【鉄道の旅】高松駅から行きたい名所&グルメ、乗り継ぎたい観光列車

徳島県西部の剣山(つるぎさん)中腹から移築した下木(しもき)家住宅は国の重要文化財。茅葺き、寄棟(よせむね)造りの民家で、雪が滑り落ちるようにした急勾配の屋根が特徴
🚈サンライズ瀬戸の乗車ルポは👉こちら
アートの祭典とうどんを堪能
今年は3年に1度の瀬戸内国際芸術祭の開催年(夏会期8月1~31日、秋会期10月3日~11月9日)。会場は小豆(しょうど)島、直島(なおしま)、豊島(てしま)など瀬戸内海の島々や高松港周辺など広範囲に及ぶ。高松から列車で訪れるなら今年から新たに会場となった志度(しど)・津田エリア(夏会期のみ)もおすすめだ。平賀源内(ひらがげんない)の旧邸と記念館で特異な才能の一端に触れ、津田の松原で海の絶景と現代アートに浸れる。屋島山麓の四国村ミウゼアムも会場の一つ。ギャラリーで作品を鑑賞し、移築復原された古い建物を見て歩くと、それらもまた機能美を備えたアートのようにも思えてくる。
グルメといえば讃岐うどん。電車やバスでは行きにくい場所にも名店が多いので、迷ったらうどんタクシーを利用しよう。讃岐うどんを知り尽くした運転手さんが案内してくれ、車内での会話も弾む。
旅程に余裕があれば観光列車にも乗りたい。徳島―阿波池田駅間を走る「藍(あい)よしのがわトロッコ」、予讃(よさん)線、徳島線、瀬戸大橋線などを走る「アンパンマン列車」などがあり、旅の選択肢は多い。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
📷四国村ミウゼアム
四国各地の古い建物が森の中にたたずむ
下木家住宅の内部は3間からなり、座敷には囲炉裏が切られている
かずら橋も再現され、橋を渡って四国の古民家の世界へ入って行く
小豆島から移築した農村歌舞伎舞台
1893年に建てられた広島県大久野(おおくの)島の灯台。内部も見学できる
エントランスの「おやねさん」。展示スペースやショップがある
四国村カフェのクリームソーダ(700円)とチーズケーキ(500円)
四国村わら家の特大うどん(1300円)
屋島山麓の広大な敷地に、四国各地から移築復原した33の建物が点在。江戸~大正時代に建てられた住宅、土蔵、石蔵、歌舞伎舞台、しょうゆ製造所、灯台などがあり、そのうち、6棟が国の重要有形民俗文化財、2棟が国の重要文化財だ。茅葺(かやぶ)き屋根のうどんと郷土料理の店、神戸の異人館を移築したカフェは入村料なしで利用できる。瀬戸内国際芸術祭の会場でもあり、敷地内の四国村ギャラリーでは、高松市生まれの画家・猪熊弦一郎の企画展(7月20~25日、9月13~19日は展示替えのため見学不可)を開催中。
■9時30分~16時30分/火曜(祝日の場合は翌日)休、臨時休あり/1600円/高松市屋島中町91/ことでん志度線琴電屋島駅から徒歩5分、または高徳線屋島駅から徒歩10分/TEL:087-843-3111
📷平賀源内記念館
大河ドラマでも注目された源内を知る
貴重な『解体新書』の初版本
エレキテルを体験できる静電気発生装置
地元さぬき市出身で、博物学者、科学者、アーティスト、文士などとして多方面で異彩を放った平賀源内の業績を紹介。源内が完成させた日本初の発電器・エレキテルの実物や、制作に協力した『解体新書』の初版本などが興味深い。瀬戸内国際芸術祭の夏会期会場でもあり、電動製品や情報システム、廃品などを用いる美術家・やんツーさんの作品を展示し、夜間も公開する予定。
■9時~17時/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始休/500円(平賀源内旧邸と共通)/さぬき市志度587-1/ことでん志度線琴電志度駅または高徳線志度駅から徒歩3分/TEL:087-894-1684
📷平賀源内旧邸
源内ゆかりの薬草園が見もの
堂々とした設えの建物
薬草園では四季折々に、かれんな花も咲く
平賀源内記念館から550メートルほどの所にあり、現在の建物は1862年に建て替えられたもの。薬学・医学も学んだ源内にちなみ、約100種の薬木・薬草を植栽した薬草園を併設している。ここも瀬戸内国際芸術祭の夏会期会場で、先進的なテクノロジーと物理素材や自然現象を組み合わせるアーティスト・研究者である筧康明(かけひやすあき)さんの作品を展示する。
■10時~16時/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始休/500円(平賀源内記念館と共通)/さぬき市志度46-1/ことでん志度線琴電志度駅または高徳線志度駅から徒歩7分/TEL:087-894-5513
📷津田の松原
「日本の渚百選」にも選ばれた景勝地
約1キロにわたって松林が続き、白砂の浜と黒松のコントラストが美しい。江戸時代初期に岩清水八幡宮の防風林として植えられたことが始まりで、中には樹齢600年以上の老松もある。 県下最大の海水浴場でもあり、瀬戸内国際芸術祭の夏会期中は、松林から着想を得た作品が展示される。
■見学自由/高徳線讃岐津田駅から徒歩10分/TEL:087-894-1114(さぬき市商工観光課)
📷うどんタクシー
この日のドライバーは1日3食うどんの日もあるという丸岡裕幸さん。おすすめの下記2店を巡った
「讃岐うどんを味わいたいけれど、たくさんある店の中からどこを選んだらよいか迷う」。そんな時に役に立つのがうどんタクシーだ。「老舗に行きたい」「穴場の店に行きたい」など、大まかな希望を伝えればそれに見合った店へ案内してもらえるし、まったくのお任せでもいい。運転手は筆記試験、実地試験に加え、手打ち試験までクリアしたうどんの達人。「セルフ」と呼ばれる独特の注文方法も教えてくれるから安心だ。車内ではうどんの豆知識に加え、道中の観光案内も聞ける。高松のほか坂出、宇多津(うたづ)、丸亀、琴平の各駅発着、ホテル発着も可能だ。
■2時間(2店舗程度)1万800円(タクシー1台、4人以内の料金、食事代は別)/インターネットまたは電話で要予約/TEL:050-3537-5678 ※「うどんタクシー」は琴平バス(株)の登録商標です。
🍜手打ちうどん ひさ枝
爽やかな風味が食欲をそそる「すだちうどん」
長いひげがトレードマークの店主の久枝(ひさえだ)了さん。元気いっぱいの接客で盛り上げる
200グラムもの牛肉がのった「肉うどん」。甘くて軟らかい肉が美味
海沿いの工場や倉庫が集まった一角に2016年にオープン。昼時は近隣で働く人々が多く訪れ活気あふれる。イリコ、カツオ、ウルメでだしを取ったつゆの透明感と優しい味わいが印象深い。おすすめはスダチが麺を覆い尽くした「すだちうどん」(700円)。ボリュームたっぷりの「肉うどん」(1000円)も人気。ほかに納豆釜玉、つけカレーうどんなどユニークなメニューも豊富。いなりずしやおにぎり、おでんもある。
■7時~14時/元日休/高松市郷東(ごうとう)町796-53/予讃線香西駅から徒歩20分/TEL:087-810-3847
🍜ヨコクラうどん
「鶏チャーシュー葱炙油うどん」は、3年ほど前にイベント用に考案したところ好評だったため通常メニューとなった
歴史を感じる店構え
天ぷらは順次、揚げたてが並ぶ
こしの強い麺の風味を味わうなら、シンプルな「かけうどん」がおすすめ
髙松駅から乗り継ぎたい列車
🚉藍よしのがわトロッコ
清流を眺めながら徳島の歴史文化も知る
藍色が緑に映える車両。ダイヤは徳島駅発10時35分、阿波池田駅発14時33分発
窓ガラスのないトロッコ車両は、前方、左右の見晴らしが抜群。森の香りを含んだ爽やかな風が吹き抜ける
吉野川と並走し、交差しながら徳島の里山を走り抜ける
徳島-阿波池田駅間の徳島線で、青く輝く吉野川に寄り添い、涼やかな風を受けて走る観光列車。予約をすれば阿波尾鶏(おどり)弁当(1350円)、あなごめし(1280円)など郷土の味が楽しめる。ドリンクのほか「なると金時どら焼き」(300円)など、沿線のスイーツやオリジナルグッズの車内販売もある。1日1往復で約2時間30分。トロッコ乗車区間は石井-阿波池田駅間の約2時間。高松駅から徳島駅までは高徳線特急で約1時間10分。ガイドが沿線の歴史や文化を紹介し、阿波池田駅で降車後は「まちあるきツアー」(1000円)にも参加できる。(下記は2025年の運転日)
運転日 7月5・6・12日、8月23・24・30・31日、9月6・7・13・14・15・20・21・23・27・28日
※7月12日は阿波池田―大歩危(おおぼけ)駅間を延長運転
料金 徳島―阿波池田駅2360円(運賃+座席指定530円)
🚉予讃線8000系 アンパンマン列車
アンパンマンの世界観に浸る
車体・デッキや洗面台、トイレにもアンパンマンたちが描かれている ©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
車内 ©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
2000年に特急列車として誕生したアンパンマン列車は、現在、デザインや車内設備が異なる5種(21車両)が四国各地で走っている。高松駅から乗るなら予讃線で松山駅まで、「予讃線8000系アンパンマン列車」(特急しおかぜ・いしづち)が便利だ。1号車には虹をイメージしたカラフルな指定席「アンパンマンシート」(列車、運転日により設置がない場合もあり)がある。
運転日 毎日 料金 高松―松山駅6160円(片道自由席)
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年8月26日)