【旅して開運】伊勢神宮<三重>(1)見えるもの、見えないものに感謝し 自己の、知人の、世界の安寧を願う
外宮正宮。祭神の豊受大御神は食物の神、ひいては衣食住、産業の神として崇敬を集める
「日本人の心のふるさと」とも称される伊勢神宮 お参りは外宮から
祭神の天照大御神(あまてらすおおみかみ)がこの地に鎮座したのは2000年前と伝わり、「日本人の心のふるさと」とも称される伊勢神宮。古来、天皇以外が幣物(へいもつ<お供え>)を捧げることは禁じられていたが、社会制度の変化とともに庶民の間でも伊勢信仰が発展し、江戸時代の初めには年間2万~3万人の参宮者があり、中期以降は平均で年間40万人が参宮したとも推測されている。「伊勢音頭」では「せめて一生に一度でも」とうたわれるほど憧れの場所となった。新年を迎えるという節目に、「日本人のふるさと」を訪ねてはいかがだろう。
とはいえ2000年の歴史が息づく伊勢神宮の詳細を知るのは難しい。今回頼ったのは「参宮の宿 宿屋五十鈴(いすず)」だ。宿泊者を対象に、宿主の鈴木敏大(としひろ)さんが外宮(げくう)と内宮(ないくう)を無料で案内してくれる。
外宮のガイドは15時30分にスタート。まずは伊勢神宮の基礎知識を得る。伊勢神宮の正式名称は「神宮」、天照大御神の食事を司(つかさど)る神の豊受大御神(とようけおおみかみ)を祀(まつ)る豊受大神宮(外宮)と、天照大御神を祀る皇(こう)大神宮(内宮)があり、外宮、内宮の順で参宮するのが習わし……。鈴木さんの解説は分かりやすく、手水舎(てみずしゃ)で心身を清めてから鳥居をくぐる。小雨模様の薄暗い参道はより神聖に感じられ、雨粒とともに舞い落ちてきた杉の古木の芳香に包まれ、自(おの)ずと穏やかな気持ちが湧いてきた。
「10月の神嘗祭(かんなめさい)などは有名ですが、ほかにも神宮では年間千数百回の祭りが行われています」などの解説を聞きながら、豊受大御神が鎮座する正宮(しょうぐう<外宮の中心となるお宮>)へ向かう。四重の垣根が巡らされた正宮内の正殿(本殿)は、高床式穀倉から発展した「唯一神明造り」。萱葺(かやぶ)き屋根の両端に千木(ちぎ)が高くそびえ、柱も含め全体が直線的な造りに身が引き締まる思いがした。
正宮内の御饌殿(みけでん)について語る鈴木さんの語気が強まった。御饌殿では1500年前から今に至るまで毎日、朝夕の2回、天照大御神をはじめとする神々に食事(神饌<しんせん>)を奉る神事、日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)が粛々(しゅくしゅく)と行われている。「国安かれ、民安かれ」と、祈りと感謝を捧げる祭りという。
朝宵(あさよい)に もの食うごとに 豊受の神の恵みを 思え世の人
と詠んだのは江戸時代の国学者、本居宣長(もとおりのりなが)だ。人間が生かされているのは、すべて神様の恵みであると。そんな話を聞きながら正宮前にたたずんでいると、初冬の日は傾き森の木々が一塊となってざわめいた。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
【旅して開運】伊勢神宮<三重>(2)見えるもの、見えないものに感謝し 自己の、知人の、世界の安寧を願うへ続く(12/12公開)
今回のお宿
一戸建ての民家を改装し、2014年に開業。内宮まで徒歩8分、おかげ横丁まで徒歩3分の好立地。客室は全4室で、バス、トイレは共同。テレビもなく、翌日の早朝参拝に備えて心静かな一夜を過ごしたい人におすすめ。素泊まりのみで、1棟貸し(9人まで、2万9800円~)も可能。
■シングル5300円~、和室1万1500円~(いずれも素泊まりのルームチャージ)/近鉄鳥羽線五十鈴川駅からバス5分、猿田彦神社下車徒歩4分/伊勢市宇治浦田1-4-10/TEL0596-65-6455、070-5405-0725
伊勢神宮外宮(豊受大神宮)
■時間:5時~17時(1月~4月、9月は~ 18時、5月~8月は~19時)/無休
■交通:近鉄山田線・参宮線伊勢市駅から徒歩5分
■住所:伊勢市豊川町279
■TEL:0596-24-1111(神宮司庁広報室)
伊勢神宮内宮(皇大神宮)
■5時~17時(1月~4月、9月は~18時、5月~8月は~19時)/無休
■交通:近鉄鳥羽線五十鈴川駅からバス6分、内宮前下車すぐ
■住所:伊勢市宇治館町1
■TEL:0596-24-1111(神宮司庁)
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※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年1月号)
(Web掲載:2024年12月11日)
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