アートに親しむとっとり旅「鳥取県立美術館」3月30日オープン

大きな丸い明かり取りが印象的な3階展望テラス。のびやかな景色にも癒やされる
今春オープンする鳥取県立美術館は、県中部に位置する歴史町・倉吉市の一角にある。〝全国最後発〟といわれる県立美術館には、柔軟で親しみのあるアート空間が広がる。
鳥取県立美術館が誕生する倉吉市は、鳥取県のほぼ真ん中にあり、県内のどこからもアクセスしやすいロケーション。石州瓦と白壁土蔵の美しい町並みが有名だ。
「鳥取県はかつて大手コーヒーチェーン『スターバックス』の県内進出が全国最後で話題になりましたが、この美術館も県立クラスとしては全国最後発になります」と同館の係長・生田憲一郎さんは笑顔で語る。満を持してのオープンだけに、多くの人に愛される工夫も枚挙にいとまがない。
鳥取県立美術館の生田憲一郎さん
建物は東京・代官山のランドマーク「ヒルサイドテラス」も手掛けた、世界的建築家・槇文彦さんが率いた槇総合計画事務所による設計だ。スタイリッシュな3階建てで、エスカレーターや階段は敢えて連続させずに館内の回遊を促す造り。印象的なのは、天井のルーバーと、大きなガラス窓から望む景色の広さだ。
「天井は鳥取砂丘の風紋をイメージした抑揚あるデザインで、県産の木材を使っています。目の前は国史跡・大御堂(おおみどう)廃寺跡。春から秋には緑の芝で覆われて爽やかです」と生田さん。隣接の広い平原はかつて僧侶たちが学んだ場。そんな意味でもここは美術館を建てる場所にふさわしく、県内10か所以上の候補地から選ばれたそうだ。
「いつでも気軽に足を運んでもらえるよう、展示会場ではないパブリックスペースは、無料で入館できるようにしています」
モダンでスタイリッシュな建物
鳥取砂丘の風紋をイメージした吹き抜けの「ひろま」の天井
身近にアートを、人々が集う美術館
同館収蔵品で最も有名なのは、アンディ・ウォーホル作『ブリロ・ボックス』だろう。たわしの包装箱を精密に模倣したもので、5点で3億円という購入額も大きな話題になった。日用品の箱をわざわざ模した作品は、大量消費社会への警鐘、「芸術とは何か」という本質的な問いを投げかけるものとして、現代アートの世界で高く評価されている。
「アートは暮らしの随所にあって、例えば建物を建てること自体も『ものづくり』でありアートです。だから、美術館工事の方々によるワークショップも催しました」。美術館のオープン前から数多(あまた)のイベントを行なってきたのも、全国的に珍しい。身近にアートを感じて欲しいという思いが強く伝わる。
美術館を身近に感じてもらうため、各種ワークショップを随時開催している
開館記念展『アート・オブ・ザ・リアル』は江戸時代の伊藤若じゃく冲ちゅうからウォーホルまで時代を超えた名作を展示。第二弾は鳥取出身の漫画家、水木しげるさんにまつわる展示を行う。企画展は年4回。四季の鳥取旅を楽しみながら、足を運んでみたい。
鳥取県立美術館 開館記念展
アート・オブ・ザ・リアル 時代を超える美術
− 若冲からウォーホル、リヒターへ −
2025年3月30日~6月15日
(展示作品の一例)
アンディ・ウォーホル『ブリロ・ボックス』© 2024 The Andy WarholFoundation for the Visual Arts,Inc. / Licensed by ARS, NewYork & JASPAR, Tokyo G367
植田正治『パパとママとコドモたち』1949年(プリント1980年代) ゼラチン・シルバー・プリント 鳥取県立美術館蔵
伊藤若冲『象と鯨図屏風』18世紀 紙本墨画・六曲一双 MIHO MUSEUM蔵
アート旅とあわせて訪ねたいおすすめスポット
エースパックなしっこ館
二十世紀梨(にじっせいきなし)の巨木
梨と世界の人々
鳥取県が誇る「梨」に関する日本唯一の博物館。二十世紀梨の巨木をはじめ、梨の資料を各種展示。通年、梨3種の食べ比べ体験もできる。フルーツパーラーでは梨ソフトと生の梨がおいしい「なしっこミニパフェ」500円をぜひ
■9時〜17時/第1・3・5月曜休(祝日の場合は翌日)、年末年始休/300円/TEL0858-23-1174
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倉吉白壁土蔵群
室町時代に打吹(うつぶき)城の城下町として誕生。本町通りの商家や玉川沿いの景観が見どころ。赤褐色の石州瓦と白壁の町並みが美しい。
■倉吉白壁土蔵群観光案内所/TEL0858-22-1200
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泊まるなら♨ 三朝温泉
県立美術館から車で15分。三徳川沿いのレトロな温泉街には、世界屈指のラドン泉を引く温泉宿や懐かしい射的の店も並ぶ。河原風呂が有名。
■三朝(みささ)温泉観光協会/TEL0858-43-0431
※ホームページはこちら
絶対!とっとりキャンペーン
<万博&鳥取をぐるっと周遊>4月13日~10月13日開催
大阪・関西万博の開催にあわせて、鳥取県では合計1000人に旬の県産品が当たるキャンペーンを実施する。応募条件は、①万博会場(関西パビリオン鳥取県ゾーン)や鳥取県内の観光地を周遊、②鳥取県内の対象施設に宿泊、③万博会場で取得できるAR画像や鳥取旅の様子をSNSに投稿のいずれか。
詳しくは、こちらの👉キャンペーンサイトでチェック
協力:鳥取県東京本部
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2025年5月号)
(Web掲載:2025年3月28日)