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【はじめてのひとり旅の宿】UTSUROI TSUCHIYA ANNEX <兵庫・城崎温泉> 湯のまちさんぽも楽しい宿(1)

場所
> 豊岡市
【はじめてのひとり旅の宿】UTSUROI TSUCHIYA ANNEX <兵庫・城崎温泉> 湯のまちさんぽも楽しい宿(1)

「UTSUROI TSUCHIYA ANNEX」1階は誰でも気軽に入店できるカフェ兼ギャラリー(写真/母倉知樹)

アートに囲まれた宿を外湯巡りの拠点に

開湯から1300年の歴史を誇る城崎温泉は、兵庫県北部を代表する温泉地だ。柳の青葉が揺れる大谿(おおたに)川沿いのメインストリートには旅館や店が立ち並び、風情豊かな景観が広がる。浴衣姿で趣の異なる外湯巡りも楽しめ、まち全体が一つの温泉旅館のような温かい雰囲気に包まれているのも魅力だろう。大阪から特急で2時間40分、バスで3時間10分の道のりなので、私もよくひとりでふらりと癒やされに訪れている。

山陰線城崎温泉駅から旅館組合運営の乗り合い無料バス(12時30分~18時に運行)に乗り、さっそく「UTSUROI TSUCHIYA ANNEX(ウツロイ ツチヤ アネックス)」へ。温泉街の西奥、城崎ロープウェイ山麓駅の近くにあり、Y字路の開けた空間に明るい1階のウッドデッキと、霧がかかったような2階部分という独特な建物が目を引く。

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1階カフェのウッドデッキ(写真/母倉知樹)

「建物は1970年築の元・城崎消防署です。僕は向かいに立つ『つちや旅館』の4代目で、幼い頃から親しみがありました」と同旅館館長の山田一輝さん。「消防署移転に伴い豊岡市が建物の売却を決めた際、47年間街を守り続けたこの建物を旅館として再生し、街に貢献できたらと考えました。建物を表す消防署のエンブレムも残しています」

設計を手掛けた建築家で近畿大学建築学部教授も務める垣田博之さんは、「山田さんの叔父で日本画家の山田毅(つよし)さんが描く城崎の風景画を取り入れていることが特徴です。コンクリートの建物を包んでいるのは、工場で商品の加熱や乾燥に使用するベルトコンベヤーのステンレスメッシュ。絵画にも描かれているこの地域特有の川霧の空気感も表現しました」と話す。個性的な外観が周囲の自然に溶け込んでいるのに納得した。

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宿泊者専用の2階休憩室。建物を包むステンレスメッシュをここでも効果的に活用(写真/母倉知樹)

1階のカフェ兼ギャラリーでは毅さんの巨大な絵画が、2階ではスケッチが描かれた壁が印象的だ。室内で城崎の風景を楽しみながら、絵を通して地域の魅力を再発見できるのが面白い。同旅館では旅の自由度を重視し、素泊まりか1泊朝食が基本だ。消防車のホースの洗い場を活用した内湯で温まり、ベランダにあるエッグチェアでくつろいでから、夕食と外湯巡りに出かけた。宿泊者には翌日13時まで外湯を利用できる入場券「ゆめぱ」が配られるのでチェックイン時に受け取っておこう。

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1階カフェに飾られた風景画

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客室の壁面に山田毅さんによる城崎や周辺地域のスケッチが描かれている(写真/母倉知樹)

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消防車のホース洗い場を仕切って造られたユニークな浴槽と坪庭(写真/母倉知樹)

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客室全5室のうち4室にはベランダとエッグチェアを完備

夕食は地元の鮮魚店が営む「おけしょう鮮魚 海中苑(かいちゅうえん)本店」で、豪華な海鮮丼を満喫。どの刺し身も味わい深くて感動した。食後は裏山を借景に野趣あふれる露天風呂のある「御所(ごしょ)の湯」など、外湯をはしごしながら宿へ戻った。

🐟おけしょう鮮魚 海中苑 本店

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城崎温泉で100年以上の歴史を持ち、優れた目利きから旅館などの料理人たちも信頼を寄せる鮮魚店「おけしょう鮮魚」の2階にある。海鮮丼海2500円(写真)は、津居山(ついやま)漁港をはじめ、近郊の漁港や市場から毎日仕入れる旬魚11種が贅沢(ぜいたく)に盛り付けられている。城崎温泉駅前に支店もある。
■11時~18時/無休/山陰線城崎温泉駅から徒歩3分/TEL:0796-29-4832

文/児島奈美

【はじめてのひとり旅の宿】UTSUROI TSUCHIYA ANNEX <兵庫・城崎温泉> 湯のまちさんぽも楽しい宿(2)へ続く


UTSUROI TSUCHIYA ANNEX
TEL:0796-32-2045
住所:豊岡市城崎町湯島584-1
【ひとり泊データ】
条件:通年可
客室:トイレ付き6畳または8畳和室(全5室)
食事:朝食=レストラン
<料金(税込)>
素泊まり 平日1万3200円~/休前日1万8700円~
1泊朝食 平日1万4430円~/休前日1万9800円~
1泊2食 なし
※2人1室利用は素泊まり1万3200円~、1泊朝食1万4430円~
交通:山陰線城崎温泉駅から旅館組合運営の無料送迎あり/北近畿豊岡道但馬空港ICから17キロ

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年3月号)
(Web掲載:2025年11月25日)


Writer

児島奈美 さん

神戸生まれ。学生時代にバイクで北海道、九州、信州を巡って旅に目覚め、約40か国渡航。1か月のキャンプ旅でも太って帰ってくる食いしん坊で、現在は、旅・グルメ・人物インタビューを中心に、ガイドブックや雑誌、Webなどの制作に携わる。「旅行読売」ではルポがメイン。鉄子や歴女の道も着々と歩む。

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