煙突がある景色を探して長崎へ 佐世保市三川内町、波佐見町を歩く
(左)「平戸洸祥団右ヱ門窯」の煙突(右)「トラスネ煙突」
11月11日は「煙突の日」
11月11日は煙突の日。「1111」の数字が4本の煙突が並んでいるように見えるためと言われるが、制定した団体や時期は不明だ。戦前から戦後にかけて、全国の工業地帯にそびえた工場や発電所の「おばけ煙突」は、日本の近代化と工業化、そして高度成長の象徴だった。
おばけ煙突の多くは姿を消したが、長崎県には現在も煙突がある景色が残り、その多くが佐世保市三川内町と波佐見町にある。三川内焼と波佐見焼の窯元にある、レンガ造りの四角い煙突だ。
個性的で魅力的な景観を保全し創造するため、「長崎の景観資産」制度を推進する長崎県。商店街や武家屋敷、洋館、教会など、見る人にやさしさやなつかしさ、心地よさを与えてくれる景観を244件登録。デジタルブック「ながさき景観資産ガイド 長崎景色」で公開しており、多くの煙突がある景色も登録されている。
では、「長崎景色」に登録・掲載されている、煙突を見てみよう。佐世保市内にある三川内山地区は、江戸時代に平戸藩が御用窯を設置した由緒ある焼き物の町。「皿山」と言われる陶磁器を生産する集落のひとつ。山々に囲まれた窯元の煙突が、独特の景観を作りだしている。「平戸洸祥団右ヱ門窯」の煙突の高さは約16メートル。三川内山では一、二の高さを誇り、昭和初期の町の盛況ぶりを今に伝えている。
お隣りの波佐見町も陶磁器の町だ。現在、「長崎景色」に登録されている町南東部の集落「陶郷中尾山」にあるレンガ造りの煙突は8本。その多くは昭和30年ごろに作られ、45年頃まで使用されていた。「波佐見焼」を焼く燃料は、昭和初期に薪から石炭へ、戦後は重油、そしてガスへと変わる。煙が少なく、より効率的に、大量に生産できるようになった。レンガ造りの煙突はその役割を終えたが、いまも焼き物の町のシンボルとして、特徴的な景観を生み出している。特に古い「トラスネ煙突」は長崎県の技術者である横山技師の指導で、大正14年に完成した石炭窯の煙突。高さは約17メートル。
やきものの町の歴史を語り、受け継ぐ煙突たち。三川内焼と波佐見焼のふるさとを訪ねたら、少し目線を上げて、レンガ造りの煙突を見比べるのも面白い。
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(Web掲載:2024年11月8日)