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【世界の絶景遺産】アジア三大仏教遺跡の一つ ボロブドゥール(インドネシア)

場所
> ジャワ島
【世界の絶景遺産】アジア三大仏教遺跡の一つ ボロブドゥール(インドネシア)

ブロック状の切り石を多数積み上げている

 

仏教を表した巨大な“立体曼荼羅”に上る

「アジア三大仏教遺跡」という言葉がある。アンコール(カンボジア)と、バガン(ミャンマー)、そしてこのボロブドゥールである。アンコールワットは世界最大の伽藍(がらん)を持つ仏教寺院として知られているが、ボロブドゥールは世界最大級のストゥーパ(仏塔)を擁する仏教寺院である。

インドネシアのジャワ島にあり、8世紀から9世紀にかけて、このあたりを支配していたシャイレーンドラ朝によって建設された。この王朝は大乗仏教を保護し、ジャワ島に数多くの仏教寺院を建立している。ボロブドゥールもその一つである。

ボロブドゥールの特徴は、階段ピラミッド状の構造である。天然の丘に盛り土し、その上に安山岩などの岩を9層(基壇・方形壇5・円壇3)に積み重ねている。現在の高さは33.5メートルで、元々は42メートルもあったという。エジプトなら中規模のピラミッド級の規模だ。

各基壇の回廊の表面にはブッダの生涯や仏教の説話に基づいた彫刻(レリーフ)がびっしりと描かれ、訪れた者はそれを順番に見ながら、1段ずつ上層に上っていく。すべての彫刻を見て最上階に達したならば、ブッダと仏教をしっかり理解できるという仕組みだ。彫刻は緻密かつ勇壮で、これこそが、ボロブドゥールの最大の見どころである。

上階層には、72基のストゥーパと多くの仏像が並び、厳かな雰囲気が漂う。ボロブドゥールは全体として須弥山(しゅみせん)を模しているとも言われ、巨大な曼荼羅(まんだら)とも評される。いわば“立体曼荼羅”である。自然の丘に石を積み上げて築かれた建造物なので内部空間はない。

回廊に刻まれた緻密なレリーフ
寺院の上部に並ぶストゥーパ

数百年、密林に忘れられていた遺跡の今

ボロブドゥールは、長らく忘れ去られた遺跡だった。8世紀半ばにシャイレーンドラ朝が滅ぶと、ボロブドゥールも放棄され、密林に埋もれていた。イギリス人とオランダ人によって再発見されたのは1814年のこと。近辺には、仏塔以外にも数多くの仏教施設があったと推測されるが、そのほとんどは失われてしまっている。わずかに、東1.8キロのパオン寺院、東3キロのムンドゥッ寺院などが見つかっているくらいだ。ボロブドゥールと合わせたこの3寺院は直線上にあるため、複合的な宗教施設の一部を構成したことが想像されるが、詳細は明らかではない。

ところで、現在のインドネシアはイスラム教徒が多数を占め、仏教徒はきわめて少数だ。そのためか、ここは仏教寺院としてより、観光施設として保存されている状況である。実際に訪れてみると、全体が公園になっていて、遠足で訪れた子どもたちや散歩をしている高齢者の姿が多い。敷地内はよく手入れされていてきれいだが、テーマパークのようでもあり、往時の仏教寺院の姿を想像するのは難しい。

それでも、改めて仰ぎ見ると、巨大ピラミッドのような建造物が、古代のアジアの島に建てられていたことに驚かされる。日本でいえば平安京ができた時代である。当時はどのような賑わいだったのだろうか。

近くには古都ジョグジャカルタや、別の世界遺産であるプランバナン寺院遺跡群もある。ボロブドゥールと合わせて観光すれば、古き良きジャワを味わえるだろう。

文・写真/鎌倉 淳

全景。一辺約120メートルの基壇の上に階段状に建てられている

【旅行データ】

ボロブドゥールの観光拠点は、ジャワ島中部の都市ジョグジャカルタ。日本からインドネシアの首都ジャカルタへは、ANA、JAL、ガルーダ・インドネシア航空が羽田や成田から直行便を運航していて、約8時間。ジャカルタからジョグジャカルタへは、飛行機で約1時間。日本から同日乗り継ぎも可能。列車もあり、ジャカルタのガンビル駅からジョグジャカルタまで6~7時間程度。ジョグジャカルタに泊まると、ボロブドゥールまではバスで1時間ほどなので、日帰りで訪問できる。

(Web掲載:2024年4月4日)

Writer

鎌倉淳 さん

1969年、東京都生まれ。旅行総合研究所タビリス代表。放送局記者を経て、世界の観光エリアや航空・鉄道に関する取材を続けている。著書に「死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡」(洋泉社)など

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