【昭和のドライブイン&レトロ自販機】郷愁を求め群馬のレトロドライブイン地帯を走る ドライブイン七輿ほか
1984年に食堂がオープンした際、「ドライブイン七輿(ななこし)」の看板を掲げた
ドライブイン七輿のうどん自販機
モータリゼーションで生まれたドライブインやオートスナックは、昭和世代には懐かしい。20歳前後のZ世代にはアナログ感が「エモい」と話題のようだ。郷愁を求めて、ドライブインが比較的多く残る群馬県でレトロな店舗を巡った。
上信越道藤岡ICを降りてクルマを走らせ、ドライブイン七輿へ向かった。平日の午前9時台でもすでに数台の「先客」がいる。木村清さんとふじ子さん夫妻が営む店は1975年、自販機だけを設置した、いわゆる「オートスナック」として開店。後に、食堂やゲームコーナーも増築したが、食堂は閉めてしまった。
店内には、4人掛けのテーブルが4卓と、16台の食品自動販売機が向かい合わせに並ぶ。レトロ自販機は麺類2台とトーストサンド、ハンバーガーが各1台の計4台だ。
味にも思い入れがある。麺類とパンは別の納入業者で、特に麺類は、「細いと乾きやすい」(清さん)ので太めの麺を仕入れている。チャーシュー麺を選んでコインを入れると20秒ほどで出てきた。チャーシューは清さんが自販機用に試行錯誤を重ねて、豚の肩ロース肉で作った。厚みがあり、肉のうまみを感じる。「食堂で出していた時よりいい出来」と清さんが言うのも納得だ。ふじ子さんが揚げるエビ天をトッピングしたうどんも賞味。カツオだしの利いたスープと太麺がよく合う。
峠に向かう街道で茂木ドライブインのこんにゃくを
上信越道を下仁田(しもにた)ICで降りて国道254号を西へ約20分走ると、年季の入った外観が特徴の茂木(もてぎ)ドライブインに到着した。開業は1984年。群馬と長野をつなぐ内山隧道(ずいどう)の完成で国道254号がにぎわい始めた頃だ。夫婦で始めた店は、今は妻の茂木しづ江さんが一人で切り盛りする。「昔から贔屓(ひいき)にしてくれるドライバーさんもいるし、おいしいこんにゃくを食べてもらいたい」としづ江さんは今日も厨房(ちゅうぼう)に立つ。
200円でこんにゃく食べ放題がこの店のウリだ。開業時に譲り受けた1937年製の攪拌(かくはん)機を使い、しづ江さんが手作りしているこんにゃくは、刺し身でも食べられる。自家製の麦麹(こうじ)みそを付けてひと口。こんにゃくは軟らかいが弾力もあり、甘じょっぱいたれが絡んでおいしい。また、「麦麹みそとしょうゆであっさりした味付けにしているけど臭みはないの」と、しづ江さんおすすめのもつ煮定食も人気だ。
太田市のオレンジハット沖之郷店の夕暮れ
高速道路を乗り継ぎ、栃木県に接する太田市のオレンジハット沖之郷店を目指す。オレンジハットは自販機メーカーの富士電機が日野自動車との合弁会社を前橋市に設立、群馬県を中心に事業展開していたチェーン店で、自販機とゲーム機を置いたドライブインだ。現在残る2店舗はそれぞれ個人経営に変わった。
沖之郷店にあるレトロ自販機は麺類2台に、トーストサンド、ハンバーガー各1台で、ハンバーガーは3種ある。物珍しさからタルタルミートバーガーを選択。1分ほどで熱々の箱が出てきた。パテは厚く、ベーコンも入っている。想像していたよりもおいしい。チャーシュー麺も購入。しっかりと味の付いたチャーシューが3枚のっていて、悪くない。市内には沖之郷店と同経営の「ピット・イン77」があり、こちらにも同じレトロ自販機が設置されている。
取材先で「テレビで見て来たいと思っていた」という年配客の声を多く聞いた。ドライブインは昭和世代の青春を呼び戻す装置なのかもしれない。
文/田辺英彦 写真/青谷 慶
【モデルコース】
上信越道藤岡IC
↓ 🚘県道174号など4キロ
ドライブイン七輿
↓ 🚘国道254号など5キロ
吉井IC
↓ 🚘上信越道16キロ
下仁田IC
↓ 🚘国道254号15キロ
茂木ドライブイン
↓ 🚘国道254号15キロ
下仁田IC
↓ 🚘上信越道、関越道、北関東道63キロ
太田桐生IC
↓ 🚘国道50号など7キロ
オレンジハット沖之郷店
ドライブイン七輿
営業:24時間/不定休(ゲームコーナーは6時〜22時30分)
住所:群馬県藤岡市上落合862
交通:信越道藤岡ICから県道174号経由4キロ
問い合わせ:TEL/0274-23-0951
茂木ドライブイン
営業:10時〜16時30分/木曜休
住所:群馬県下仁田町南野牧6901
交通:上信越道下仁田ICから国道254号経由15キロ
問い合わせ:TEL/0274-84-2838
オレンジハット沖之郷店
営業:24時間/無休
住所:群馬県太田市沖之郷町448-4
交通:北関東道太田桐生ICから国道50号経由7キロ
問い合わせ:TEL/0276-46-8050
※料金等すべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年1月号)
(Web掲載:2024年1月19日)