【お花見列車】最上川沿いを北へ「置賜さくら回廊」を巡る 山形鉄道フラワー長井線(1)

あやめ公園―羽前成田駅間。満開の桜と残雪の山々の組み合わせは東北らしい風景だ。繁忙期は2両編成で運行することもある
種まきの季節の訪れを知らせる桜の名所「置賜さくら回廊」
山形県南部の赤湯駅で山形新幹線から山形鉄道フラワー長井線の1両編成の気動車に乗り換える。しばらく西へ進んだ列車は、今泉駅を過ぎると北に進路を変え、最上川西岸を北上。田園風景の中をほぼ真っすぐに、エンジン音を響かせながら進む。春ともなれば小さな駅舎に舞う桜吹雪に、乗客も目を向けることだろう。沿線の南陽市、長井市、白鷹(しらたか)町には桜の巨木、名木が点在し、それらをつなぐ「置賜(おきたま)さくら回廊」は、古来この地方に種まきの季節の訪れを知らせる桜の名所として知られている。
30.5キロ、17駅をつなぐフラワー長井線は、終点の荒砥駅で途切れる、いわゆる「盲腸線」だ。前身の旧国鉄長井線は、荒砥からさらに北へ向かい山形を経て左沢(あてらざわ)線の左沢駅までを結ぶ計画があったが、実現することはなく、「未成線」として今に至る。それが幸いし、と言っては語弊があるかもしれないが、沿線にはのどかで豊かな自然が残る。



まずは荒砥駅から白鷹町の桜巡りを始めよう。町には樹齢500年以上の桜が6本あり、「古典桜の里」と称してPRしている。いずれも駅からは少し離れているため、レンタサイクル(500円※)か、タクシー(4人乗り1時間5500円)を利用するといい。また、荒砥駅に到着する手前、最上川の畔(ほとり)に植えられた桜並木もお見逃しなく。ちなみに、この川にかかる最上川橋梁(きょうりょう)は日本最古の長大橋梁とされる。1887年イギリス製で、元は東海道線の木曽川橋梁として使われ、移築された。
※ほかの駅(長井駅、赤湯駅)で返却の場合はプラス1500円

古木を受け継ぐ「桜の物語」
町内に数ある桜のうち、ぜひ訪れてほしいのは、長井市との境界に近い「釜の越農村公園の桜群」だ。ここには興味深い桜の物語がある。その名の由来にもなった樹齢800年の釜ノ越サクラ(エドヒガン)は、2016年以降、花を咲かせなくなった。枯死である。だが、黒ずんだ幹はまだ立っている。そのそばで、勝弥(かつや)桜と呼ばれる樹齢100年の2世樹が「あとは任せろ」とばかりに花を咲かせるのである。
文/渡辺貴由
【お花見列車】最上川沿いを北へ「置賜さくら回廊」を巡る 山形鉄道フラワー長井線(2)へ続く(4/26公開)
