【食べ歩き ご当地おでん】黒いスープにだし粉で味付け 静岡おでん
大きな鍋にスープがたっぷり。「創業以来、毎日火入れしています」と小川さん
駄菓子屋で子どものおやつとして親しまれ、静岡市民のソウルフードに
牛すじの旨(うま)みが溶け込んだ黒いスープに、駿河湾の魚介類を使った黒はんぺんや白焼(しらや)きなどの練り物をはじめとする串に刺さった具材が、鍋の中にひしめき合っている。仕上げに削り節粉と青のりを混ぜた「だし粉」を振りかければ、香ばしさが引き立つ。これこそ静岡おでんだ。元々は、駄菓子屋で子どものおやつとして親しまれ、今では静岡市民のソウルフードとなっている。
駄菓子屋おでんの風情を今に伝えるのが「静岡おでん おがわ」。鍋から立ち上る匂いに誘われ、午前中から人が集まる。「仕事前に腹ごしらえに寄る人も多いのよ」と店主の小川光枝さん。店前で串を頬張る光景は、静岡おでんの原点そのものだ。
夕暮れになるとおでん店や居酒屋が軒を連ねる「青葉横丁」に赤提灯(ちょうちん)が灯る。その一角にある「しずおかおでん三河屋」は戦後に屋台から始まった老舗。オレンジ色のランプの下、肩を寄せ合って食べるおでんは格別。創業時から継ぎ足されてきたスープに浸った牛すじを味わえば、杯も進む。
「子どもの頃にプールの売店で食べたおでんが思い出の味」と話すのは、「味の店乃(の)だや」の野田耕平さん。静岡の人々には心に残るひと串があるのだ。ここでは串に刺さったおでんを甘みのあるみそにくぐらせるのが特徴。牛すじのだしが効いたスープにまろやかなみそが合わさり絶妙だ。
串を手にすれば、自然と笑顔がこぼれる。静岡の街角で湯気を上げ続けるおでん文化は、旅人にとっても忘れられない味となるだろう。
文・写真/阪口 克
🍢静岡おでん おがわ
気軽に楽しめる伝統の味

定番の牛すじや黒はんぺんに加え、小川さんのおすすめは、しのだまきとじゃがいも(各100円)、糸こん(120円)

参道を行き交う人々に親しまれてきた店先。おにぎりやお赤飯、いなりずしがずらりと並ぶ

削り節粉と青のりを振りかけるのが静岡流
1948年創業。静岡浅間(せんげん)神社の参道に面し、かき氷やおにぎりと並んで売られるおでんは、いつしか店の看板商品に。ふらりと立ち寄って味わえる人気店。
■10時〜18時(おでんがなくなり次第終了)/水曜休/黒はんぺん100円、牛すじ170円など/静岡市葵区馬場町38/東海道新幹線静岡駅から徒歩20分/TEL:054-252-2548
🍢しずおかおでん三河屋
屋台の味を今に伝える

好きな串を選ぶのが楽しい。旨みが溶け込んだスープに色とりどりの具材が並ぶ

「お客さんと距離が近いのがいいよね」と木口さん。店内はいつも笑顔であふれる

昭和の情緒を残す青葉横丁に三河屋の赤提灯が輝く
「青葉横丁」に店を構える老舗。「最初にこんにゃくを食べてみて。その店の味が分かるから」と店主の木口元夫さん。自慢のスープが染みた具材はどれも味わい深い。
■17時〜22時/日・月曜休/黒はんぺん120円、厚揚げ220円など/静岡市葵区常磐町1-8-7/東海道新幹線静岡駅から徒歩10分/TEL:054-253-3836
🍢味の店乃だや
二つのおでんが楽しめる

牛すじの旨みが染みた伝統の静岡おでん(左)と、澄んだだしが香る関東風おでん(右)

ホコホコのじゃがいもと黒はんぺん。とろとろの牛すじ(385円)も不動の人気を誇る

広い店内にはカウンターのほか、テーブル席や宴会ができる座敷も
70年以上の歴史を誇る居酒屋。静岡おでんと関東風おでんの両方を味わえるのが魅力で、「おでんの食べ比べもぜひ楽しんでください」と野田さん。
■17時〜22時(金・土曜は~22時30分)/水曜休/黒はんぺん165円、じゃがいも220円など/静岡市葵区七間町16-10/東海道新幹線静岡駅から徒歩15分/TEL:054-254-2919
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2025年11月号)
(Web掲載:2025年10月30日)


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