【日本の涼景】新潟の〝ぬる湯三湯〞で心身爽快!(1)栃尾又温泉、駒の湯温泉
栃尾又温泉の広々とした「したの湯」。大きな窓に木々の緑が映る
30度台の源泉をかけ流し、夏でも気持ちのよい“ぬる湯”
暑い夏に温泉と聞くと汗をかきそうだが、源泉温度が40度未満の「ぬる湯」は、ほどよい冷たさが感じられ、夏でも気持ちのよい湯浴みが楽しめる。そこで、首都圏から行きやすい、新潟県内で人気の〝ぬる湯三湯〟を訪ねた。いずれも泉温30度台の源泉をかけ流しにしている。
関越道小出(こいで)ICから山林を縫うように東へ延びる国道352号を走る。目指すは福島県境に近い魚沼市の、ぬる湯自慢の宿が点在する湯之谷温泉郷。沿道に田んぼと民家が続き、やがて山あいに3軒の湯宿が佇(たたず)む、栃尾又温泉に着いた。古くから〝子宝の湯〟として知られている名湯だ。
栃尾又温泉には3軒の共有となっている浴室が三つある。栃尾又温泉センターの「うえの湯」「おくの湯」と旅館・自在館の中の「したの湯」だ。いずれも軟らかな単純放射能泉で、36度前後の源泉をかけ流す湯船と、40度前後に加温した上がり湯用の湯船がある。ぬる湯で長湯を楽しみ、最後に上がり湯で体を温めて出る入浴法をすすめている。
早速、自在館に寄って源泉の近くに造られた「したの湯」につかった。一般的な温泉のように熱くもなく、水風呂のように冷たくもない。体温に近い温度のためか、あまりの気持ちよさに、ついまどろみを覚えてしまうほど。長湯することで副交感神経が優位に働き、体の緊張がほぐれ、ストレス解消になるといわれている。
また、「うえの湯」「おくの湯」は寝湯も備えており、寝転がってリラックスできる。浴室の窓には木々の緑が見え、すぐ下を流れる湯の沢のせせらぎが聞こえて清涼感が増す。
自在館には宿泊客専用の貸切風呂が3か所あり、うち一つは露天風呂。「連泊して保養されるお客様が多いですね。5時間も長湯される方もいらっしゃいます」と話す星宗兵(そうへい)さんは、歴史ある自在館の26代当主だ。
秘境、ランプのともる一軒宿 駒の湯温泉へ
栃尾又温泉から山道を車で10分ほど上ると、湯之谷温泉郷の一軒宿、駒の湯温泉・駒の湯山荘が忽然(こつぜん)と現れる。ランプの宿として知られ、秘湯感が漂う。雪深いため、営業期間は5月後半から10月までと短く、現在は立ち寄り入浴を受けていない。
泉温31.5度と32.5度の2本のアルカリ性単純温泉の自家源泉を、7か所もある浴室に配湯(混浴露天風呂2、混浴内湯1、貸切露天風呂2、女性専用の露天風呂と内湯各1)。そのすべてに源泉をかけ流すぬる湯の湯船と加温湯の湯船が付いている。
特に佐梨(さなし)川の渓流がすぐ真下の混浴露天風呂は涼感たっぷり。無色透明の湯からは細かな泡が湧き上がり、まるでソーダ水に入浴しているような爽快感だ。モミジ、ブナ、朴(ほお)といった周囲の木々の緑も鮮やかで、川の瀬音も清々(すがすが)しい。混浴風呂は貸し出しのバスローブをまとって入浴できる。
「夏は客室よりも入浴しているほうが涼しいくらいです」と主人の桜井隆光さんは笑顔で話す。
駒の湯山荘、自在館ともに客室にクーラーを設置しておらず、そのくらい夏でも涼しい温泉宿といえる。なお、国道352号をそのまま福島方面に向かうと、奥只見湖(銀山湖)に出る。巨大なダム湖のブルーの湖面を進む遊覧船も爽快だ。
文/荒井浩幸 写真/阪口 克ほか
【日本の涼景】新潟の〝ぬる湯三湯〞で心身爽快!(2)貝掛温泉へ続く(9/28公開)
自在館(栃尾又温泉)
料金:1泊2食1万7640円~(日による。連泊割引あり)/共同浴場の日帰り入浴は1100円(11時~12時、1日10人まで、1週間前から前日までに自在館へ要予約)
交通:上越新幹線浦佐駅から送迎35分(1日1往復、要予約)/関越道小出ICから14キロ
住所:魚沼市上折立66
問い合わせ:TEL025-795-2211
ランプの宿 駒の湯山荘(駒の湯温泉)
料金:1泊2食9950円~(3泊以上の場合は、湯治割引あり、11月〜5月中旬は休館)/日帰り入浴不可
交通:上越線小出駅からバス30分、大湯温泉下車送迎10分(要予約)/関越道小出ICから17キロ
住所:魚沼市大湯温泉719-1
問い合わせ:090-2560-0305(衛星電話)
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年8月号)
(Web掲載:2024年9月27日)