【5000円で日帰り満足旅】名古屋でミニシアターをハシゴして喫茶店でエビフライサンド

道路に面して券売窓口があるシネマスコーレ(写真/シネマスコーレ)
支配人のセンスが光るミニシアターの上映作品
大手映画会社の系列館では見られない、支配人のセンスが光る上映作品に出会えるのがミニシアターの魅力だ。5000円で1日に映画2本をハシゴするなんてマニアックかもしれないが、名古屋の喫茶文化に触れ、劇場自体に物語がある新旧2館のミニシアターを巡ってみよう。
名古屋駅西口を出て徒歩2分、故・若松孝二監督が1983年に設立した映画館「シネマスコーレ」の前に立つ。今春公開された映画「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」はここが舞台。井浦新(あらた)が若松孝二を、東出昌大(まさひろ)が支配人・木全(きまた)純治役を演じ、映画館設立当時の様子が描かれていた。
上映作品はアジア映画や日本映画、自主映画などが中心。驚くのはプログラムの多さで、1日6〜7本を上映している。「1日7本、すべての映画を観る常連客もいます」と、現在は代表の木全さん自身が驚くようなコアなファンもいるそうだ。初回上映で「方舟(はこぶね)にのって」を見た。80年に世間を騒がせた「イエスの方舟」のドキュメンタリー映画で、報道のあり方について考えさせられた。

次は地下鉄で今池駅へ向かう。映画の前に名古屋の喫茶文化を牽引(けんいん)してきた老舗、コンパル今池店で名物のエビフライサンドと濃厚な深みのあるコーヒーで腹ごしらえだ。シニア料金で鑑賞できたので奮発したが、エビフライ3本とふんわり卵に中濃とタルタルのWソースのホットサンドは食べ応えがあり、大満足。

続いて、喫茶店から歩いてすぐの「ナゴヤキネマ・ノイ」へ。元々あった「名古屋シネマテーク」が閉館し、旧スタッフがクラウドファンディングで資金を集め、2024年の3月にオープンさせたミニシアターだ。
支配人の永𠮷直之さんは「映画館を応援する人たちに背中を押されました」と語る。アルバイトから社員となり、閉館の5年前から実質的な運営を担ってきた。「ケーブルなどを一新したので、音響は格段に良くなっています」と永𠮷さん。
この日が初日だった「ヴァタ 箱あるいは体」は、マダガスカルの死生観がテーマのロードムービー。音響の効果も相まって、自然の音と楽器の音色が一層胸に迫って来た。
日本では年間1200本以上の映画が公開される。どれを見るか迷ってもこの2館に掛かる作品ならハズレはない。ぜひ、劇場での鑑賞をお勧めしたい。



旅の予算総額

文・写真/田辺英彦
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2024年12月号)
(Web掲載:2025年2月27日)