【鉄道ひとり旅】歴史をたどる琵琶湖一周の旅(1)東海道線-北陸線-湖西線
琵琶湖の西側を走る湖西線。琵琶湖の眺めはもちろん、京都駅方面に向かって右側の比良山地、比叡山の眺望も美しい(近江高島―北小松駅間)
城、鉄道遺産、古戦場、信仰の島 変化に富んだ琵琶湖
滋賀県の面積の約6分の1を占める琵琶湖は、湖の東西南北でそれぞれ風景や風土が異なり、変化に富んでいる。そこで、沿線の歴史を探訪する琵琶湖一周の鉄道の旅に出た。
京都―米原駅間の東海道線と、米原―長浜駅間の北陸線の愛称は、ずばり「琵琶湖線」。今回は反時計回りで一周するため、進行方向左側の席に座る。大津駅を過ぎると、ところどころで遠くに琵琶湖を望む。
まずは安土(あづち)駅で下車。織田信長が安土城を築いた地だ。安土城跡は現地への往復と、天主跡まで上るのに時間を要するので、今回は原寸大の復元天主の模型と、VR(バーチャルリアリティー)安土城シアターで安土城を実感しようと、「安土城天主 信長の館」に立ち寄った。きらびやかな天主の様子に息をのんだ。
米原駅で北陸線に乗り換え、長浜駅へ。長浜は時代ごとに三つの顔を持っている。戦国時代には豊臣秀吉が長浜城を築き、城下町を開いた。江戸時代は北国(ほっこく)街道の宿場町、琵琶湖の湖上交通の要衝としてにぎわった。明治に入るといち早く鉄道を誘致し、発展した。それらの歴史は、長浜城歴史博物館や、通称「黒壁スクエア」を中心とした古い町並み、長浜鉄道スクエアなどを巡って知ることができる。
「長浜城は江戸初期に廃城となりましたが、秀吉が整備した碁盤の目状の町並みは、基本的に今も残っています」と長浜観光協会の中川岳人さんが話す。黒壁スクエアの黒壁一號(ごう)館では、ガラス工芸品やオルゴールなどを展示・販売。黒塗りの堅牢(けんろう)な建物は、元は銀行だったといい、長浜の人々が当時、いかに最先端のものを求めていたかがうかがえる。
旧北陸線の開通にまつわる物語も興味深い。明治初め、政府が琵琶湖と敦賀をつなぐ鉄道建設を決めると、真っ先に駅の誘致に動いたのが、長浜の商人たちだったという。トンネルの難工事のため一部区間を除き、1882年に長浜―敦賀駅間が開業。同年に完成した旧長浜駅舎は鉄道記念物に指定され、現在は長浜鉄道スクエアで見学できる。
文/荒井浩幸 写真/宮川 透ほか
鉄道の歴史を語る博物館
長浜鉄道スクエア<長浜駅>
木骨石灰コンクリート2階建ての旧長浜駅舎、D51やわが国で唯一現存するED70形機関車を静態保存した「北陸線電化記念館」などからなる鉄道の博物館。
■9時30分~16時30分/年末年始休/300円/北陸線長浜駅から徒歩3分/TEL0749-63-4091
【鉄道ひとり旅】歴史をたどる琵琶湖一周の旅(2)東海道線-北陸線-湖西線へ続く(1/24公開)
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2024年11月号)
(Web掲載:2025年1月23日)