ひんやりとした洞内を歩き、渓谷を眺めながら〝絶景ランチ〞を 日原鍾乳洞【日本の涼景】
日原鍾乳洞のクライマックス「死出の山」。通路は整備されているが歩きやすい靴と服装で
「東京アドベンチャーライン」の愛称を持つ、青梅線、青梅―奥多摩駅間
都心から中央線と青梅線を乗り継ぎ奥多摩へ。青梅線の青梅―奥多摩駅間は「東京アドベンチャーライン」と愛称が付けられ、山並みと多摩川の渓谷美に目を奪われる。
終点の奥多摩駅から曲がりくねった細い道をバスで上ること約30分で日原鍾乳洞に到着。入り口は橋を渡った先にあり、ひんやりとした冷気に驚く。気温は一年を通して11度前後で、夏でも肌寒いほどだ。
頭をぶつけそうな狭い道が続き、ピチャピチャと上から水滴が垂れてくる。気分はさながら探検家だ。途中の水琴窟(すいきんくつ)は平成に作られたもので気品ある音が響く。さらに歩みを進めると、突然視界が開けて目の前に大きな空間が広がる。
「死出(しで)の山」と呼ばれる場所で、自然が作り出した造形にただ驚く。しかもカラフルな照明が常に変化して飽きさせない。探検を終えて外へ出るとメガネが曇るほどの暑さで、涼しい幻を見ていたかのようだ。
奥多摩町の夏の平均気温は、都心と比べて3、4度低い。森も水も豊かだ。せっかくなので町内の新スポットも巡ってみよう。
ランチは「沿線まるごとホテル」Satologue(さとローグ)へ。今年5月に開業したばかりの施設で、レストラン「時帰路(ときろ)」とサウナ「風木水(ふきすい)」が来春の宿泊棟開業に先立ちオープンした。
中に入ると思わず歓声が。窓の向こうに広がる多摩川の渓流は絵画のよう。実はここ、養魚場を営んでいた家をリノベーションしたもので、木の香りが漂う。瀬戸内の高級クルーズ船「ガンツウ」を設計した建築家の堀部安嗣(やすし)さんが手掛けた。
ランチは2部制。希望者には食事前にスタッフが庭を案内し、養魚場を活用した畑やワサビ田などが見られる。畑で収穫していたシェフの高波和基(かずき)さんは「地元の人に教わりながらやっています」と話す。
この日の前菜は発酵バターと生ハムのタルト。畑で摘んだばかりのルッコラの花がのせられていた。メインは希少な東京産牛肉のステーキで、肉のうまみと脂の甘みが魅力。摘みたての春菊が添えられていた。
「沿線まるごとホテル」は、JR東日本と地域創生ベンチャー企業による協業で、スタッフは奥多摩に移住してきた若者が中心。これから爽やかな新しい風が吹きそうだ。
文/星 裕水 写真/齋藤雄輝
Satologue(さとローグ)
レストランのメニューは季節や状況により変わるが、奥多摩町やあきる野市産などの地元食材を積極的に使う。季節のメニュー5品ほどのコースのみで、5500円(ドリンク別)。完全予約制。サウナは朝と午後の部の2部制で予約制。
■レストラン「時帰路」はランチ第1部11時~12時45分、第2部13時30分~15時15分/火・水曜(祝日の場合は翌平日)休/青梅線古里駅から徒歩15分。同鳩ノ巣駅から徒歩20分/TEL0428-85-9310
公式サイトはこちら
えもび鳩ノ巣
青梅線鳩ノ巣駅前のえもび鳩ノ巣では、普通自動車免許で運転できる3人乗りの電動トゥクトゥクをレンタルしている。Satologueはもちろん、日原鍾乳洞へも往復できる。
■10時~17時(最終受付16時、要インターネット予約・決済)/不定休/1時間2000円(1万円を超える場合は一律1万円)/青梅線鳩ノ巣駅からすぐ/TEL050-5536-5655
公式サイトはこちら
営業:9時〜17時(12月〜3月は〜16時30分)/12月30日~1月3日休
料金:900円
交通:青梅線奥多摩駅からバス31分、鍾乳洞下車徒歩9分(平日のみ運行、本数が少ないため注意。土・日曜、祝日は東日原止まり。東日原から徒歩25分)/中央道八王子ICから50キロ
住所:奥多摩町日原1052
問い合わせ:TEL0428-83-8491
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年8月号)
(Web掲載:2024年9月21日)