【お花見列車】最上川沿いを北へ「置賜さくら回廊」を巡る 山形鉄道フラワー長井線(2)

「釜の越農村公園の桜群」。右側に見えるのが枝を切られた釜ノ越サクラと2世樹の勝弥桜(写真/ピクスタ)
「親」を見守る「分身木」
【お花見列車】最上川沿いを北へ「置賜さくら回廊」を巡る 山形鉄道フラワー長井線(1)から続く
物語は続く。2世樹は台木に釜ノ越サクラを接ぎ木したものだが、台木を使わず枝から発根させて育てた「分身木」も「親」を見守っている。「分身木」と名付けたのは、桜守の金田春雄さん。「純粋な子孫だから『分身木』という名を思い付きました。別の場所で育てられていたのですが、親のそばに移植することになりました。移植しても花を咲かせてくれるか不安でしたが、21年に見事な花を咲かせた時は、感動しかありませんでした」と話す。

釜ノ越サクラの近くの県道沿いでは、さらに先輩の樹齢1200年、薬師ザクラが今も現役だ。脇に立つお堂を守るように花を咲かせる。「地元の人々が誰に強制されるでもなく総出で草刈りをし、消毒をして守ってきました。『保存』なんて言葉がない時代から普通にやってきた。刈った草は肥料としています。そんな『あたりまえのこと』を次世代に伝えていきたい」。薬師ザクラの桜守、多田章(ただあきら)さんの言葉が胸に響く。

町内にはほかにも、一時は樹勢が衰えたが所有者の熱心な手入れにより回復しつつある殿入(どのいり)ザクラ(樹齢680年)、樹高20メートルにもなる八乙女(やおとめ)種まきザクラ(樹齢500年)など、それぞれに見る人、守る人の物語が隠れた古木が点在している。時間の許す限り巡り、町内の鷹野湯温泉パレス松風に泊まり、目に焼き付けた花を振り返ろう。時間が合えば白鷹町名物のそばも味わいたい。町内では「隠れ蕎麦(そば)屋」の看板のもとで、6軒の店が営業している。


翌日はフラワー長井線を南下しながらさくら回廊巡りを続ける。長井駅からレンタサイクルで、国の天然記念物でもある伊佐沢(いさざわ)の久保ザクラ(樹齢1200年)や、最上川両岸、約2キロに300本のソメイヨシノが咲く最上川堤防千本桜を回り、終着の赤湯駅に戻ってまだ余力があれば、駅から徒歩20分の烏帽子山(えぼしやま)千本桜も訪ねたい。ソメイヨシノ、シダレザクラ、エドヒガンなど約1000本の種々の桜が春を祝う。
文/渡辺貴由
鷹野湯温泉パレス松風
ひとり旅にもおすすめ


2024年4月にリニューアルオープンした白鷹町の温泉ホテル。市街地から少し離れた高台にあり、大浴場からの眺望もいい。自然豊かな環境で、リスやタカなどを見かけることもある。泉質は美肌効果も期待できる硫酸塩泉。全22室でシングルが5室あり、ひとり旅にもおすすめ。夕食は料金アップで米沢牛が味わえるコースも。パークゴルフ場やテニスコートもある。
■1泊2食1万5125円~/山形鉄道フラワー長井線荒砥駅からタクシー10分/TEL:0238-85-1001
そば処 丸万
全国各地のそばを自家製粉


長井駅の近くにあり、自家製粉の10割そばが自慢。福井県産の在来種と地元の「でわかおり」を使用。手打ちと機械打ちを選べるが、おすすめは手打ち。もりそば(800円)は170グラムのほか、250グラムの板そばでもすんなり胃袋に収まる。ダイコンおろし汁も必ず提供され、つゆに混ぜるとピリッとした風味がそばの味をさらに際立たせる。エビ天2本を含む上天ぷら板そば(1750円)もぜひ。
■11時~14時30分(夜は完全予約制)/水曜休/山形鉄道フラワー長井線長井駅から徒歩7分/TEL:0238-88-2543
