【鉄道ひとり旅】奥羽山中の錦秋湖から田沢湖線経由で紅葉三昧(1)北上線-奥羽線-田沢湖線

秋の錦秋湖を走る北上線(ゆだ錦秋湖―ほっとゆだ駅間)。錦秋湖はダム湖で、雪解け水で水位が上がる春先には水没林が見られる(写真/越 信行)
全線開通100周年を迎えた北上線、ここから北東北の紅葉名所へ
北海道・東北新幹線を北上駅で降り、西口改札近くの0番ホームに行くと1両だけの列車が待っていた。北上駅から横手駅までの61.1キロを結ぶ北上線で、今年全線開通100周年を迎えた。ここから、北東北の紅葉名所を巡る旅に出よう。
出発は9時55分。通勤・通学時間は過ぎたが、ひとり旅や家族連れが多く車内はほぼ満席だ。誰も彼もスマートフォンに夢中だが、正面に座る初老の男性だけは小型の時刻表を開き、旅程を確認している。
いまでは無人化が進んだが、昔はどの駅の窓口にも〝達人〟と呼べる駅員がいて、鉄道旅のいろはを習ったものだ。その一つが、JR乗車券は片道100キロを超えると途中下車ができること。今回はこれに該当するので、東京―横手駅間の乗車券を購入すると便利だ。

出発後、ほどなく車窓いっぱいに田園風景が広がる。岩沢駅からはトンネルが多くなり、山の景観へ変わっていく。ゆだ錦秋湖駅からほっとゆだ駅の先まではクライマックスといえ、左右に錦秋湖が望める。
ほっとゆだ駅で最初の途中下車。駅から5分ほどのネビラキカフェを訪問した。ネビラキ(根開き)とは雪国に春の訪れを告げる風景の一つで、太陽光で温まった木の輻射(ふくしゃ)熱で根元の雪が丸く溶け、地面が顔を出す。店名には地域を元気にする起点になりたいという願いが込めてある。大人気のテラス席からは錦秋湖を一望でき、例年10月中旬~下旬には紅葉ウォッチングの特等席になる。
「錦秋湖はナラ、ブナ、カエデなどの黄色やオレンジを中心に、赤や緑が加わる錦繍(きんしゅう)の紅葉です」と店長の瀬川瑛子さん。銀河ホール(公共の演劇専用劇場)の湖畔ステージや川尻湖畔公園からの眺めもよく、これらを巡ってからカフェ自慢の手作りスイーツやドリンクを味わうのも楽しそうだ。

ほっとゆだ駅で、もう一つ楽しみにしていたのが温泉だ。なんと!駅舎内に日帰り温泉がある。男女別内湯の壁には鉄道の信号機があり、列車の到着時間が近づくと青、黄、赤の順番で色が変わる。
すっかり安心して長湯をしたせいか、今宵の宿泊地である横手駅行きの電車では爆睡してしまった。宿で荷物を解いたら、ご当地グルメの横手やきそばを味わいに出かけよう。
文・写真/内田 晃


🥢横手駅周辺のご当地グルメ
食い道楽 本店


実力店を選ぶ「横手やきそば四天王決定戦」で12年連続の四天王に選ばれた人気店。横手やきそばは地元製麺所の麺を使い、目玉焼きと福神漬を添えるのが決まりだ。牛バラ焼きをトッピングした牛バラやきそば920円がおすすめ。
■11時〜13時30分、16時30分〜22時30分/不定休/奥羽線横手駅から徒歩5分/TEL0182-33-2925
※公式サイトはこちら

※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2024年11月号)
(Web掲載:2025年1月30日)