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私のフリーきっぷの旅 西日本編 蜂谷あす美(旅の文筆家)

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私のフリーきっぷの旅 西日本編 蜂谷あす美(旅の文筆家)

車窓いっぱいに広がる若狭湾が小浜線の魅力


鉄道旅に詳しい蜂谷あす美さんに、おすすめのフリーきっぷの旅を教えてもらいました。テーマは「新幹線のその先へ、お得なきっぷの旅」です。

 

小浜線tabiwaパスで、敦賀駅から小浜線へ

2024年3月の北陸新幹線敦賀開業により、北陸エリアへの旅行を検討している方も多いはず。福井県出身の私が特に注目しているのは、新幹線終着駅である敦賀(つるが)駅から若狭方面に向かって延びるローカル線の小浜(おばま)線、そして同線が2日間乗り放題になる小浜線tabiwa(タビワ)パスだ。tabiwaはJR西日本が北陸、瀬戸内、山陰で展開するフリータイプのデジタルチケットで、一部には観光施設の入場券やサービス特典などのクーポンが付き、使いこなすことでお得度がぐっと増す。このうち小浜線版は、1日でも十分元が取れる料金設定なので、今回は日帰り旅の想定で出かけてみたい。

まずは敦賀駅から小浜線に乗車。時刻表の索引地図では海沿いを走る路線のように見えるが、発車後しばらくは山間の景色が続く。そのうち水田の向こうに映し出される水の景色は三方五湖(みかたごこ)。およそ1時間で中間地点の小浜駅に到着する。ちなみに首都圏から一番早く到着する北陸新幹線「かがやき」(東京6時16分発、敦賀9時34分着)に接続する小浜線は、本来は小浜駅が終点のところ、土曜・休日は東舞鶴駅まで延長運転を行っている。

小浜駅を発車し、トンネルを抜けると、列車の間近まで若狭湾が迫ってくる。多様な車窓を映す小浜線のなかでもひときわ、魅惑的な時間だ。

小浜線は若狭本郷駅で下車し、電動アシスト付きのレンタサイクルに乗り換え、3.4キロの道のりを進んでいく。やがて水田のなかにぽっかり大きなお屋敷が現れる。これは当地出身の作家、水上勉(みずかみつとむ)氏が私財を投じて設けた総合文学館「若州一滴(じゃくしゅういってき)文庫」。氏の作品に関する展示などが見学できる。

若狭本郷駅から自転車で観光へ。小浜線沿線はレンタサイクルを提供している駅も多い

続いて、若狭湾に面した「道の駅うみんぴあ大飯(おおい)」へ。フードコーナーでは海鮮丼とともに隣の産直で購入した刺し身などもいただける。

そろそろ甘味が恋しくなる時間帯。小浜線で小浜駅に戻り、駅前をまっすぐ900メートル歩けば和菓子店「伊勢屋」に到着。お目当ては季節限定の「くずまんじゅう」だ。地下水で冷やされた素朴なまんじゅうは、つるつるしたのど越しが特徴で3個、4個とお代わりせざるを得ない。北陸旅で1日時間があるなら、足を延ばして若狭の文化とグルメに触れる旅を楽しもう。

「くずまんじゅう」は小浜の夏の風物詩

岡山・倉敷tabiwaぐるりんパスで、岡山駅から瀬戸内エリアへ

同様に、新幹線から始まるお得きっぷ旅として目を付けているのは、岡山・倉敷tabiwaぐるりんパスを使った、山陽新幹線の岡山駅発の旅。岡山駅~倉敷駅の瀬戸内エリアが3日間乗り放題になるきっぷで、フリーエリアにはJR線以外も含まれる。今回は2日旅の想定で出かけてみよう。

まずは岡山駅から瀬戸大橋線で児島駅へ。児島は国産ジーンズ発祥の地であり、駅近くのジーンズストリートには、さまざまなショップが軒を連ねる。ジーンズ好きの私は、年に1回ペースで買い付けに訪れている。ただし重くかさばるのがデニム生地の悲しき運命(さだめ)。手軽なお土産としては、デニム生地のブックカバーやポーチなどの小物類がおすすめだ。

国産ジーンズを扱う個性豊かな店舗が並ぶ児島のジーンズストリート

児島からは瀬戸大橋のたもとに位置する港町、下津井(しもつい)を下津井循環バス「とこはい号」で目指す。これもきっぷの範囲内。まっすぐ行くのもよいけれど、余裕があるならレトロ遊園地「鷲羽山(わしゅうざん)ハイランド」に寄り道を。地上15メートルを自転車型ライドで進む「スカイサイクル」が有名で、風に吹かれながら瀬戸大橋を見下ろす唯一無二の絶景体験がかなう。

瀬戸内海を眺める鷲羽山ハイランドの「スカイサイクル」

景色を味わいつつ向かった下津井は、北前船の寄港地として栄えた地。商家やニシン蔵などの古い町並みが保存されていて街歩きが楽しい。名物のタコ料理が堪能できる宿に泊まりたい。

2日目は、児島に戻り、きっぷを駆使して下電バスで倉敷へ向かう。必修スポットといえば、倉敷川沿いに白壁の町並みが続く美観地区。同地区の見どころであり、近現代美術中心のコレクションを誇る大原美術館など倉敷エリアでは9施設、きっぷで入館可能。かゆいところに手が届く。最後は山陽線で岡山駅に戻り、山陽新幹線で帰路につく。同駅にはすべての列車が停車するので、好きな種別を選ぼう。

倉敷の美観地区では散策だけでなく倉敷川の舟流しも楽しめる

文・写真/蜂谷あす美


 

  

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年7月号)
(Web掲載:2024年8月4日)


Writer

蜂谷あす美 さん

福井県出身。高校時代の汽車通学時、鉄道の魅力に取りつかれ、鉄道雑誌をこっそり愛読し趣味を育むようになる。慶應義塾大学卒業後、出版社勤務を経て、旅の文筆家。2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅を中心としたエッセイ、紀行文などを数多く執筆。 著書『女性のための鉄道旅行入門』(天夢人)ほか。『鉄道ジャーナル』で「わたしの読書日記」、「福井新聞」で「乗り鉄・蜂谷のいつもリュックに時刻表」など連載多数。最近はラジオやトークイベントでも活躍。

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