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【取り寄せできない東京・大阪みやげ】高麗餅 菊寿堂義信(大阪・北浜)

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> 大阪市
【取り寄せできない東京・大阪みやげ】高麗餅 菊寿堂義信(大阪・北浜)

店内で食べられる高麗餅はお茶付きで800円。立体的な盛り付けも昔から変わらぬスタイルだ

確かな小豆を仕入れシンプルに作る

新大阪駅から南に約5キロ。関西随一の金融街・北浜に、江戸期の天保年間から上生菓子を作ってきた和菓子店がある。船場(せんば) に店を構えていたが、大阪大空襲で焼け出されてこの地に移転した。外観は昭和レトロな町家で、のれんや外看板はない。

「のれんですか。私が子どもの頃から見たことないですね。でも一見(いちげん)お断りとかじゃないですよ」。18代目を継ぐ店主・久保哲也さんが気さくな笑顔でそう言った。

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18代目店主の久保哲也さん。一升枡に入った丹波大納言は1回に炊き上げる量だ

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場所は北浜のオフィス街。ガラス越しに小さな立て看板が見える

こぢんまりとした店内には上生菓子が並ぶショーケースと、テーブル席が三つ。看板商品の高麗餅は粒あん、こしあん、白あん、白あんに抹茶を練り込んだ抹茶あんと、ごまをまぶした白ごまあんの5種で一人前だ。その製法から「にぎり寿司(ずし)のような和菓子」とも評される。

「65年ほど前、15代目の曽祖父が店内の喫茶でお客さんを待たせずに出せるメニューとして考案したそうです。注文を聞いたら、あんと求肥を手にのせ、ぱっと握ってすぐに出す。作り方は今も当時のままです」

テーブル席に座り、握りたての高麗餅をいただく。色鮮やかな見た目のインパクトに加え、想像以上に豆の味が濃い。すっきりと上品な甘さのあんが、中の求肥と合わさって舌の上で滑らかに溶けてゆく。5種とも濃密な個性があるので、驚きも5回。味の変化を楽しんでいたら、いつの間にやらお皿は空に。

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併設の喫茶で至高のあんを味わう。できたてのしっとりした風味が格別だ

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持ち帰りの箱入りは5色が一列に並ぶ。60年以上前にデザインされたとは思えない斬新な色と形

製法のこだわりを久保さんに尋ねると、「特に複雑な仕事はやってないんです。うちは商品の種類も少ないし、生菓子も装飾に凝っているわけではない。こだわると言えば素材のみですね」とさらり。

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むっちりとした求肥をあんで包む。この作業は注文を聞いてから

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指の節でピンと角を立たせて模様を入れる

つぶあんは丹波大納言(たんばだいなごん)小豆、白こしあんは備中(びっちゅう)白小豆を使う。いずれも最高級品だ。つぶあんを炊く時は1回の量を一升だけと決めているのも曽祖父の代から変わらない。

「それ以上炊くと豆の重みで粒が潰れてしまいます。自分の目が届く範囲で、しっかりと作れる数だけを作りたい。昔ながらの製法で、今の方にもおいしいと思ってもらえたら、それが一番です」

気負いも気取りもなく、実直に作られた高麗餅はあんこが自慢。しっとりした口当たりが命だ。賞味期限が当日中なので、地元でないと遭遇できない超レアもの。大阪の粋(すい)とも言えるこの逸品をぜひ味わって。

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こちらも名物の「梅干し」。白あんを求肥で薄く包み、赤いようかんにくぐらせた和菓子。通年販売で賞味期限は7日。10個入りの樽で2700円

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たっぷりの粒あんを求肥で包んだ大福は通年販売。2個800円

冬のおすすめ(取材時)

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雪餅(12月1日〜下旬)氷餅をまぶしたこしあん 370円


高麗餅
◎5個入り800円
<賞味期限>当日
<購入方法>持ち帰りは要電話予約(当日も可)

※記事中の価格などはすべて取材時のデータです

【菊壽堂義信】
住所:大阪市中央区高麗橋2-3-1
TEL:06-6231-3814
■10時〜16時30分(店内喫茶は11時〜16時)、売り切れ次第終了/土・日曜、祝日休/地下鉄堺筋線北浜駅6番出口から徒歩3分
※店舗のインスタグラムはこちら

文/北浦雅子 写真/宮川 透

(出典:旅行読売2025年1月号)
(Web掲載:2025年4月24日)


Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

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