【いま、会える昭和】令和開業の店舗も続々!水上のレトロビル商店街へ

水上ビルの1つ「豊橋ビル」は豊橋駅から最も近く、居酒屋やバーなどの飲食店が多い
令和の若者の人気を集める“昭和レトロ”な商店街
東海道新幹線豊橋駅の東側に“水上ビル”と呼ばれるビル群があり、昭和レトロな商店街が令和の若者の人気を集めているという。暗渠(あんきょ)化した牟呂(むろ)用水の上に立つことが愛称の由来で、豊橋ビル、大豊(だいほう)ビル、大手ビルからなる。最古の大豊ビルは1964(昭和39)年に完成。1階を店舗、2階から3階(一部4階)を住居などにしたいわばコンクリート長屋で、全9棟に59軒が入った。
「大豊ビルは卸問屋が多く、1980年代までは行商の方々が早朝から仕入れに来てにぎやかでしたよ」と大豊協同組合代表理事の黒野有一郎さんは振り返る。
ところが、時流とともに一時期はシャッター街になる。転機となったのは2015年の「雨の日の商店街」だ。通常の店舗に軒下出店の露店が加わるマルシェで、現在も6月に開催する。第1回開催にあたり、黒野さんは空き店舗の家主と交渉し、出店者への貸出に成功。イベント後、出店者から継続して店を借りたいという声が上がり、店舗の新陳代謝が始まった。現在、全50店のうち25店はここ10年間で開業している。
「今年60周年を迎え、この先の“シン20年”を考えて活動しています」と黒野有一郎さん
大豊ビルの花屋「花職人和び咲び」
「天野商店」は花火や玩具の卸問屋ながらバラ売りにも対応
約1000種のタバコをそろえる「たばこセンターやまもと」
厳選した食材で作るおにぎりが好評の「bone rice」
2025年2月28日に開店した本と雑貨の店「ネコゼ商店」
豊橋駅東側には市電の愛称で親しまれる路面電車が走る
「水上ビルは学生時代によく遊びに来た場所。このまま寂れさせたくなくて、出店を決めました」と2021年に豊橋ビルで開店した「珈琲(コーヒー)とカヌレ」を運営するベルグラッドのゼネラルマネージャー・中村雅代さんは熱く語る。
同ビルのお好み焼き店「伊勢路本店」の2代店主・樋渡(ひわたり)喜久代さんからは「先代の父が55年も守り続けた味と和やかな雰囲気を、これからも伝えたい」という声も聞かれた。新しい仲間を受け入れる度量を持ち、水上ビルを愛する人たちの想(おも)いが、魅力ある空間を作り出している。
文・写真/内田 晃
珈琲とカヌレ
店内で焼き上げたフランスの伝統菓子カヌレを提供。蜜蝋(ろう)で固めた外側はカリッと、内側はモチッとした食感で、口いっぱいにバニラの香りが広がる。
■10時〜18時/月曜(祝日の場合は翌日)休/東海道新幹線豊橋駅から徒歩5分/豊橋市駅前大通1-114/TEL:0532-54-4100
通り側は大きなガラス窓で店内は明るく温かな雰囲気
看板商品のカヌレ350円とカフェラテ550円
伊勢路本店
1969(昭和44)年創業のお好み焼き店。3種の自家製ソースを用意し、具材や料理によって組み合わせを替える。コシの強い特注麺を使った焼きそばも絶品だ。
■11時〜16時30分/火・水曜休(祝日の場合は営業)/東海道新幹線豊橋駅から徒歩5分/豊橋市駅前大通1-114/TEL:0532-53-7012
使い込んだ鉄板を囲むカウンター席が人気
豚玉入りお好み焼きのチーズ増990円を焼く2代店主
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年5月号)
(Web掲載:2025年10月7日)