ダブルのアートルーム。宿泊料から1泊500円がアーティストへ支払われる仕組みだ

多様性に配慮した個性派ホテル

盛岡は盛岡城跡をはじめ、その周辺に歴史を感じさせる史跡や建物、情緒ある町並みが残り、街歩きの旅におすすめだ。盛岡駅からバスに乗り、盛岡城跡公園の東にある盛岡バスセンターを目指す。2016年に営業を終了した後、リニューアル工事を経て22年、バスターミナルにさまざまなサービスや飲食・物販店などが集まる商業施設に生まれ変わった。HOTEL MAZARIUM（ホテルマザリウム）はその3階部分を占め、街歩きの拠点にぴったりだ。

ひとり泊で利用できる客室は、シングル5室、ダブル8室。客室の特徴はシングルやツインなど各タイプにアートルームがあること。福祉実験ユニット「ヘラルボニー」がプロデュースを手がけ、知的障害のあるアーティストの絵画が飾られ、ベッドやクッション、イスなどにも豊かな色彩が使われた部屋になっている。

客室フロアへの入り口にはオートロックが施され、「女性のひとり旅にも安心感を提供しています」とバスセンターを所有する盛岡ローカルハブの高橋純哉さんは言う。

国道106号の交差点角に立つバスセンターのモダンな建物

ホテルのフロントに当たるパブリックスペース。向かい側にはコインランドリーも

客室にあるのはシャワーブースだけだが、ホテル内に併設された「カナンスパ」が宿泊客は無料で利用できる。本格的なフィンランド式サウナを備えた大浴場には、炭酸泉の湯船もある。サウナではセルフロウリュも試せる。地下水を利用したドラム型の水風呂がユニーク。心身ともに整う時間を楽しめる。

2種の湯船がある大浴場。宿泊客以外は990円（15時〜24時は1250円。貸しタオル付き）で日帰り入浴ができる

カナンスパにあるセルフロウリュができるフィンランド式サウナ

盛岡バスセンター内には盛岡のご当地パン「福田パン」が朝7時から営業し、周辺にはわんこそばの老舗「直利（ちょくり）庵」や「東家（あずまや）本店」、昨年開業した複合商業施設「monaka（もなか）」もあり、飲食店には事欠かない。

朝食（1750円）はカフェバーを兼ねたラウンジで味わえる。豚汁と焼き鮭、卵豆腐の和食か、クロックマダムと野菜たっぷりのミネストローネの洋食を選ぶ（季節により内容の変更あり）。ラウンジには盛岡にゆかりのある穐吉（あきよし）敏子のジャズミュージアムが併設され、レコードジャケットなどを通じて、世界的なジャズピアニストの足跡を知ることができる。ジャズ音楽が流れる中、優雅な朝時間を過ごせそう。

そば酵母パンに自家製ロースハム、チーズがのったクロックマダムとミネストローネなどの洋朝食

カフェバーを兼ねた広いラウンジ

穐吉敏子ジャズミュージアムは入場無料。穐吉敏子フリークの盛岡のジャズ喫茶店主が館主を務める

岩手銀行赤レンガ館はホテルから徒歩2分の距離にある。この地で過ごした文人、石川啄木と宮沢賢治の「もりおか啄木・賢治青春館」（入館無料）も近い。そこから中津川に架かる中ノ橋を渡れば、石垣が美しい盛岡城跡公園だ。

文／田辺英彦

明治のモダン建築を代表する岩手銀行赤レンガ館（有料ゾーン300円）

🍜盛岡バスセンターフードホール

盛岡バスセンター東棟の2階にワインレストラン、ビアバー、定食もある居酒屋の3店舗が集合。共有テーブル席のほか、ひとりでも気楽に利用できるカウンター席がある。ワインレストラン「TAKU」では岩手県産豚肩ロース肉の赤ワイン煮1430円のほか季節メニューも充実。
■17時〜22時30分（土・日曜、祝日は15時〜）／無休　※店舗により異なる

HOTEL MAZARIUM
TEL：019-681-1004
住所：盛岡市中ノ橋通1-9-22 盛岡バスセンター3階

【ひとり泊データ】
条件：通年可
客室： トイレ付き15平方メートルシングル・ダブルなど（全34室）
食事：朝食＝ラウンジ
＜料金（税込）＞
素泊まり　平日1万1330円〜／休前日1万5290円〜
１泊朝食　平日1万3080円〜／休前日1万7040円〜
１泊２食　―
交通：東北新幹線盛岡駅からバス10分、盛岡バスセンター下車すぐ／東北道盛岡南ICから7キロ

※記載内容は掲載時のデータです。

（出典：旅行読売2025年3月号）
（Web掲載：2025年12月6日）