高尾山の山頂南側にある展望台。空気の澄んだ日には富士山が望める（写真／ピクスタ）

東京都の低山と聞いて、真っ先に名前が挙がる高尾山

東京都の低山と聞いて、真っ先に名前が挙がるのは高尾山だ。都心から電車で約1時間と近く、ケーブルカーやリフトも併用でき、登山初心者や家族連れでも安心して山登りを楽しめる。2007年にはミシュランガイドで三つ星を獲得し、近年は外国人登山者も増えている。

高尾山の自然研究路（登山道）は8コースあり、麓から山頂まで歩き通せるのは1号路、6号路、稲荷山コースの三つ。ただし、稲荷山コースは当面の間、危険木処理作業のため通行止めで、それに伴い6号路は登り専用になっている。今回は6号路で登り、1号路で下山する。

早朝、京王線高尾山口駅を出発。ケーブルカーの清滝駅を右に見て舗装道を上る。ほどなく6号路入り口があり、樹林の中の山道に入る。耳を澄ますと沢の水音が聞こえ、空気も涼しく感じる。岩窟に弘法大師を祀（まつ）る岩屋大師を経て、琵琶滝に到着。この滝は水行（すいぎょう）道場の一つで、近くに大聖不動明王（だいしょうふどうみょうおう）を祀る堂宇がある。参拝すると閉め切った堂内から滝行前と思しき行者の声が聞こえ、高尾山が修験道の山であることを実感した。

コースを確認！

橋を渡った右側の岩窟が岩屋大師

ここから勾配（こうばい）がきつくなり、つい視線は足元に向く。そこで周囲を見渡すと、ハナネコノメ、ヤマルリソウなどの小さな花を見つけた。大山橋を渡り、もうひと登りすると「飛び石」と呼ばれる沢歩きが始まる。この日は前夜に雨が降らず、水量は少なかったが、沢の中を歩く場所もあった。靴底の高い登山靴にして正解だった。

6号路の「飛び石」と呼ばれる沢歩き。2019年まで石伝いに上る場所もあったが、豪雨の影響で様子が変わった

３月下旬に６号路で見られた山野草（左と右＝マルリソウ、真ん中＝アオキの実）。
気になる植物があれば、写真を撮って高尾ビジターセンターのスタッフに教えてもらおう

沢に架かる大山橋を渡る

最後の試練は木製の階段。なんと383段もあるが、段差はそれほど高くない。息を整えつつ登ろう。階段が終わり、舗装道を少し上ると山頂に到着だ。南側の展望台からは大山、蛭（ひる）ヶ岳、大室山などの丹沢山塊や富士山も望めた。

2021年にリニューアルした6号路の階段。長く大変だが登山の良い思い出になる

眺望を楽しんだら、高尾ビジターセンターへ。センター長の梅田由花さんに6号路で撮影した山野草の名前を教えてもらい、5・6月の花情報も聞いてみた。

「6月上旬には6号路でセッコクの白い花が見られますよ。杉などの高い木に着生する植物なので、時折足を止めて見上げてみてください」

5月頃にはマルバウツギ、コゴメウツギなども咲くそうだ。

文・写真／内田 晃

「週末や休日は早い時間帯がおすすめです」と高尾ビジターセンターの梅田さん

【低山と温泉へ】海外からも登山者が訪れる自然豊かな修験道の山　高尾山②＜標高599m・歩行距離7km・歩行時間2時間30分＞へ続く

【登山データ】

■交通 ［鉄道］新宿駅から京王線特急40分の北野駅で京王高尾線に乗り換え13分、高尾山口駅下車［車］圏央道高尾山ICから国道20号経由1.5キロ（P有料あり）
■問い合わせ／TEL：042-664-7872（高尾ビジターセンター）

アドバイス

登山者は年間300万人と言われるほど人気なので、のんびり山歩きするなら週末は避け、平日がよい。1号路以外は山道になるのでトレッキングシューズだと安心。ケーブルカー、リフトで下山する場合は最終時間のチェックを忘れずに。

※記載内容は掲載時のデータです。

（出典：旅行読売2025年6月号）
（Web掲載：2025年6月24日）