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忘れないために、復活した三陸鉄道に全線乗車(2)【ひとり旅】

場所
忘れないために、復活した三陸鉄道に全線乗車(2)【ひとり旅】

堀内駅と野田玉川駅の間に架かる安家川橋梁では停車して、国道45号と太平洋の開けた景色を堪能できる

 

海と陸からリアス海岸を眺望

忘れないために、復活した三陸鉄道に全線乗車(1)【ひとり旅】から続く

再び三陸鉄道(三鉄)に乗って北上し、宮古に降り立つ。2日目の宿、浄土ヶ浜パークホテルへ向かった。震災時は被災者の避難所として活用され、5年後にリニューアルオープン。今は沿岸観光の拠点だ。

朝、遊覧船「宮古うみねこ丸」に乗船した。浄土ヶ浜遊覧船は一度廃止されたが、宮古市が新しく造船して一昨年復活した。船上からしか見られない浄土ヶ浜や三陸ジオパークの景観を、ガイドの説明を聞きながら巡った。津波は様々なものを壊したが、悠久の造形物は変わらない。

宮古うみねこ丸

3日目に乗った茶色の列車は、内装も照明もレトロ調。20年開業の新しい新田老(たろう)駅を過ぎる。震災遺構の旧田老観光ホテルの最寄り駅だ。田野畑(たのはた)駅で下車し、観光乗合タクシーを利用して高さ200メートルの断崖が連なる名所、北山崎へ向かう。第1展望台や363段下った第2展望台からは、リアス海岸のそそり立つ奇岩や大小の海蝕(かいしょく)洞窟が間近に見え、ダイナミックな景観に見入った。

食事に立ち寄った白花(しろばな)しゃくなげ荘(1泊2食8800円〜。TEL:0194-33-2085)の主人、泡淵(あわぶち)正さんが、「この辺りは地盤が強固なので、大地震でも棚から物が落ちることもなかった」と話すのを聞いて、そんなにも違うものかと驚いた。

ダイナミックな景観が8キロにわたって続く北山崎。小型の磯舟でクルージング体験もできる(写真/ピクスタ)
白花しゃくなげ荘の磯ラーメン1000円。海藻類など磯の風味が利いたあっさり塩味

田野畑駅から久慈駅へ向かう途中、「あまちゃん」の舞台にもなった堀内(ほりない)駅(劇中は袖が浜駅)を挟んで、列車は徐行運転や停車をする。眼下の漁港や海の景観は何も変わっていないように見える。しかし、ここにも人々の粘り強い歩みがあり、ドラマに描かれない喪失と再生の物語があるのだろうと思うと、胸に迫るものがあった。

海の眺望がいい堀内駅はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のロケで使われ、「袖が浜」の駅標も立つ(写真/ピクスタ)

ほどなく終点の久慈駅に到着した。自身も被災者である三陸鉄道広報の三河和貴子さんは、「震災で変わってしまったものはたくさんありますが、『三鉄』が復旧したことで、元の生活に戻れるという希望、安心感を持てるきっかけになったと思います」と当時を思い起こして語ってくれた。くじけずに前を向けば、時間はかかってもいつか日常を取り戻せるはずだ。三鉄は今日も、そしてこれからも地元の住民や旅人たちを乗せて走り続ける。

久慈駅などで開業40周年の記念切符を販売する(写真/ピクスタ)
放送10周年の昨年に再放送もあり、久慈駅の「あまちゃん」コーナーは今も人気

文/田辺英彦 写真/三浦建太郎ほか

 

🔳モデルコース

【1日目】
東京駅  10:45発
 ↓ 東北新幹線
一ノ関駅 12:38着/12:46発
 ↓ 大船渡線
気仙沼駅 14:10着/14:21発
 ↓ 大船渡線BRT
盛駅   15:38着/16:49発
 ↓ 三陸鉄道
釜石駅  17:36着<泊>

【2日目】
釜石駅前  9:30発
 ↓ 東前行きバス
市営ビル前9:36着
 ↓ 徒歩3分
魚河岸テラス
 ↓ 徒歩5分
市役所前 11:54発
 ↓ 上大畑行きバス
釜石駅  12:00着/12:18発
 ↓ 三陸鉄道
織笠駅  13:01着/14:52発
 ↓ 三陸鉄道
宮古駅  15:32着<泊>

【3日目】
浄土ヶ浜・宮古うみねこ丸
 ↓ 周遊30分
出崎ふ頭(シートピアなあど) 10:12発
 ↓ 宮古駅前行きバス
宮古駅  10:26着/10:40発
 ↓ 三陸鉄道
田野畑駅 11:24着/11:35発
 ↓ ※観光乗合タクシー
北山崎  11:55着/14:15発
 ↓ ※観光乗合タクシー
田野畑駅 14:35着/14:41発
 ↓ 三陸鉄道
久慈駅  15:31着/16:40発
 ↓ バス(スワロー号)
二戸駅  17:50着

◎土曜・休日用ダイヤです。
※田野畑観光乗合タクシー/片道800円(田野畑駅―北山崎)/問い合わせTEL0194-33-2121(要予約)

 

ひとり泊歓迎の宿

浄土ヶ浜パークホテル(浄土ヶ浜)

浄土ヶ浜を望む三陸復興国立公園内の高台に立つ。客室はひとり泊でも海側か松林側を選べる。食事は三陸の山海の食材を生かした和洋ビュッフェ。大浴場は開放的な露天風呂付き。
【ひとり泊データ】
通年可/1泊2食1万8810円〜/トイレ付き10畳和室、トイレ付き36.4平方メートルツインなど/宮古駅から送迎15分※要予約(宮古市日立浜町32-4)/TEL::0193-62-2324

 

迫力満点な景観の遊覧船

  

宮古うみねこ丸

浄土ヶ浜ビジターセンターの近くの桟橋と出崎ふ頭から乗船でき、浄土ヶ浜〜出崎ふ頭まで湾内を遊覧して所要30分。1階席と2階席があり、定員は80人。広い展望デッキから見る景観は迫力満点。ウミネコに餌付け体験もできる(うみねこパン200円)。
■出崎ふ頭9時〜14時10分、浄土ヶ浜9時30分〜14時30分出航(4月29日以降は出崎ふ頭〜16時10分、浄土ヶ浜〜16時30分出航)/火曜休(7・8月は無休)/1500円/宮古駅からバス20分、浄土ヶ浜ビジターセンター下車徒歩5分/TEL:0193-65-8856

 

夏の見どころ

北限の海女・素潜り実演

久慈の海女は「北限の海女」と呼ばれ、市の無形文化財に指定されている。「あまちゃん」をきっかけに注目度もアップ。夏だけの素潜り実演を見に行こう。
営業:7〜8月の土・日曜、祝日と9月の日曜11時〜/有料
住所:久慈市小袖漁港 
交通:久慈駅から市民バス30分、小袖海岸下車
問い合わせ:小袖海女センターTEL0194-54-2261


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年5月号)
(Web掲載:2024年5月25日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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