【いま、会える昭和】5つの昭和の商店街へタイムスリップ(山本有/レトロ商店街愛好家)

(左)北九州市/旦過(たんが)市場(右)横浜市/浜マーケット
昭和の風景が残るレトロ商店街。食堂や衣料品店、八百屋、雑貨店など地元の人たちの暮らしに密着した味わいのある店が軒下に並びます。古き良き時代の雰囲気が味わえるレトロ商店街の魅力を、愛好家の山本有さんに教えてもらいました。
やまもと・ゆう(レトロ商店街愛好家)
1975年、茨城県生まれ。昭和を感じさせる全国の古い商店街を撮り歩く。今まで訪ねた商店街は28都道府県590か所で、ブログ「香ばしい町並みブログ」やX「昭和レトロ香ばしい町並み」で紹介。著書は『昭和の商店街遺跡、撮り倒した590箇所』。
商店街の魅力は、猥雑さ、ゴチャゴチャ感、生活感
商店街巡りの最初の記憶は、幼少期に親に連れられていった和歌山市の商店街と小売市場だ。店先のまぶしい電球の明かりと、混雑と熱気だけは今でもはっきり覚えている。当時にぎわっていた場所も今はなく、インターネットを見ても写真はほとんど出てこない。そんな懐かしい風景を撮って残しておかなければ、と強く思ったのがきっかけの一つだ。
商店街の魅力は、大型スーパーやショッピングモールにはない猥雑(わいざつ)つさ、ゴチャゴチャ感、生活感。看板や商品の並べ方、通路の飾りつけなど画一的ではなく、土地によって商店街ごとの個性が異なる。現在なら効率化とコストダウンでどこも同じ造作となるだろうが、昭和の商店街は違う。「商店街は店主たちによる集合芸術」なのである。
商店街散策の楽しみは、歩いて撮るだけではなく、実際に買い物をして店員と話したり、食堂で地元客と同じものを食べたり、五感で街を感じること。昔ながらの商店街は店主の高齢化もあって急速に減りつつある。私が商店街に強くひかれるのは、幼少期の体験や店主たちの永年の営み、栄えて消えゆく光景に儚(はかな)さを感じ続けているからかもしれない。
文・写真/山本 有
旦過市場<福岡・北九州市>
「北九州の台所」「小倉のアメ横」とも呼ばれる大正時代から続く商店街。何度か火災に見舞われたが、元気に営業中。細長いアーケードの下に日用品や生鮮食料品の店が所狭しと並び、早朝から買い物客でにぎわう。中には立ち飲みできる「角打ち」の酒屋もある。
■山陽新幹線小倉駅から徒歩10分、または北九州モノレール旦過駅から徒歩すぐ
通路の両側に店が密集する
平日午前も人通りは絶えない。普段着で来られるのも地域密着ならでは
歴史を感じさせるアーケードの入り口
店先に総菜や生鮮食品が並ぶ
ニコニコ通り商店街<青森・青森市>
看板建築やバラック商店が随所に残る。何か所もあるリンゴ専門店は青森らしさを感じさせる。ニコニコ通りの駄菓子問屋と魚菜センター南側のバラック商店街は必見だ。
■奥羽線青森駅から徒歩4分
今では珍しい駄菓子問屋
看板建築と呼ばれる古い建物が残る
レトロなデザインの看板
四万温泉街<群馬・中之条町>
バスを降りると目の前に広がる昭和。木造の売店に射的場、レトロなパチンコ、ラーメン店の看板など温泉にとどまらない奥深い魅力がある。人情味あふれる遊技場の店主との会話も楽しい。
■吾妻線中之条駅からバス30分、終点の四万温泉下車すぐ
温泉街にパチンコ店やそば店が並ぶ
スマートボールも健在
ラーメン店の看板も昭和のまま
浜マーケット<神奈川・横浜市>
天井から下がる造花、店主と常連客のやりとりなど、「懐かしいあの時代」を今も追体験できる貴重な場所。肉屋、魚屋、八百屋さんのほか、洋食店や焼き芋専門店など個性的な店が軒を並べる。
■京浜東北線根岸駅からバス6分、または磯子駅からバス7分、浜下車すぐ
入り口の八百屋のにぎわいは変わらない
さまざまな店が並ぶ
近所の子どもが通う菓子店
七曲市場<和歌山・和歌山市>
明治時代から続く歴史ある市場。昭和30~50年代に特に栄え、当時は地元テレビ局による年末中継が恒例だった。2025年現在は20店舗ほどが頑張り、中でもラーメンが有名。日曜は全ての店が休みなので訪問は平日がいい。
■阪和線和歌山駅からバス9分、または南海電鉄和歌山市駅からバス4分、県庁前下車徒歩10分
まだまだ現役で、地元客でにぎわう
複雑に入り組む市場への入り口
近年は若い店主の出店も