ネムルート山の頂に並ぶ巨大な首像の不思議-トルコ紀行(1)
燃えるような夕陽に照らされた神像群の絶景
「ひゃあ〜、すごい風や!」
ミニバスを降りるやいなや、猛烈に吹き荒む風にあおられ、思わずこうつぶやいてしまった。
ここは、トルコ東部にそびえるネムルート山(ネムルート・ダウ、世界文化遺産)。アナトリア地方きっての聖地である。標高2134メートル、その頂近くにたどり着いた時のこと。バスから降り立った途端、北風にあおられ、よろけてしまったのだ。
木一本すら生えない荒涼とした岩山、その山頂部分が、紀元前1世紀のコンマゲネ王国に君臨したアンティオコス一世の巨大墳墓だという。その墓を目指して、石ころだらけの急坂をたどって行こうとしているのだ。
少々息が切れるものの、心ははやるばかり。巨大な首像が立ち並ぶという大絶景を目の当たりにできるとあって、待ちきれない思いで駆け上がっていったのだ。
10数分歩いたところで、首が転がり落ちた巨大な石像群が見えてきた。アポロンやゼウス、ヘラクレスといったギリシャ神話に登場する神々の石像が立ち並ぶ東のテラスである。
背後の小山が、小石を積み上げて築かれた王の墳墓だという。
その奇妙な光景もさることながら、反対側に回り込んだところにある西のテラスが、今回の目当てだ。赤々と夕日に照らされた神像群の絶景。それを、何としてもこの目で確かめておきたかったのだ。
すでに日が傾いて久しい。となれば、ますます気が焦る。それでも、歩くこと数分で、ようやく燃え盛るかのような夕日が墳墓全体を照らす光景を目にすることができたのだ。まさに、期待を上回る神々しい景色であった。
それから半刻余り、赤から紫色へと刻々と変化する絶景を満喫するとともに、そこからかもし出される厳粛な雰囲気に飲み込まれ、思わず涙までこぼれてしまう始末。我に返って辺りを見回せば、いつの間にか、大勢の人たちが集っていた。この絶景を目にしようと、世界中から観光客が詰め掛けてくる。それほどまでに、魅力あふれるところなのである。
ちなみに、ネムルート山の拠点となるマラティヤへ行くには、成田空港など(羽田や関西空港からの便など、合わせて週18便もある)からターキッシュエアラインズを利用してイスタンブールへと向かうのが便利だ。イスタンブール国際空港は近年拡充が進められてさらに拡大を続け、いずれは世界最大の国際空港になる予定なのだという。ここでマラティヤ行きの飛行機に乗り換えて、所要1時間45分。そこからネムルート山まで約135キロ、バスで3時間余りの道のりである。
アナトリア初の都市遺跡・アスラン・テペへ
また、ツアーバスによっては、マラティヤ近くにあるアスラン・テペ遺跡(世界文化遺産)に立ち寄ることもある。こちらは、紀元前5000年頃というアナトリア最初の都市国家で、世界最古の王家の墓などが見学できるのが魅力。まだまだ発掘されたのはごく一部で、発掘の成果次第では、歴史が覆されることも十分ありそうだから、これからも目が離せないところなのだ。
文/藤井勝彦、写真/藤井勝彦ほか
協力/トルコ共和国大使館 文化観光局、ターキッシュエアラインズ
<旅のインフォメーション>
■交通/成田からイスタンブールまでターキッシュエアラインズの直行便で約13時間45分、イスタンブールからマラティヤまで同航空の直行便で約1時間45分、マラティヤからネムルート山までバスで約3時間(途中ミニバスに乗り換える)、下車後、ネムルート山頂間際の東のテラスまで徒歩10数分。西のテラスまでさらに数分(ただし、ネムルート山は冬季閉鎖)。マラティヤからアスラン・テペ遺跡へはバスで約30分
■時差/日本より6時間遅れ
■ビザ/観光目的の場合、90日以内の滞在であればビザは不要。ただし、入国時にパスポートの残存有効期限が150日以上残っていることが必要
■通貨/トルコリラ(₺)1トルコリラ=5.2円(2023年11月15日現在)
■気候/マラティヤの年間平均気温は夏季約27度、冬季約0度
■問い合わせ/トルコ共和国大使館・文化広報参事官室(トルコ政府観光局)TEL:03-3470-6380
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■ 成田・羽田空港からマラティヤまでの航空券はこちらよりご予約いただけます。
■ 関西空港からマラティヤまでの航空券はこちらよりご予約いただけます。
(Web掲載:2024年1月5日)