【大阪・関西万博】令和になってもそびえたつ太陽の塔

広大な万博記念公園内に立つ「太陽の塔」
今から55年前、昭和の大阪に世界中から見物客が押し寄せた。その象徴的存在として大阪・千里丘陵の万博記念公園に保存されている太陽の塔を訪れ、1970年大阪万博の熱気に思いをはせた。
今も堂々たる雄姿を見せ、色あせないオーラを放つ太陽の塔
「太陽の塔」が好きだ。太陽に顔を向け、両手を広げる高さ70メートルの巨大な建造物。約6400万人の観客を集めた70年万博で誰もが見上げた芸術家・岡本太郎の作品だ。今も堂々たる雄姿を見せ、色あせないオーラを放つ。
太陽の塔は大阪万博のシンボルタワーだったと思われがちだが、実際は「人類の進歩と調和」を表現するテーマ館の一部だった。何を表しているのかは、作者本人が語っていないから分からない。明確なのは、特徴的な三つの顔。正面の「太陽の顔」は現在を、最上部の「黄金の顔」は未来を、背面の「黒い太陽」は過去をそれぞれ表している。これは太郎が「人間の身体、精神のうちには、いつでも人類の過去、現在、未来が一体になって輪廻(りんね)している」と考えていたからだ。
呪術的な気配を漂わせる「黒い太陽」
塔内の地下に第4の顔。復元された「地底の太陽」
閉幕後、ほかのパビリオンと同様に撤去される予定だったが、存続を願う運動が起こり、残された。75年に永久保存が決定。2018年には耐震工事を経て、内部も常設の展示施設として一般公開された。塔の中には生命の進化の過程を表す「生命の樹(き)」がある。太郎はこれを「太陽の塔の〝血流〟だ」と語り、生命体だと捉えていた。
胎内のような真っ赤な世界の「生命の樹」
地下から上空へ、高さ41メートルの樹のオブジェがうねるように延びる姿は圧巻。樹体にはアメーバなどの単細胞生物から、魚介類、恐竜、チンパンジー、人類に至るまでの生物模型が並んで付いており、生命の進化をたどっている。「生命の樹は、いのちの歴史。まずは根源を見よ」と言わんばかりに未来へ吹き上げる生命のエネルギーを表現している。
「太陽の塔」の右腕の内部。当時はエスカレーターで大屋根の空中展示へ行けた
「地底の太陽」への通路には太郎のラフスケッチを展示
大阪のランドマークとして親しまれる太陽の塔は、70年万博では建物の大屋根を突き抜けるように立っていた。
現在は大阪万博のレガシーとして未来を照らし続けている。夢洲(ゆめしま)から万博記念公園までは電車で1時間弱。足を延ばせば、今年の万博がより深いものに感じられるだろう。
文/仲底まゆみ 写真/宮川 透
「旅行読売」が伝えた70年大阪万博
大阪万博が開催された70年は、本誌でも4~6月号と3か月連続で特集を組んで盛況ぶりを伝えた。開幕後の6月号では、3ページのカラーグラビア「華ひらいた万国博」を展開。6ページの現地ルポは「万国博見てあるき」と題し、各国のパビリオンを中心に会場の様子を紹介した。多くの観客に取り囲まれた太陽の塔の堂々たる姿も大きく扱っている。
アメリカ館では、アポロ11号で持ち帰った月の石の展示について、「建物の周りも幾重にもつながる行列」と人気のすさまじさを報じている。日本館では「リニアモーターカーの模型運転に多くの人が足を止めて見入っていた」と未来の乗り物への関心の高さを伝えた。
【大阪・関西万博の注意事項】
・来場はスマートフォンで日時を予約してから
・自家用車は会場への乗り入れができない。万博パーク&ライド駐車場の利用を
・会場内で現金は使用できない。キャッシュレス決済の準備を
・キャスター付バッグや大型荷物は会場内に持ち込めない。コインロッカーなどの利用を
※最新情報は「公式サイト」で確認してください。
【万博記念公園】
■9時30分~16時30分/ 水曜(休日の場合は翌平日)休/260円(自然文化園・日本庭園共通料金)/大阪モノレール線万博記念公園駅から徒歩5分/吹田市千里万博公園/TEL:06-6877-7387
【太陽の塔】
■10時~16時30分/720円(前日までの事前予約制、入園料が別途必要)/🆓0120-1970-89
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2025年5月号)
(Web掲載:2025年4月19日)