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標高2000メートル超の天然湖 苔むす原生林に囲まれた白駒池 奥蓼科【日本の涼景】(1)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 長野県
> 茅野市、南佐久郡小海町、佐久穂町
標高2000メートル超の天然湖 苔むす原生林に囲まれた白駒池 奥蓼科【日本の涼景】(1)

澄んだ水をたたえる白駒池。水面の標高は2115メートル、水深は8.6メートルある

 

真夏でも最高気温は25度以下の奥蓼科へ

「真夏でも最高気温はほぼ25度以下。上着は必携です」。宿泊の予約の際、白駒(しらこま)池の畔に立つ白駒荘の主人、辰野廣茂(ひろしげ)さんにそう言われた。北八ヶ岳の原生林に囲まれる白駒池は、標高2000メートル以上にある天然湖としては日本最大だ。山小屋をベースに、自然散策と避暑を兼ねて、奥蓼科(たてしな)へドライブに出かけた。

八ヶ岳の東麓を北上し、八千穂高原と蓼科高原を結ぶ通称「メルヘン街道」(国道299号)のつづら折りを、麦草峠方面へと車を走らせる。峠の手前に駐車場(普通車600円)があり、白駒池へはここに車を停(と)めて徒歩で向かう。車を降りた途端、涼しさを実感した。

駐車場からすぐの分岐を麦草峠方面へ行くと「白駒の奥庭」がある

コメツガやシラビソ、トウヒなどの原生林の中に木道が整備され、白駒池までは10分ほど。白駒池は火山の噴火によって信濃川水系の大石川がせき止められてできた。約1.8キロの遊歩道で一周できる。白駒荘に荷物を預け、散策をスタート。野鳥のさえずりと青々とした水をたたえる湖面を渡る風が心地いい。

木道が整備されていて歩きやすい

湖の周囲の原生林は、地表から木々の根元や幹に至るまで緑の苔(こけ)に覆われている。原生林と苔が作り出す光景は、ファンタジーの世界のようで神秘的だ。苔は茎と葉の有無や形状によって分類され、八ヶ岳の山中には519種もの苔が自生しているという。

白駒池へは貴重な苔の森の中を通って行く。「白駒の森」「もののけの森」などの名称が付いている

湖畔を一周する手前、青苔荘(せいたいそう)の所から池を離れ、高見石の展望台へ。ここも木道が整備され、緩やかな坂を上る。ところが、約40分で高見石小屋に着くと、建物の横から展望台への道がない。積み重なった巨石の山を登るのだ。所どころに赤ペンキで書かれた丸印がルートのようだ。

なんとか岩山を登って頂上にたどり着き、息をのんだ。青空の下、北アルプス、蓼科山、浅間山などの山並みが遠望でき、眼下には原生林に囲まれた白駒池が見える。爽やかな風に吹かれながら、しばし雄大なパノラマに見入った。

高見石展望台へは高見石小屋から岩山を登る
高見石展望台から見た白駒池

山小屋の食事は早い。夕食は17時半、朝食は6時半から食事処で一斉に食べる。白駒荘は料理にも力を入れている。茅野市内の自家菜園で約30種の野菜を栽培しており、鍋物やサラダなどの食材として提供する。「桃太郎ゴールド」という橙黄(とうおう)色の大玉のトマトが夏の名物だ。

19時半からは1日3組限定の「湖上星空ボート体験プラン」(1人3000円)も用意されている。ボートで白駒池に漕ぎ出し、満天の星を仰ぎ見る。天の川を観察し、宇宙の神秘に思いを馳(は)せる貴重な体験だ。

文/田辺英彦 写真/青谷 慶

標高2000メートル超の天然湖 苔むす原生林に囲まれた白駒池 奥蓼科【日本の涼景】(2)へ続く

白駒荘

  
  

1922年創業時の建物と昭和に増築した部分からなる本館と、2018年完成の新館からなる。風呂、水洗トイレ、Wi-Fiを備える。4代目の主人が息子・娘らスタッフと温かく迎えてくれ、リピーターが多い。
■1泊2食本館1万2500円、新館1万5500円/通年/中央線茅野駅からバス1時間10分、白駒の池下車徒歩10分/中央道諏訪ICから32キロ/TEL090-1549-0605
※公式サイトはこちら


奥蓼科
問い合わせ:TEL0266-67-2660(奥蓼科観光協会

白駒池
問い合わせ:TEL0267-92-2525(小海町観光協会
      TEL0267-86-1553(佐久穂町観光協会

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年8月号)
(Web掲載:2024年9月10日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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