思議 -トルコ紀行(1)より続く
ネムルート山に続くトルコの旅第2弾は、北メソポタミアに位置する世界最古の宗教遺跡で、かつ古代文明発祥の地とみなされるようになったギョベクリ・テペ遺跡(世界文化遺産)である。
拠点となるのは、預言者・アブラハムの生誕地として知られるシャンルウルファだが、ネムルート山を訪ねた後となれば、そこからバスで訪れるのが便利だ。所要3時間30分余りと少々長旅にはなるものの、オリーブやピスタチオの木々が点在するアナトリア高原の車窓風景が楽しめるから飽きることはない。
この遺跡、前述したように世界最古の宗教遺跡であるとともに、古代文明発祥の地といわれる。その由縁は、T字型の大きな石柱を別のところで造り、それを当地に運び込んで祭祀の場としたところにある。このような巨大な石柱群を造り上げて運び込むには、相当高度な技術と組織的な社会が成り立っている必要がある。それこそが文明というわけである。
驚くべきは、その年代。何と、紀元前1万年あるいはそれよりも古い可能性もあるというから、メソポタミア中〜南部で発達してきた古代文明より数千年も古いことになりそうなのだ。
「それって、すごいことじゃぁない?!」と、その事実を突きつけられれば、誰もが、そんな感嘆の声をあげても不思議ではないのだ。
さらには、「農耕が先で、その後に信仰が始まった」という従来の定説までくつがえされることにも。最古と見なされることもあるライ麦の栽培ですら、紀元前9000年頃から始まったということから鑑みれば、その千年あるいはもっと早くから信仰のための祭祀の場が設けられていたことになるからだ。ここは、これまでの歴史の定説を大きくくつがえす、とても重要なところという訳である。
見学は、遺跡内に設けられた木道を辿って行く。周囲は石ころが数限りなく転がっているようにも見えるが、いずれも、発掘を待ちわびる宝の山であるに違いない。ともあれ、モダンな形状の大屋根を目指すこと数分。大屋根の下に辿り着くや、誰もが目を丸くすることになる。人に見立てて造られたというT字型の大きな石柱が林立。6か所もの丸い穴(それぞれが祭祀場だとか)に、各々数個置かれるという人工構造物が目に飛び込んでくるからである。世界最古ともいうべき文明発祥の地に、今まさに自分自身が身を置いている、それだけで、感無量となってしまうのだ。
願いを込めて布切れを木々に巻きつける習慣とは?
ちなみにここで目にしたものの中で、もう一つ気になるものがあったので、記しておきたい。遺跡内に生える木に、布切れがいくつか巻かれていたからである。願いを込めた布切れを何かにくくりつけるという風習は、トルコでも古くからの習慣だとか。思い起こせば、それは日本人が、神社でひいたおみくじを木々にくくりつけるのと似たような光景である。もともと中央アジアからやってきたというトルコ人。同じくモンゴロイドだった日本人とは、祖先が同じだと見られることもある。そのせいかどうか定かではないものの、両民族のつながりについて考えさせられてしまったのだ。
文・写真/藤井勝彦
協力/トルコ共和国大使館 文化観光局、ターキッシュエアラインズ
<旅のインフォメーション>
■交通/成田からイスタンブールまでターキッシュエアラインズの直行便で約13時間45分、イスタンブールからシャンルウルファまで同航空の直行便で約1時間50分、シャンルウルファからギョベクリ・テペ遺跡までバスで約30分。マラティヤからだとバスで約3時間30分
■時差/日本より6時間遅れ
■ビザ/観光目的の場合、90日以内の滞在であればビザは不要。ただし、入国時にパスポートの残存有効期限が150日以上残っていることが必要
■通貨/トルコリラ(₺)1トルコリラ=5.2円(2023年11月15日現在)
■気候/シャンルウルファの年間平均気温は夏季約30度、冬季約10度
■問い合わせ/トルコ共和国大使館・文化広報参事官室(トルコ政府観光局)TEL:03-3470-6380
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(Web掲載:2024年1月5日)